デザートパンツァー
ハイド博士
第1話 希望の芽吹き
遥か遠くまで岩と砂しかないその土地・・・その端にある「トゥーポイント」と呼ばれる街その外れにある宿にはある「使命」を帯びた男たちが居た。
彼らには共通点が多い。しかし、ここに集っているのはそれを知っているからではなく
“同じ感覚”を得るために・・・そのためだけにここにいるのかも知れない。
長く続いている戦いの中、荒廃した大地と街が残るだけでそこには「希望」などと云う言葉はどこにも無い様だった。だがそれも彼らがここに来た理由だった。
ただ、ただ寂れた街と少なくなった住人と立ち寄る外の人間も少ないが彼らはこの町に訪れた。それが何の意味があるかは誰も気にすることもなく・・・
「寂れた街だとは聞いていたがこれほどとはな! 戦場もここから随分と遠いはずだろう」
「だがここはトゥーポイントだぜ。知って居るだろう」
「あぁ、虐殺のあった街だ。元々ライバス領だったからな、五年前の進撃ルートのど真ん中だ」
というとその土埃に塗れた向こう側のテーブルに居た老人が
「若いの、この国の者じゃ無さそうだがそんな詰まらん話を酒の肴にするんじゃない!!」
といったがすぐにこういい始めた。
「確かに本来ここは進撃ルートに入るはずがない。この街に立ち寄る意味も無いように思うじゃろうが戦争というのはおかしなものでな、見せしめにするならここのような小さな街がちょうど良かったんじゃろう」と言った。
爺さんの言うことはもっともだった。それが戦争の恐ろしさであり愚かさでもある。
セティール帝国・・・この大陸一の強国で五年前に始めた戦争は今も続いている。しかし、帝国も「ファーカス共和国」との戦いでは大分疲弊し双方とも今は事実上の「停戦状態」であり散発的な戦闘はあれども数年前のような大規模な戦いはすでに継続できなくなっていた。しかし、セティール帝国もただ手を拱いているわけではなく体勢を整えればすぐにでも進軍を開始できる兵力を未だに保有していた。帝国は多数の強固な陸軍力と帝国随一の「第三艦隊」それに各地に要塞を建造し攻守ともに優れていた。方や主敵国であるファーカスは三軍共に平均的であったが僅かに空軍力が優れていてしかも作戦と地形を利して帝国の猛攻を防いでいた。
その中で元ライバス共和国つまり「エバンズ四カ国」の一カ国であるこの「トゥーポイント」の街・・・そこに来た男たち三人は存亡の危機に立たされた四カ国・・・そして、ファーカス共和国のためにやって来たのだ。
(酒場より10km地点)
「さすがにこんなところに我々がいるとは思っていないだろう。」
「えぇ、そうね。お先に獲物を狩らせて貰うわ。」
「さぁ、奴らを叩き起こしに行くぞ!突撃だ。」
そう言うと街の外れにある帝国の守備陣地へと「AFT」と呼ばれる機体に乗りブーストで高速で突入して行った。対機甲兵器の中で比類なき戦闘力を持つ対地では無敵とも言える性能。そして、対空・対艦に置いても強固な戦力となりうる「ファーガス共和国」新型兵器・・・しかし、たったの2機で突撃などありえない。どこにでもある防衛陣地とは云え補給路「ルート3」と重なり敵の規模は一個中隊を配備していた。しかも歩兵やビークルばかりではなく装甲車両も有したこのあたりでは有力な部隊である。
第二防衛線・・・セティール帝国が敷いている防衛線で「第一線」が内陸部主戦線正面であれば第二防衛線は海岸地帯の二次戦線で海からの揚陸に備え、補給路を維持するために必要だった。しかし、メインの補給路である「ルート2」ではないルート3を防衛するのはせいぜい四個師団で有事配備としては非常に希薄でそれほど重要視されていなかった。それというのも制海権を確保している帝国軍は本国の軍港とその周辺の海岸線に三百キロに及ぶ“要塞”を建設しており実際は海岸線沿いを塹壕と銃座で守られているだけであるが五十キロ置きには対爆砲台と直援の航空基地を有しており、さらに護衛艦隊(二級艦隊)が洋上を封鎖していており、この「鉄壁の守り」で戦線と補給路は保持できると考えていたのだ。
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