第36話 仲直りはパーティで
「じゃじゃーん!」
そんないつもどおりの子どもっぽいみゆきの声が響き渡ったのは、騒動があった翌日の夜、俺の家だった。
「せっかくの仲直りパーティなんだし、今日は
自慢げにそう言って、持ってきたタッパーを見せびらかすみゆき。
「そういえば
「ちょっとー」
「そうだな。そんなに
そんな気がするのは、この1週間があまりにも濃くて、ドタバタだったからだろう。
まさか2年生になって早々、こんなに騒がしい日々を過ごすことになるとは思いもしなかった。
「ねえってばー」
「あの日も3人で一緒にご飯食べたけど、今日は意味合いが全然違うね」
「まあな」
「ねー2人ともー」
約1週間ぶりに開かれた、3人だけのパーティ。それは、俺たちが小さい頃にやっていた『仲直りの儀式』だ。昨日の秋人との
「ちょっと! 2人だけで会話しないでよー」
「おっと、悪い悪い」
「ごめんってば、みーちゃん」
涙目になりながら抗議してくるみゆきを2人がかりでなだめる。
いやー、だってさっきのコイツの台詞、なんだか不穏な言葉が混じってたんだもん。具体的には、腕によりをかけてとか。
「これ、デザートだから、冷蔵庫に入れておくね」
軽快にスキップしながら、彼女はキッチンへと向かっていった。
「ねえ和真……」
「みなまでいうな」
俺は親友の肩に手を置く。
しかしだな。友よ。
男には、無理なものだとわかっていてもやらなきゃいけない時があるんだよ。
「とりあえず晩飯は俺が作っておいたから、まずはみんなでそれを食べようぜ」
恐怖のデザートはその後だ。いわば戦略的撤退だ。単なる後回しともいう。
「うわーこれ全部カズくんが作ったの?」
キッチンから戻ってきたみゆきが
「まあな」
「すっごくおいしそう! カズくんはいいお嫁さんになれるね」
「それ
そんなこと言われても全くうれしくない。
「大体、俺みたいなむさくるしい男、誰が嫁にもらうんだ」
そんなことになったらまさしくホモな展開じゃねえか。誰が喜ぶんだ。
……
「えへへ、じゃあ……私がもらってあげよっか?」
「アホか。いつからお前は男になったんだよ」
ニヤつくみゆきにツッコんで、わしゃわしゃとみゆきの頭をなでる。
「わわわっ、カズくん。くすぐったいよ」
「うっせ、こいつめ」
なんかこうしてコイツの頭をなでるのも久しぶりな気がするな。みゆきが再び元気になったからだろうか。
久方ぶりの彼女の頭の感触がどこか心地よかった。みゆきも気持ちよさそうに目を細めている。
「オホン!」
と、すでに着席している秋人が自分の存在を忘れるなといわんばかりに、わざとらしい咳払いをしてくる。
「あっ、ごめん秋ちゃん。じゃあ始めよっか」
そうして俺たちは席につく。目の前には、俺が丹精込めて作った数々の料理。
「それじゃあカンパイしよっ!」
「つっても麦茶だけどな」
「和真、いちいち水を差すようなこと言わないの」
3人で笑いあう。こうやって笑顔を交わすのも、なんだか随分やっていなかったように思える。
「ではでは! カンパーイ!」
俺たちしかいない家に、透き通るようなグラスの音が響き渡った。
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