第2話

 光に着いていくと人が倒れるのが見えた。

 悲鳴を上げてから両手で口を塞ぐ。

 もう遅いってわかっていながら。

 近付いてくる白い男の人は手を伸ばしてくる。

 嫌だ。

 弟にあげるつもりだった稲荷を差し出す。

 帰りたい。

 帰りたいの。

 お願い。

 指先で稲荷をつまみ上げたのを見て頭を下げた。

 許して。

 帰りたいの。

 お願い。

 お願い!

 体がふわりと浮いて顔を上げると、抱き上げられていた。

 何処に連れていかれるのかわからない。

 稲荷を飲み込んだ男の人は暗闇を歩いていく。

 怖くて震えたまま声も出ない。

 すとんと降ろされて気が付くと、もう村の傍だった。

 恥ずかしいけど迷子になってたから凄い嬉しくて、安心して。

 けど男の人はすたすたと歩いていく。

 暗闇の中の光のように、その白は遠退いていく。

「待って!」

 声が届かない。

 でも走って追いかけられなかった。

 家に帰って弟とお母さん、お父さんに心配されて怒られたけど男の人のことを教えてあげた。

「お稲荷様かもしれないぞ。」

「なにそれ?」

「狐様なのよ。稲荷を供えるとお願いこと叶えてくれるのよ。」

「そっかぁ!」

 弟と一緒に目をきらきらとさせる。

 稲荷を持ってたから、助けてくれたんだ。

 良かった!

 次の日、弟と隣り村に行った。

 稲荷を三つ貰って、村を出た。

「これはね、お稲荷様の分なんだよ!」

「食べちゃだめだね!」

「そうだよ!」

 笑いながらお稲荷様に出会ったところに行ってみる。

 でもいなかった。

 がっかりする弟に、今日は違うところにいるんだと言って手を引っ張った。

 夕方まで遊んで稲荷を二つ弟と食べる。

 村に帰ると火事が起こってた。

 家に走っていくと燃えている。

 けど、お母さんとお父さんはちゃんと外にいて、抱き締めてくれた。

 なんで?

 なんで、あちこちの村が燃えてるの?

 不思議で不思議で仕方がなかった。

「なんて酷いお侍さんだ!」

 お侍さんが村を燃やして、いろんなものを盗っていった。

 お母さんの大事な大事な簪も。

 私は走った。

「何処行くの!?」

「お稲荷様のとこ!」

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