くじ運の強さよ……シレアスピンオフ
秋も深まり、シレアも一年で一番美しい季節に入った。城を取り巻く色づいた木々を窓の外に見て、高官から下仕えのものまで、木漏れ日を眩しく見上げる時節である。
今日は珍しく天気が崩れ、カエルムも王女もともに城から出ずに執務に当たっていた。
夕刻、そろそろ雑多な業務に切りをつけて翌日の会議に関することなどを大臣と話に行こうとした時だ。執務室の扉が、こん、こん、と叩かれた。
「殿下」
顔を出した大臣は重々しく口を開く。
「なあに、大臣が先にいらっしゃるなんて珍しい」
「確かにそうだな。何か急ぎのことでも?」
書棚の前で書類束を整理していたロスは、嫌な予感がしつつ、振り返らずに作業を続けることに決めた。ただ、無駄だった。
「殿下に、ロス。少し先だってのテハイザ行きの件でお話があります」
ロスは思わず顔を歪ませ、危うく、うげ、と酷い声を出すところだった。顔をあわせていないのが幸運した。
「どうした、今さら」
「テハイザ訪問の際の二人の素行について、何やら申し上げなければならないことがありますようで」
カエルムも、一瞬、動きを止めた。
大臣は有無を言わさぬ調子で廊下に身を翻す。
「どれが露呈したか?」
「殿下のどの無茶でしょうねぇ……」
「特にそこまでの問題は……」
「テハイザ着く前にも色々やったでしょう」
大臣の無言の背中が、常になく怖い。
***
蜜柑桜、くじ運良すぎます。
カクヨムコンの講評に当たりました。
怖くてまだ読んでません。嬉しいけど……緊張する! ありがとうございます、運営様!
緊張しますーーーー!
あとで、あとで読みます……!
テレビ見てご飯食べてからにするんだ……。
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