第56話

魁斗は跳んだ。


女の顔の前まで。


そして鉄鎚を振り下ろしたが、顔が避けた。


――速い!


速かった。


そして魁斗が着地するよりも早く、紫苑に向かって行った。


――危ない!


紫苑の前で顔が止まった。


一瞬の静寂。


「ぎゃああああああっ」


顔がとてつもない大声で叫び、どたりと地に落ちた。


見れば左右の目のところに深々と双龍刀が突き刺さっている。


紫苑が双龍刀を抜いた。


顔は動かない。


どうやら死んだようだ。


「おいおい、俺の得物、勝手に殺してんじゃねえよ」

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