ミュージカルの公演を舞台にした、ちょっと不思議な出会いの物語。
物語の展開させかた、進み方が好きです。オーディションから公演の開始、千秋楽とその後。時間の経過と、その間に起こった様々な出来事。話の筋をひとつひとつ丁寧に追うことで、それに伴う気持ちの変遷がはっきり伝わってきました。
幕切れがハッピーエンドであるところ、特に決着の仕方がよかったです。終盤手前、別れの予感の醸す不穏さからの、「別離そのものは回避できなかったけれど、でもいつかまた」という着地点。単に都合のいい世界ではなく、ちゃんと夢の終わりの寂しさを描きながら、でもしっかり前を向いているラスト。このあたりのさじ加減がとても好みでした。