第2話、純文学を読むと眠くなる。

 つぎのひ。


「助けて~後輩く~ん!」


 私は放課後に、後輩を引っ張って部室まで連れてきた。


「やっぱり、頼れるのは後輩くんだけだよっ!」

「……昨日、私一人でなんとかするって言ってませんでした?」

「い、言ってないよ? ……そんなこと」


 私は目を逸らす。

 てか、聞いていたのなら助けてよ!?


「そうですか。なら、なんですか。助けてほしいことは?」

「助けてくれるの!?」

「まぁ、内容によりますけど」


 いろいろ言うけど、やっぱり頼れる後輩だ。ちゃんと、優しい所もあるし。


「後輩くん、私のために……小説を書いて?」


 一様、私が思う可愛いポーズをした。

 

 それを見た後輩は……。


「わかりました……僕、かえります」


 と、のたまった。さっきの後輩の話、前言撤回。


「え? 僕、書きます?」

「……何勝手に、記憶捏造してるですか。帰るって言ったんです、僕は!」

「わかった! 帰って書いてくるんだね! 私待ってるよ!」

「何がわかったんですか! 先輩が今バカだってことですか!?」

「失礼なっ! バカは元からだよ!」

「もっと、ひどいわっ! だいたい、なんで小説なんです? もっと簡単なのあったでしょう?」


 私は、昨日寝るまで考えた。……考えてるうちに寝てしまっていたが、ちゃんと寝るまでは考えていたのだ。そこは間違いない。


「……よく考えてなかったんですね? 何も」

「はっ! 私の考えが読まれただとっ!? そんなバカなっ!」


 後輩が、明らかに呆れている。しかし、私は挫けない!


「これ、紙ね~!」


 後輩の前に、紙束を置く。


「これは?」

「え、使い終わった裏紙。最初から、原稿用紙に、書いてたらもったいないでしょ?」

「……本当に、書く気ですか。小説。」

「もちろん!」


 後輩は、どうしてか私の言葉を聞いて天を仰いだ。


「……そもそも、先輩はライトノベルしか読まないじゃないですか?」

「うん、だから後輩くんに書いてって、お願いしてるの!」

「僕が読むのも、アニメが原作……ライトノベルしか読まないですけど?」


 二人は、無言になった。


「大丈夫大丈夫! 文化祭に飾られても、誰も見ないって!」

「え? 部活で書いた小説って飾られるんですか?」


 しまった。口がすべった……。


「え? 違うよ、後輩くん! 部活で書いた小説は飾らないよ! 何言ってるんだか! HAHAHA!」


 ……後輩の疑いの目が、厳しい。もう余計なことは言わないようにしよう。


「ラノベしか読まない二人が、純文学を書くなんて、無理そうな気がしますけど?」

「え? なんで純文学を書かないといけないの?」

「普通、小説って言ったらそうでしょう」

「えー。私、純文学もの読むと、眠くなるから好きじゃな~い。難しい言葉とかも多いし」

「……とりあえず、先輩は過去の文豪たちに謝ってください。よくそれで、小説を書こうなんて言えますね? 脱帽です」


 君も、純文学とか読まないじゃん……。とか、思ったがここは後輩の機嫌が悪くなったら大変なので、黙っておく。


 「過去は過去! 今は今だよ、後輩くん! 時代は、常に流れるものさ! その時代によって小説も変わって行かなきゃ!  時代に取り残されてしまうぜ、後輩くん!」

「……」


 後輩は、私を無言で見つめた。もしかして私の話で、感心したのか?


「あの僕、もう時間なんで帰りますね。お疲れっしたー」


 あ、アレー???


「時間って、何?」

「え、わかってるじゃないですか。アニメの時間ですよ、アニメの」

「あ、アニメ?」


 後輩は、昨日読んでいた本を取り出して私に見せた。たしかに、アニメの時間が今日になっている。


「見ようか、見ないか。決めかねていたんですが、今の先輩の話を聞いて、そうだなと思いました。原作は、読んだですけどあまり好きになれなくて……でも、時代は変わるように、きっと僕の好みも変わると思うで、ちゃんとアニメも見ようと思います。ありがとうございます」


 後輩はいきなり語り始めた。いや、そういう意味で言ったわけじゃあ……。


「いえ、どういたしまして?」


 後輩はバックを持って颯爽と帰っていく。


「では!」


 ……また、部室に取り残された私一人。






「……はっ!? 後輩くん、裏紙持って帰ってない!?」

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