第7話 エマ・R・ミラー
「初めまして皆さん。今日からこの部隊でお世話になりますエマ・ローズ・ミラーと申します。気軽にエマと呼んでくれると幸いです」
丁寧な挨拶と供にペコリと頭を下げるエマ。
輝く金色の髪をポニーテールにしてまとめ、人形のように整った造形の顔に微笑を浮かべている。
すらりとした手足とキュッと引き締まったボディ、背は女性にしては高く恐らくだがケイゴの身長を超えているだろう。
彼女の自己紹介を聞いた二人が唖然としているのは新人のヒーローが突然赴任してきたからでも彼女が恐ろしく美しかったからでも無く・・・彼女の名前と容姿に心当たりがありすぎたからに他ならない。
「・・・おいリーダー・・・エマ・R・ミラーってもしかして・・・」
驚きのあまり途切れ途切れに問いかけるルーカスに、ジェームズはニッコリと輝く笑顔を浮かべて強く頷いた。
「ハッハッハ! 驚いたか? その通り、彼女は現在モデル兼アイドルとして大活躍中のエマ・R・ミラーその人だ!」
エマ・R・ミラー(17)
15才の時にモデルにスカウトされてその圧倒的な美貌からあっという間に有名になると、今度はアイドル業界に活動の幅を広げる。そこで判明した事実は彼女が見た目の麗しさだけでは無く歌もパフォーマンスも一級のモノを持っていたという事実。
瞬く間にトップアイドルの座に君臨した彼女は現在様々なイベントやテレビ番組に引っ張りだこ、テレビをつければ見ない日は無いほどである。
そんな彼女が何故この部隊に所属するというのだろう。混乱する二人にジェームズは彼女がヒーローになるに至った経緯を説明する。
「ふむ、エマさんがこの部隊に所属する理由は簡単に言うとヒーローのイメージアップが目的だな」
「イメージアップですか?」
「ああそうだ。君たちも知っての通り我が部隊設立の理由の一つに国家のイメージを良くするマスコット的な意味合いも大きい。そしてその目的は概ね達成されていると見ていいのだが・・・なにぶん我々だけでは華が無いという意見もあってだな。誰か女性の隊員を増やそうという話があったのだ」
「・・・なるほど、利には叶っていますね。しかし戦闘向けの超能力を有した女性というのも選択肢が少ないとは思いますが、よく今話題のアイドルがこの話を飲みましたね」
ケイゴの言葉に応えたのはエマ本人だった。
「その事については私が直接立候補致しました」
「アナタが直接?」
驚いた様子のケイゴにエマは頷く。
「ええ、かねてよりアナタ方ヒーローの活躍は気になっていましたし・・・自分自身、戦闘向きの超能力を持って生まれた事に幼少の頃より少し思うこともありましたので」
彼女の説明に一応の納得を見せた二人。そのタイミングを見計らってジェームズがコホンと空咳を一つして注目を集める。
「さて、エマさんの教育係は歳が近いケイゴに任せてもいいかな? しばらくは私では無く彼女とバディを組んで活動してもらいたい。今日はとりあえずこの施設の案内をしてくれ」
ジェームズの言葉にケイゴは軽く敬礼をして答える。
「了解ですジェームズさん。じゃあエマさん今日からよろしくお願いしますね」
立ち上がって握手を求めるケイゴにエマも近寄ってソレに答えた。
「ええ、よろしくお願いしますね先輩・・・」
可愛らしい声でそう言った後、顔を少しケイゴの耳元に近づけると他の二人には聞こえない程度の小さな声でボソリとケイゴに言葉をかけるエマ。
「・・・あんまり調子に乗るんじゃねえぞチビ助?」
「・・・・・・・・・え?」
唐突の事に反応出来なかったケイゴは間抜けな声をあげてしまう。
しかしエマは先ほどのドスのきいた声が嘘のようによそ行きの笑顔でニッコリと笑うと「では案内をよろしくお願いします」とシレッとのたまう。
一筋縄ではいかなそうな後輩の出現に、ケイゴはたらりと額から一筋の汗を流すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます