第31話 犯人は――

 沈んだ日はまた昇り。朝が来て。


 気がつけば放課後になっていた。


 昨日の会長からのラインのとおり、今日は生徒会の活動がない。だから俺は昨日とは違って、担任のいつもの言葉を聞いても急いで教室を出るようなことはせず、のんびりとしていた。


「和真、今日はゆっくりしてるね」


 カバンを持った秋人が机に近づいてくる。


「まあな。でもあんまり寝れなかったから眠くて眠くて……」


 あくびをしながら返す。


「秋人はもう帰るのか?」

「うん。今日はもともと別の用事が入っていたから、生徒会も休むつもりだったし」

「ふーん」

「和真はまだ帰らないの?」

「帰りたいのは山々なんだがなあ……」


 秋人の問いに、俺は言葉を濁す。


「何も考えずに廊下を歩いてたら、それこそマズいことになりかねないし」

「そうだね……」

「頃合いを見計らって帰ることにするわ」

「たぶん、それがベストだね。もし見つかったりしたら無駄に走らないといけないし」


 苦笑いの秋人。


「それじゃあ、僕は先に帰るよ」

「おう」

「くれぐれも、気をつけてね」


 うすい笑みを向けたまま、教室を後にしていった。


 気をつけて……か。

 俺は秋人のセリフを脳内で繰り返した。

 そんなことをしているうちに。

 教室からは、ほとんど人がいなくなっていた。


「ふう……」


 俺がこうして一息ついている間にも、仲良く談笑しながら続々と出ていくクラスメイトたち。

 徐々に静かになる部屋。


 そんな不思議な空間の中、天井をじっと見つめて時間が過ぎるのを待った。



「……さて」


 宙に浮いた意識を身体へと戻す。何分経っただろうか。

 教室の時計を見ると、秋人と別れて五分ほど経過したようだ。


 ……そろそろ頃合いか。

 誰に向けるでもなく、心の内でそうつぶやくと、俺は教室を出た。

 向かう先は、生徒玄関ではない。


 向かう先は、もちろん――――。

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