第2話 ね?キスしてもいい?とお師匠様は言った。
「ねぇ、起きて?修行の時間だよ?」
んー眠いなぁ。もう少し寝ていたいのに。鳥がさえずっている。もう朝なのか。
「ふふ、ずるい。起きないなら、私も布団に入っちゃうぞ?」
誰?僕は一人暮らししていたはずなのに、女の子?これは夢?薄目を開けてみると目の前にはカワイらしい少女の顔があった。少女は僕の頭の方に手を伸ばすと優しく僕の唇に指で触れて
「ね?キスしてもいい?」
と言った。
こ、この子はお師匠様じゃないか!女賢者のソフィー様だ。慌てる僕。
「あ、あのお師匠様。これはどういう余興なのでしょうか?すいません。すいません。寝坊してごめんなさい。助手が賢者様よりあとに起きるなんて!ご無礼いたしました」
と上半身を起こす。
「お師匠様なんて呼ばないでっ。ソフィーでいいよ?アーくん、それとも私のこと女の子としては見れないかな?」
とモジモジする女賢者のソフィー。
「いえ、可愛いです。お師匠様は十分魅力的です!でも師匠と弟子でそういう関係はまずいでしょう!」
と拒絶するとソフィーは
「コラ、君の魔力を高めてあげようと思って誘惑しているんだぞ?」
と僕の頭をコツンと叩いた。
「あの、その、師匠様の言うことはまだ今ひとつ理解できないのですが、なぜ僕の魔力をあげるのに女の子の誘惑が必要なのでしょうか?」
と疑問を投げかけると
「もう、イジワル。アーくんったら。女の子に恥をかかせないで!黙って私を押し倒してくれれば良いのにっ」
と言いながら僕の口を手で塞ぐ。
「言葉は要らないでしょ?ね?」
と言ってそのあと師匠のソフィーは目をつむった。
これは!キスしろということか?ここまで誘惑されて何もしないことが普通の男子にできるものなのか。僕は当然キスをしようと思い。彼女の柔らかそうな唇に自分の顔を近づけていく。
その時だ。彼女は目を開けて
「ダメダメ。まだ君にはキスは早いかな?ふふ、ドキドキした?体内の魔力少しは活性化したかな?今は我慢だよ?魔法使いになりたいのでしょ?」
と言い僕の側から離れていった。
「まずは魔道書読もうね?基本からだよ?魔力がない子にぴったりのヤツがあるの。書庫に行こう」
といって僕を手招きした。
僕はソフィーに連れられ階段を登り、塔の最上階の書庫に入る。分厚い本が並んでいる。ほとんどの本のタイトルは魔法語で書かれており魔術の知識がない僕には読むことさえできない。
が、ソフィーが案内した書棚だけは僕にもどんな本があるかわかった。
「男の子を押し倒す方法」
「ラブラブデートを彼と過ごすために」
「Hなお姫様」
こ、これは、まごうことなき
「すいません、これ魔道書なんですか?」
どうみてもエロ本なんだけど??
するとソフィーは怪訝そうな顔をすると
「うん、そうだよ?」
と言った。
え、ええええ。
「今日はこの本がいいかな?」
と言って彼女が手に取った本の背表紙には
「女賢者陵辱物語」
と書いてあった。あ、あのぉ。その本は一番まずいのでは?
「その本だけは勘弁してください!僕の立場的に読むことは許されないと思うのです。いや、師匠様と私の関係を想像させると申しているわけではございません。あくまで一般論で、です」
するとソフィーの顔がみるみる険しくなる。
「早速契約違反する気なのかなぁ?真剣にやる気あるの?サインしたよね?契約違反するなら違約金払ってもらうけど?」
と彼女は僕を問い詰める。
「やります!すいません、ごめんなさい。なんでもやると申しました!早速読破させて頂きます!」
とあまりのすごい迫力にそのイカガワシイ本を読むことを誓う僕。
「よかった。じゃ、魔術実験室に行こうね?そこで魔道書の読み合わせしようね?」
と笑顔に戻るソフィー。
階段を下り魔術実験室に入る。そこは講義室のようになっており、黒板があり彼女はその前に教鞭を握り立った。
「アーくん、教科書を開いて一ページ目の最初から朗読してくれる?」
とさらっと言うソフィー。
僕は言われるがままに「女賢者陵辱物語」の表紙を開けた。
そこに書いてある1行目をみて僕は卒倒した。
「XXXには好きな子の名前を入れること」
と指示が書いてある。
そして2行目を見ると
「僕は女賢者のXXXが好きだ。だから弟子になろうと思いついた」
と書いてある。
この場合僕はどうすればいいんだ?僕は実は好きな子がいて、師匠には秘密なんだがその子と付き合いたいと思っている。その子の名前はエリーと言って幼馴染なのだ。
幼馴染あるあるで男友達のようにサバサバした友達付き合いをしているが僕の本命だ。くそ、でもこの場合師匠の名前を入れるしかないじゃないか!師匠がなぜ僕を朝誘惑し、この本を僕に読ませようとしたのか?の意図を考えると答えは一つしかない。
「アーくん、早く読みなさい!講義が滞るでしょ?」
と叱責するソフィー師匠。く、くそ。こうなりゃ仕方ないXXXにはソフィーと入れよう。覚悟を決めたときだった。
「その本のXXXに入れるのは本命だからね?」
と笑顔で師匠が言うじゃないか!
「魔道書は危険だから、指示にしたがわないと危ないからね?ちゃんと本命の名前をXXXには入れてその本読んでね?」
と今度はマジ顔で言う。
質問しよう。
「もし虚偽の発言をした場合、どのような危険があるのでしょうか?」
おそるおそる尋ねる僕に彼女は恐ろしいことを言った。
「その虚偽の発言が真実に変わります。魔道書の力によって現実が書き換わるのです!」
おい。それじゃぁ何か?僕がここにソフィーって名前を入れると僕の本命は師匠に変わるのか?それはイヤだ!僕はエリーちゃんが好きなのに!くそ、どうすれば良いんだ。
「早く指示通り読みなさい!アーくん。まさか標準語が読めないわけじゃないでしょ」
と急かすソフィー。ごめんなさい師匠。僕は、僕はこう朗読するしかないんです!
「僕は女賢者のエリーが好きだ。だから弟子になろうと思いついた」
と読み上げる僕。
みるみるうちに怒った顔つきになるソフィー先生。つかつかつかと先生は僕の席に詰め寄ると本を取り上げ、一ページめをビリビリと破いた。
「アーくん?」
と僕の名前を呼び彼女は
「なんで本当の内容で本を読み上げなかったの?あなたは今誰の弟子なの?」
と詰問する。
「ソフィー先生の弟子でございます」
ごめんさい先生。でもこれだけは譲れなかったのです。
「アーくんが、エリーって女賢者の弟子になっちゃたら困るでしょ?だから先生そうならないように魔道書を破らないといけなくなっちゃったじゃない!」
とソフィーは説教を始めた。
「この魔道書、いくらするかわかっているの?今度ちゃんと授業をうけなかったら、承知しないんだから!」
僕はそのあと延々と先生の説教を平謝りしながら拝聴することになるのだった。
ソフィーは説教を終えると
「じゃぁ、次は街にでて女の子をナンパして来てね」
とウインクをし、
「ちゃんと賢者の塔にお持ち帰りするんだぞ?できなかったらオシオキするからね」
と、もの凄い課題を僕に与えて僕を塔から追い出した。
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