女賢者のHな魔法の授業「童貞死守魔力鍛錬法」

広田こお

第1話 魔法使いにどうしても成りたい!

 魔力がない人間は魔法使いになれないと僕は聞いている。でも、どうしても魔法使いに僕は成りたかった。なぜかって?大魔術士になれば空を飛べ、水晶玉であらゆる場所を見ることができ、雑魚敵はファイアーボールで一掃、雑用は使い魔に任せればいい。これに成りたくない人間がどこにいるというのか?


 僕には魔力がない。でも、人間すぐに諦めてはダメだと両親は良く言っていた。

 まずは魔法使いに弟子入りだ!魔法使いと言っても色々な上級職がある。四元魔導師、時空魔導師、創造魔導師などなど。だが僕が目をつけたのは賢者だ。なぜか?それは賢者というだけで賢そうだからだ。社会的ステータスも高い。


 あるとき朝の新聞を見ていると一枚のチラシが入っているのを僕は目ざとくみつけた。


「天才女賢者があなたのお悩み解決します!〜ソフィーのよろず屋〜」


 天才賢者ソフィー=エリアス 


 飛び級を重ね12歳で王立魔法研究所付属アカデミー卒業

 現在18才だがその魔力は絶大

 得意分野 魔法装置の取り扱い、花占い

 好きな花 マリーゴールド :花言葉は絶望

 好きな言葉 絶望を乗り越える者が救われる


 まずは無料相談承ります。

 助手も募集してます。


「助手も募集してます」と書いてあるのに僕は釘付けになった。助手から弟子入りしてゆくゆくは魔法を教えてもらおう。そうと決まったらこのソフィーのよろず屋に直行だ!朝食を食べ終えると僕はチラシに書いてある住所に向かった。


 そこには高い塔が立っていた。やっぱり賢者といえば塔だものな?塔の扉にはソフィーのよろず屋と書いてある。扉の横には九官鳥の像があった。


「お前お客様か?オレはキュウちゃん。ソフィーのよろず屋のマスコットキャラだよ?中にお入り!」

 とその石像は喋った。凄い!魔法の石像か!僕は像に言われるまま塔の中へと足を進める。螺旋状の石の階段が塔の上まで続いている。そこまでは普通だったのだが。


 問題は階段に沿って壁画が飾られていることだった。ただの壁画ではない。そこには女の子が描かれていて僕に語りかけてくるのだ。

「いらっしゃい。お客さん!素敵な男の子ね?」

 とか

「なんの悩みがあって来たの?恋愛相談?お姉さんに教えてね?」

 とか。

 すごい魔法技術だが、それとは別に問題なことがあって、描かれている女の子が妙にセクシーなのだ。僕だって男の子だ。だから、そんな絵が艶めかしく動き、僕にフレンドリーに話しかけてくると、ただの絵とわかってはいても変な気分になってくる。


 塔の上までたどり着いた時僕はなんとなく欲情した気分になっていた。扉をノックする。すると

 「どうぞお入りください」

 と透き通るような女性の声がした。言葉に従い扉を開ける。すると中にはベットと椅子がある。ベットは質素なもの。椅子には優しい感じのするセミロングの髪の女の子が座っていた。女の子は杖を持っている。素朴な感じがする女の子の格好に比べ、杖の装飾は華美だった。

 「ベットに寝て瞑想してもらえますか?」

と彼女は言う。

 「そうすることであなたの煩悩を私は杖の水晶玉を通して見ることができます。まずはあなたのお悩みを教えてください」


 ちょっと待て、今僕はちょっとムラムラしているんだけど?見られたらマズくないか?初対面の女の子に知られるのはちょっと恥ずかしい。

 「あの言葉で伝えるのではダメでしょうか?」

とやんわり断ると彼女は困った顔をして

 「あなたの本当の望みを知るには必要な作業なのですが、言葉は表層的なもの、その人の悩みの真実を伝えてくれるとは限りませんから」

 とため息をつく。

 「でも、あなたがそうしたいのなら、どうぞ言葉でも結構ですから、悩みを私に伝えてもらいますか?」

 と諦めたように言う。


 「魔法使いになりたいんです。どうしても。それであなたに弟子入りしたいのです。不躾でごめんなさい。助手でもなんでもしますから、お願いします」

と弟子入りを頼んでみた。


 「それがあなたの望みですか?残念ですが、今のあなたからは魔力を感じることができません。難しいとは思います。それに言葉で伝えられた望みは、あなたの真の願いとは異なる可能性があります。それで構わないのであれば、できうる限りの助力はさせていただきますが」


 と彼女はしぶしぶOKしてくれたようだった。


「ありがとうございます!なんでもします。どんな辛いことでも我慢します!魔法使いになるためなら!」


 彼女は難しい顔をすると

「あなたぐらいの年の男の子に耐えられる修行ではないと思いますよ?やめておいた方が良いと思います。それでも、もし修行をされるのであれば途中下車はしないでください。私もあなたの悩みに真摯に向かいます。だからお客様も私の指導にはキチンと従ってください。もし、それでよろしければ、こちらの魔術契約書にサインをお願いします」


 と言って一枚の紙を持ってきてテーブルに置いた。


 ざっと僕が目を通すとそこには難しい魔術用語が並んでいるようだった。理解は難しいけど、禁欲、魔力、修行とかいう言葉が並んでいる。

最後に日付と名前を書く欄がある。僕は迷うことなく日付と名前をその欄に書き入れた。聖王歴2020年5月7日アーク=ワイズと。


「ありがとうございます。契約成立ですね。契約書読まれていますよね?あなたは今日から私の助手として働いてもらいます。それと魔術師としての修行も同時に積んでもらいます。それがあなたの望みを叶える一番の近道でしょうから」

 とビジネスライクに彼女は言った。


 それが僕の禁欲生活の始まりだった。僕は彼女の指導のもと魔力を高める修行を積むことになる。その内容とは「女の子にモテモテになりながら、女の子とは一切関係を持たない」という年頃の男の子には地獄のような環境のなか、魔術書を読破するというものだった。たくさんの女の子の性的アピールを受けることで体内の魔力を活性化し、それを一切放出しないことが大事だとソフィーは断言した。


「わかったら、まずは女の子にモテるようにイケメンになってもらうからね?」

 と急にくだけた口調でソフィーは言う。女心を掴むためにナンパを街ですることも義務付けられた。


 そして僕は住み込みのソフィーの助手になったのである。


















 

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