第57話

「あんたが外したから、こいつあたいに向かって来たんじゃないの。それともなに。なにもしないでこの大きな口に食われろとでも言いたいの」


「そういうわけじゃあ……」


「だったらいいじゃないの。飛燕もそう思うでしょ」


いきなり振られて少し驚いたが、言った。


「ああ。なにもしないでいると命にかかわるからな。向かってくるあやかしを攻撃するのは当然だ」


「飛燕もああ言ってるわよ」


「……」


私は思った。


それにしてもあのスピードであんな大きな顔がいきなり目の前に現れたというのに、双龍刀を二本とも正確に目に突き刺している。


今日初めてあやかしを見たばかりだというのに。


――こっちは正真正銘の頼もしいだな。


「見学だけのはずが、二度も化け物やっつけられるなんて、ほんとラッキーだわ」


「ふん、よかったな」


「あんたのおかげじゃないわよ」


「わかってるぜ。いちいちうるさいぜ」


「えへっへっ」

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