第3話 後編。
*
先にシャワーを浴びた僕はベッドの上で悶々としていた。
(これから、どうすればいいんだろう……)
頭の中がピンク色になっていく。
ずっと悶々とするようなことを考えてしまうし……。
もういっそのこと逃げてしまおうかとも考えたが、さすがにそれはできないので諦めていたところだ。
そんなとき、部屋の扉が開く音が聞こえたので視線を向けると、そこにはバスタオル一枚だけを身に着けた彼女の姿が目に入った。
(!?)
あまりにも刺激的な光景だったので、慌てて視線をそらす僕。
そんな僕を気にすることもなく、彼女は近づいてきたかと思うと、いきなり抱きついてきた。
そしてそのままベッドに押し倒されてしまう。
さらに顔を近づけてくる彼女を見て、僕は慌てて口を開いた。
「ちょ、ちょっと待った!」
「なによ」
不機嫌そうな顔をする彼女を見て、少しだけ冷静になることができた。
なので、なんとか気持ちを落ち着かせて口を開く。
「ど、どうしてこんなことをするの?」
僕がそう聞くと、彼女は呆れたような顔をしていた。
だが、やがて観念したのか理由を話し始めた。
「そんなの決まってるじゃない! あたしを気持ちよくさせるためよ!」
「えっ!?」
(どういうこと……?)
ますます混乱する僕だったが、そんな僕にはお構いなしに彼女が迫ってくる。
やがて唇が重なり合いそうになった瞬間――。
(あっ……)
そこで僕の意識は途切れてしまった――。
*
(ん……)
目を覚ますと、ベッドの上に寝かされていた。
(あれ? いつの間に寝ていたんだろう……?)
そう思いながら身体を起こすと、隣で眠っている彼女の姿が目に入ってきた。
(そっか……あのまま眠ってしまったんだな)
そんなことを考えながらぼんやりとしていると、不意に声をかけられる。
「……起きたみたいね」
声のしたほうを見ると、そこには御領さんが座っていた。
「……おはよう」
「ええ、おはよう」
挨拶を交わす僕たち。
すると、御領さんは真剣な表情でこう言った。
「ねえ、一つ聞いてもいいかしら?」
「なに?」
聞き返すと、彼女は真剣な眼差しのまま質問してきた。
「あんたは、あたしのことが好きなの?」
「えっ?」
(急に何を言い出すんだこの人は……)
僕は困惑しながらも答える。
「それはもちろん好きだよ」
「…………」
(あれ? どうして黙っているんだろう?)
黙ったまま見つめてくる彼女を見て不思議に思っていると――。
突然、御領さんは足を僕の顔に向ける。
「ほら……」
「ほら……って?」
意味が分からず首を傾げる僕に対し、彼女は苛立った様子で言う。
「だから舐めてって言ってるの!」
「な、なんで!?」
突然のことに驚きを隠せない僕だったが、それでも彼女は許してくれなかった。
「いいから早くしなさい!」
そう言いながら足を動かし始めたので、避けるわけにもいかず、やむなく舐めることにする。
(うわぁ……すごい、いい匂いだな……)
そんなことを考えているうちにすっかり夢中になってしまったようで、気づけば夢中になって舐め続けていた。
そんな僕を見て満足したのか、ようやく解放してくれた。
「はぁ……はぁ……」
荒い呼吸を繰り返す僕を見ながら、御領さんは満足そうに微笑んでいる。
その笑顔を見た瞬間、僕はドキッとしてしまった。
(なんだろう……?)
理由はわからないままであったが、なんとなく嫌な感じはしなかった。
むしろ嬉しいという気持ちのほうが強かったような気がする――。
*
僕たちはなぜか一緒にお風呂に入ることになっていた。
(なんでこんなことになったんだろう……?)
湯船に浸かりながら考える僕。
すると、隣から声をかけられた。
「ほら、もっとこっちに来なさい」
そう言って手招きしている彼女だったが、正直恥ずかしいので遠慮したい気分だった。
しかし、ここで断ると後が怖いので従うことにした。
浴槽の中で彼女と向かい合う形になる。
そのときになって初めて気づいたことがあった。
(意外と胸が大きいな……)
さすがに付き合ってすらいないので、僕と彼女はタオルを巻いているが、それでもはっきりとわかるくらいに主張していたのだ――。
(やっぱり大きいんだな……)
そんなことを思っていたら自然と視線が向いてしまい、それに気づいた彼女が言った。
「あら? どこを見ているのかしら?」
「い、いや、別になんでも……」
慌てて否定するものの、完全にバレている様子だった。
その証拠にニヤニヤとした笑みを浮かべているからだ。
(これはまずいかも……)
そう思って逃げようとしたら、腕を掴まれて阻止されてしまう。
そして、そのまま抱き寄せられてしまった。
当然、お互いの身体が密着してしまうわけで――。
(や、柔らかい……!)
それがなんの感触なのかはすぐに理解できた。
なにしろ当たっているのだから……。
そんな僕に構わず彼女は話し続ける。
「ねぇ、今どんな気分?」
「そ、そんなこと言われても……」
答えられないでいると、さらに強く抱きしめられてしまう。
そのせいで余計に意識してしまい、頭が真っ白になってしまった。
(だ、ダメだ……これ以上は耐えられない……)
そう思ったところで、御領さんは右足を僕の顔の前に差し出してきたのだ。
「ほら、舐めていいわよ」
「…………」
(もしかしてこれをしろってことなのかな……?)
一瞬躊躇った僕だったが、恐る恐る舌を伸ばした。
ペロッ……ペロッ……ピチャッ……クチュッ……!
しばらく続けていると、彼女は満足そうな笑みを浮かべていた。
その表情を見た僕は嬉しくなって夢中で舐め続けたのだった――。
*
お風呂から上がった僕たちは服を着ようとしていたのだが――。
ふとあることに気づいたので聞いてみた。
「どうして僕を……その……ホテルに誘ったの?」
それを聞いた途端、彼女は動きを止めたが、すぐにこう答えた。
「あんたにゾクゾクさせてほしかったのよ」
「ぞくっ……?」
(どういう意味だろう……?)
疑問を抱いていると、彼女が近づいてきて耳元で囁くように言った。
「あたしね、あんたと相性がいいと思ってるのよ」
「えっ!?」
「あたしの気持ちを理解できるのは、あんたしかいないってことよ」
「…………」
(それってつまりはそういうことだよな……?)
そこまで言われて気づかないほど鈍感ではないつもりだし、なによりも僕も同じことを感じていたのだ。
だからこそ彼女の気持ちはよくわかった。
「うん、僕もそう思うよ」
素直にそう答えると、彼女も嬉しそうに微笑んだのだった――。
*
その後、無事に家まで送ってもらった僕は自分の部屋に戻るとベッドに倒れ込んだ。
(なんだか今日は疲れたな……)
もうこのまま寝てしまおうかと思っていると、スマホが鳴ったので確認すると、どうやら彼女からのメッセージが届いたようだった。
(なんだろう?)
そう思い内容を確認すると――。
『今度また一緒に出かけましょう』
そんな文章が書かれていた。
(これってデートの誘いかな?)
そんなことを思ったが、すぐに返信することにした。
なぜなら答えは決まっているからだ。
なぜなら――。
『喜んで!』
こう返す以外に選択肢はないだろうから――。
*
彼女との秘密の関係が始まってから一か月が経過していた。
彼女の靴下を履かせるだけの関係は今も続いている。
(きっと彼女に染められちゃったんだろうな……)
そんなことを考えると、思わず笑みが溢れてしまう。
(でも、まあ、いっか……)
こうしていられるなら、それでいい。
今日も彼女に尽くしていくだけだ。
僕と御領さんとの関係は、まだ始まったばかりだから――。
ドMな僕がドSな彼女の絶対領域に触れそうな悶々とした日々。 三浦るぴん @miura_lupin
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