第3話 始まりの街

「おお・・・!」


ユウは本日2度目の感嘆のため息をついた。

プレイヤー登録の空間も凄かったが、PAOの世界はもっと凄かった。

実は今まで生活していた世界がVRで、こちらが現実の世界と言われても信じてしまう程の視覚表現グラフィックである。


ユウが立っている場所は始まりの街の1つであった。

PAO内において、初プレイ時に訪れる場所、通称『始まりの街』は3ヶ所あり、それぞれヒノモトの北部、中部、南部に位置し、プレイヤーはその内の1つにランダムに振り分けられる。


最初のうちは、他の始まりの街に移動できないが、レベルを上げる事で始まりの街同士を行き来できるようになるらしい。

3つの街はそれぞれ特色を持っており、ユウが振り分けられた中部の街並みは、レンガ造りの中世ヨーロッパ風であった。


辺りを見回すと、大勢のプレイヤーやNPCが行き交っている。

プレイヤーの多くはまだジャージ(青)やジャージ(赤)を身に付けていたが、中には皮鎧などといったゲーム世界で定番の装備を纏っている者もいた。

ジャージ(青)とは違う、いかにも戦闘を目的とした装備に羨望の眼差しを向けていたユウは、自分も早くあのような装備を身に付けたいと、早速レベリングの為に街から出て『森』の方向に冒険へ向かう。


レベルを上げるには、フィールドに出現するモンスターを倒さなくてはいけない。

しかも、PAOには『オンリーワンスキル』しか存在しないので、自分の身体能力と頭脳を駆使して戦わないといけない。

特にレベルの低いうちは、ステータスも満足に上げられず初期値のみで戦う事になる為、正に(スキル以外は)一般人VSモンスターという構図になるのだ。


ユウが森を選んだのは『木』があるからであった。

視界が悪くなったり、障害になったりするデメリットがあるが、一方で、モンスターから隠れたり、攻撃を防ぐ天然の盾として使えるメリットがあると考えたからだ。


ユウは今まで現実世界での戦闘たたかいはもちろん、VR世界での戦闘も経験した事がない。

モンスターの攻撃を避けた事も武器を振るった事も。

なので、何もない『草原』でモンスターと戦うより、遮蔽物の多い森で戦った方が、生存率や勝率が上がる可能性があった。


握力これを使う機会もできるしな」


ユウは木の幹に手を当てる。

森の木は掴む事ができる。

では、掴んだ状態で竜の握力オンリーワンスキルを使ったらどうなるか。

ユウは試してみたくてワクワクした。

そして、ついに初戦闘の機会が訪れた。


森の奥から角が生えた大猪が姿を現したのだ。

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