第3話
光で動物を模してみる。
それで誰が引っ掛かるかと歩かせると、あの幼い子がついてきてしまった。
「帰れ。」
誘い出しておいてなんだが。
その手には稲荷がある。
なんだ…?
なんのつもりで…。
「お稲荷様!お母さんの簪、取り返して!お侍さんが、持っていっちゃったの!」
というと、あの輩か。
不殺の盗賊であった過去が思い出される。
確かにあの頃は、侍に盗られたものを盗り返し人に返すのが仕事だったが。
今は関係ない。
「お願い!稲荷、持ってきたよ!」
差し出すそれに溜め息をつく。
いやいや、稲荷ひとつで働く奴があるか。
都合が良すぎる。
ん?
待て、先程お稲荷様…と言ったな…?
まさかそれと勘違いされている…?
「お稲荷様!できるよね?お母さんの大事なものなの!お願い!」
親友ならこれに頷くだろうか。
是非もなしと。
嗚呼、嫌になる。
懸命に差し出す稲荷をつまみ上げ口に放り込んだ。
「足りん。」
「そ、そんな…。」
「あとで、四つ。いいな?」
指を四本立てれば頷いた。
さて、簪だけではあるまい。
盗り返せるものは全て盗る。
それが俺だ。
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