第2話 火種


 しかし、そこに唯一隙があった。元ライバス共和国の海上は完全には封鎖されておらず、しかも臨検用の艦船が足りず潜水艦等を使わなくとも民間の商船で兵器を輸送することが可能だった。だがそれも元ライバスの全ての港に帝国の部隊が駐屯しており上陸させるのが難しくレジスタンスには殆どルートもなく物資は不十分だった。しかし、ここに地形を利したファーガスの作戦があった。ちょうど半島を隔てて湾がありそこはまだ帝国軍の手にあらずファーガス本国とも接しており元ライバス共和国の国境まで二十キロほどと比較的ルートさえ確保できればファーカスからの物資輸送と連絡が可能だった。地上は共和国の制圧下にはなかったが数本の山脈からのルートは帝国軍も達しておらず容易に通過することが可能だった。



 かくしてファーガスの機甲兵器「AFT」がトゥーポイントの街にある訳だ。だがこのルートは大部隊が通過することは不可能であり、且つ敵進撃ルートをかく乱する効果も薄かった。そこにはそれどの意味が無いように思われていた。しかし、その行動自体に意味があり「ここにファーガス共和国あり」という力を示せればよかった。そして、次ぎなる戦いの緒戦として必要な事・・・いや、この街を開放すること事態に意味があるのかも知れない。



 2機のAFTは野営地主陣地に向けて突撃を仕掛けた。急速に接近した敵兵に対して攻撃する術もなく陣地の横塹壕の交通路から1機、正面からは隊長機が突っ込んで来た。陣地とは言え深い塹壕陣地が続いているものではなく陣営のプレハブ・テント群とコンクリート壁と堀状の塹壕が二周ほどあるだけのもので防衛にはロケットランチャーシステムとオート機銃とあとは歩兵の護衛が常時歩哨をしている程度で本隊も自動車化歩兵とストライカー部隊しかいない。数両の対空戦車が配備されているが機動力ではAFTに遥かに及ばず、さらに30mm/AP弾でも貫徹するには難しく戦車砲でならば一発でも撃破できるだろうが機動戦術に長けたAFTは近距離戦闘においてこの機体に敵うものはないだろう。




「いよいよ始まったか、あっちの方で引き付けている間に俺たちはさっさとこの街を通過する機甲部隊を叩く事にでもするか!」



そう、2機のAFTはただのオトリで本当の相手は前線へと向かう機甲部隊の一個小隊だった。少数の増援または攪乱の目的でこのルート3を通過する増援部隊は少ないが無いわけではなく、この戦いで多くを占めるわけではないし戦力的には大した効果はそれほど無いが「共和国が帝国領」での戦いに参加したという事実だけでレジスタンスの活動は活発になりファーカスが戦いやすい状況を作れるというだけで今回の作戦に「将来への望み」を繋げる事が出来る意義深い戦いだ。




 しかし、そんな事、街の住民からすれば「イイ迷惑」であるはずだがこの街は先の戦いで多数の無抵抗の市民が虐殺されており不満は消えるどころか日増しに帝国軍への怒りが高まっていた。


「あんた達、本気で帝国を相手にするのか?ここの野郎じゃないと思っていたらファーガスの特殊部隊か・・・長老!これはチャンスではないのですか?」


「しかしのぅ・・・・情報通りならばいいのじゃが」


すると男は微笑し


「そのために我々がここに居る!防衛線いや攻撃隊の主力はすでに東進している。ここにいる主力は戦車一個小隊、それに残存部隊はストライカー一個中隊がいい所だ。その程度ならどうでもなる」


その心強い言葉に民衆の士気は一気に上がった。隠していた武器を持ち寄りレジンスタンス部隊が姿を見せ始めた。



だが、茶髪の無精ひげを蓄えた機甲化特殊部隊の小隊長は


「いや、ありがたいがこの戦いは我々の戦いだ。それに足の遅い歩兵を仲間にする訳にはいかないな。足手まといだ」



にわかに緊張し始めたトゥーポイント、女兵士はファーガスでも珍しい女性特殊部隊の隊員でありやはり女性のほうが冷静だった。


「あの、取り込み中なんですけど隊長はいつもこうなのよね。いつも一言多いし説明不足なのよね。」


腕組しながら


「じゃあ、こうしない? この町に入ったら彼らにも戦ってもらうっていうのは」

「なるほど、それならいい。でも、積極的な戦いは避けてもらいたい。やるなら待ち伏せ攻撃だ。それ以外は認められん。無駄にまた犠牲者を出すだけは避けたいからな」

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