第15話 大河ドラマ館ついに入場

 5分ほど揺られたバスを降りると目の前には、

「いだてん大河ドラマ館」とかかれた建物が鎮座していた。

 バスが回転できる広いロータリーの左側には浜名湖の垂れ幕が、どうやら第二部の主人公、田畑政治(たばたまさじ)の故郷とのコラボで玉名と浜名湖の物産展をやっているらしい。

 話の種にとのぞいてみると「すいません。10時開店なんですよー」と言われた。


 ドラマ館は9時開店だがイベントは10時かららしい。


 だとすると駅やバスで客が少なかったのもそれが原因なのかもしれない。と思ったのだが、自動車で来るお客さんが多いだけだったのは後で分かった事である。

 その理由を知るのは2ヶ月後になった。


 ドラマ館は右手におみやげ屋、中央に入り口がある作りだった。まずはお土産屋で情報収集をする。

 だが、あまり有力な情報は得られなかった。

 とりあえず腹ごなしと水分補給に、地元の人が作ったタルト(130円)と、いだてん。と大胆に描かれた玉名の水(150円)を購入する。

 外で飲んでみたが

「これふつうの水だね」

 何のひねりもない、水だった。

 アーモンドの入ったサツマイモのタルトが美味しかったが水が残念だった。せっかくなら名物のレモネードを入れてくれたら食レポができたのだが…。


 準備もできたし、意を決して中に入る。

 このころになると他のお客の姿もちらほら見え、「やっぱり大河ドラマはすごいや」と思ったものである。

 なお、ここは入場料600円だったがJAF会員だと2割引されるシステムで500円でチケットが買えた。街が作った和水町の施設では使えないらしいがラッキーな話である。


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 ここから先は、すでにドラマ館が2020年1月13日で閉館おり、中の様子を記録に残すため、内容を記そうと思います。

 主催者の要請によっては削除します。

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 チケット売り場の左手からエントランスに入ると左に金栗四三、右に田畑政治の二人が大型ポスターと等身大パネルでお出迎えしてくれた。

(電車の中である程度の人物は憶えた)


 でかい。


 床から天井まで3mくらいはあるポスターは圧巻で大河ドラマという企画のすごさを見せられた気がする。

 主人公2人の等身大パネルもよい出来だ。

 ここは撮影OKの場所らしく、朝美ちゃんは記念撮影して「念願のドラマ館にきましたー #いだてん」とネットにあげていた。

 奥では番組のオープニングテーマらしき音楽が流れている。

 ドラマにはあまり興味がない私でも楽しくなってくる音だ。

 建物の壁はすべて黒で、入り口上部に白字で

「いだてん 大河ドラマ館」

 と書かれていた。鹿児島ではなく熊本に大河ドラマがくるというのはすごい快挙である。

 大分県人にとって、遠い本州でない大河というのはそれだけで恩恵があった。鹿児島は本州並に遠いのでノーカンである。


 中にはいると大型のテレビモニターと小型のテレビでそれぞれ映像が流れている。

 そして左に曲がると、脚本家、音楽担当、演出の3名のコメントが額に入れられ展示されていたが、ここは撮影禁止だったので内容は思い出せない。ただHPにあった文書とおんなじだった気が、今となってはする。


 さらに左に曲がるとドラマの人物紹介が所せましと張られている。最初は熊本勢、金栗家から奥さんの家、そして学校の級友らしき人物である。

 ここの図と文章はHPの登場人物コーナーと同一だった。と2020年1月31日にHpが閉鎖される前に保存していた最中に気がついた。


「美川だーっ!」

 となんかクネクネした髪の男性を見て朝美ちゃんが指さす。(館内ではお静かに)

 周囲の人から微笑が漏れた。

 なんでも、この美川秀信という人物、隠れた名物キャラらしい。(当時の扱いです)

 関東大震災で消息不明となったキャラさえも回想で登場した登場人物全員参加の24話の第一部最終話で『唯一、全く登場させてもらえなかった』金栗四三の中学時代の友人で「金栗さんの日記を勝手に読んだり、手紙を勝手に見たり、学校を中退して夏目漱石のように小説家にあこがれたり、女性のブロマイドを売ったり、最後はヤクザの愛人と駆け落ちしたけどフられて消息不明になってる」らしい。


 どう見ても人間のクズです。本当にありがとうございます。


「ちなみに、脚色されまくってるけど実在の人物らしくて、ご遺族の方もインタビューされたらしいよ」

 すいません。クズは言い過ぎました。


 なんでもあまりの脚色というかねつ造キャラっぷりに

「#美川家のご親族の心が太平洋よりも広い」

 というハッシュタグまで後にできあがったらしい。

「あれから、まさかあそこまで人気が出るとは思わなかった」と朝美ちゃんは後に語った。


 このあと、そのご親族の方と知遇を得ることになるとは、このとき我々は知る由もなかったのだがこれは後の話である。


 ちなみに今の時点では、震災で死亡した可能性もあることにはあるが、誰もが「きっと生きてるだろうから心配しない」状態らしい。


 どこまで信頼されているのだろうか?


 というか実在の人物なのに生存しているのかをネット上の誰も知らないと言うのもすごい話である。

 現代の今まで注目されてなかった人物を取り上げた大河というのは、先がわからないという楽しみもあるのだなぁと思った。


 この次は落語パートと呼ばれる志ん生という落語家とその友人や師匠の説明、そして浜名湖の水泳チームに東京オリンピック誘致の立役者 田畑政治の人脈だ。

「今は、この政治ことまーちゃんが主人公のお話でねー。今日ベルリンオリンピックのお話やるんだー。タイトルは「民族の祭典」ね」

 あれ?そんな名前の記録映画あったよな?と思いながら先に進むとパノラマVRコーナーがあった。

 係の人から貸し出される10インチ程のタブレット端末を動かすと、それに従って浅草の町が360度上下左右全部みれるというコーナーらしい。

「うわー、志ん生師匠が車かきしてたときの浅草の町が360度全部見えるー!」と、端末を借りた朝美ちゃんはおおはしゃぎだ。

 震災と火事で燃えた明治時代の浅草をCGで再現しているらしい。たしかにすごい。

 写真とCGという技術で立体的にみえているのだとか。

 エンタメの新技術の展覧会のようで、ほかにも360度スクリーンに投影するプロジェクターとか、決められた場所にたったときだけ歌声が聞こえるスピーカーなんてのもあった。

 ドラマを知らなくてもこれを体験する価値はあると思う。きてよかった。



 VRの展示にはビートた○し扮する志ん生師匠の等身大パネルがおかれており、写真OKのマークがある。当然ここも撮影する。

 その反対側にはドラマで使用された道具が展示されていた。金栗四三が呼吸法をメモした「すっすっはっはっー」という半紙や「志ん生の富久は絶品」と書かれた満洲の絵はがきやストップウォッチなどだ。

「よくこんな細かいものが残っていたねー」

「それドラマの小道具のレプリカだよ」

 あら、そうなの?本当に大正とか昭和初期のものだと思ってしまった。すごいな美術さん。

 すごい技術で作られた小道具を眺めていると

「ドラマシアターがあと20秒で始まりまーす」という女性スタッフの声が聞こえてきた。


 建物北東の一隅は4Kモニターを使用したシアターがあるらしい。

 壁で仕切られた部屋に3人座れるソファが4つおかれた室内の正面に大きなモニターが設置されている。


 パンフレットによると、玉名のロケ地での撮影風景を金栗四三が案内する…かと思いきや、たすきを「かあちゃん」に渡して実況してもらっていた「熊本編」と、第一部を紹介する「黎明の鐘」編が放映されていた。(タイトルは逆だったかもしれません)


 フランスの人が近代スポーツの祭典をしようとして立ち上げたオリンピック。これ自体まだ4回しか開催されてなかったのだが、5回目の参加を日本の柔道の祖、嘉納次五郎「先生」へ打診されたらしい。

 そこで国内予選大会を開催したところ、スポーツがまだまだ知られてなかった時代なので審判役で参加したのに飛び入り参加して短距離で一位を総なめした三島弥彦氏と、当時、日本人としては前人未踏だった40kmの距離を完走し1位となった金栗四三が第5回ストックホルムオリンピックに参加するお話だったと、物語を振りかえっている。

 で、「じゃあ四三、このたすきは返すばい」と渡された黄色いたすきを「かあちゃん、このたすきはおいじゃなか」と渡されたのが第二部の主人公田畑政治(たばたまさじ;通称まーちゃん)である。


「金栗さーん。確かにタスキ受け取りましたよ!あとは任せてください!」的な事を言ってバトンを託された「まーちゃん」。メガネをかけた礼儀正しい男性といった感じの好青年だ。


 ちなみにこの政治を演じている方、正月にこのドラマ館までわざわざ来てくれたらしい。

「でも、行ってみたら閉まってました!」というのが黎明の鐘編のオチだった。

 そういえばパンフレットに2019年1月12日~2020年1月13日と書いていたっけ。

「みなさんも開館時期はちゃんと確認してから来ましょうね!」という言葉でシアターは終了。なかなかおもしろい内容だった。

 だが朝美ちゃんは「まーちゃんが敬語…まーちゃんが金栗さん呼び…すっごい違和感」とぶつぶつ言っていた。

 何?政治さんって敬語を使わない人だったの?


 なお、この映像は4Kという大河初の新技術による映像だそうだ。たしかに映像はきれいである。

 だが「史料は書かれている文字さえ見えればよい」「風景は様子が分かればそれでいいじゃないか」と考える私にはそkまで違いがわからない。

 友人からは「君の写真はぶれているから一眼レフを買うという」と勧められたことがあるが、どうも踏み切れないゆえんである。


 ・・・

 劇中では田畑政治ことまーちゃんは口調は無礼の固まりみたいな人間でしたが、シアターでは社会人としての礼節をわきまえた親しみのある声で「金栗さん」と呼んでいたので違和感を感じました。(オイ

 なおこの時、私はなぜかまーちゃんが夜中にドラマ館に来ていたと勘違いしてましたが2020年1月4日に聞きなおしたら開館時期前に来てたとのことでした。ツイッターで1月3日に謝誤った情報を流してすいませんでした。

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