光の狐

影宮

第1話

 夜道に獲物が歩いている。

 光は者を惹き付ける。

 誘うように夜闇のそこに光る何かが座っているのに獲物は気付いた。

 吸い込まれるように近寄っていくのを眺めながらその光を奥へ奥へと歩かせた。

 もう少し、もう少し。

 そうして訪れた獲物を待ち伏せしていて、顔を合わせた瞬間に首を斬った。

 小さな悲鳴に目を向ける。

 この闇夜の中の一点、光に誘われたのは獲物だけではなかったらしい。

 幼い女子だ。

 近寄れば泣き出しそうな顔をする。

 見られたからには殺す。

 それが忍の事情だろう。

 触れようとすると両手で何かを突き出してきた。

 稲荷…?

 片手でそれをつまみ上げると、頭を下げられる。

「許して。お願い。殺さないで。」

 成る程、これで手を打てと。

 まぁ、まだ幼い子だ。

 大した影響もないだろう。

 そう思って稲荷を口に放り込むと、幼い子を抱き上げた。

 震えているのもお構い無し。

 どうせ近くの村の子だろう。

 一人で歩けるのはそれくらいだ。

 村の近くで降ろしてやってそのまま立ち去る。

 呼び止める声も気にせず。

 次の獲物を誘おうか。

 夜は暗いから誰もが光を求めて馬鹿みたい引っ掛かる。

 少しの悪戯と同じ感覚で血を地面に注いでいく。

 血で育った花ほど美しいものはないし、その花が似合う親友ほど血を吸っている者はいない。

 そんな冗談めいたことを考える。

 何度も閃光を放つ、光を歩かせて待ち伏せの繰り返し。

 さっき食べた稲荷の味を思い出しながら、たまにはああいうものを食べるのもいいと非番を満喫していた。

 戻ったら稲荷寿司を親友に作ってもらって皆で食べるなんて贅沢もいいだろうし、だったら才造を煽って食べさせて親友を喜ばせてもいい。

 才造が言う旨いという一言は他の誰かが言うそれよりも親友は喜ぶ。

 ついでにもう一つ仕掛けてやろう。

 ただ親友である影が喜ぶような仕掛けを考えていると次なる獲物が来た。

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