第55話

「ここに人がいるのか」


「いや、いない」


「じゃあ化け物だな」


「そうだ」


「行っくぜーーーっ」


魁斗は走り出した。


「おい、こら」


三人がついて行く。


すると魁斗が止まり、その先にいた。


顔だ。


風穴の中央に大きな女の顔が浮かんでいた。


人一人くらいは丸呑みできそうな大きな口には、犬歯のようなものがずらりと生えている。


「また変なの出てきやがって。どたまかち割ってやるから待ってろ」


魁斗が顔に近づいた。


すると顔はふわりと浮き上がり、風穴の天井にへばりついた。


「おいこら、降りて来い。来ないならこっちから行くぞ」

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