マイルの冒険 1

 この世界の大人たちは笑わない。

 その原因は魔のものによるものだが、それを知る者は少なく世の中には信じられていない。

 マイルはこんな世界を変えたいと思った。

 だからこそ、家族を笑顔にしてくれたロエスが怪我をし、手紙を出せなくなったことを解決しようと動いたのだ。




 手紙の送り先はロエスの師匠であるモアスだ。

 マイルはロエスの仲間のラウドと共にモアスのもとを目指す。

 しかし、魔のものは人の笑顔を取り戻そうとする勢力の拡大を阻止しようと動いていた。

 マイルたちの目の前に現れたのは人とは思えぬ肌の色をした赤目の化け物だった。




 戦う術をもたないマイルの代わりにラウドが魔のものに対峙した。

「君は先に行くんだ!」

「で、でも」

「いいから早く!」

 マイルはラウドに言われるまま走った。振り向くことなくモアスのもとを目指した。




 マイルはモアスのもとへとたどり着くことができた。

「ラウドと一緒じゃないのか?」

「……」

 マイルができたのはただうつむいてロエスからあずかった手紙をモアスに渡すことだけだった。

 モアスはマイルのまだ幼い体を見やり手紙を受け取った。




 手紙の内容はマイルをモアスの弟子にする頼みだった。

 モアスもまたマイルの意気消沈した様子から道中でラウドに何かがあったことを悟った。

 そして、モアスは全てを現実と受け入れマイルを弟子として受け入れることを決意する。




 マイルはモアスの指導により自他ともに認めるエンターテイナーとなった。

 それは、笑わない大人たちを笑わせる能力を手にしたことを意味する。

 そして、笑わせる技術だけでなくこの世界の大人たちが笑わない理由を知った。

「この世界は魔のものの侵攻を受けている」




 少し前のマイルなら笑えない作り話だ。と決めてかかったことだろう。しかし、今の彼には襲われたラウド、襲ってきた化け物という真実の体験があったため信じざるを得なかった。

 さらに、そのことはラウドが未だ見つかっていないことからも明らかだった。

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