オタクとギャル

「――川北くん坂下さん森本さん海城さん、この後校長室に来てください」

「は、はい」


 朝礼中、いきなり校長室に来るよう言われた。

 僕が何かしたのか?


 朝礼も終わり相良さんの友達と校長室に向かう。


「なんでお前もなんだよ」


 僕が聞きたい。

 なんで相良さんの友達とは関係のない僕が呼ばれているのだろうか。


 校長室に入る。

 そこには校長と数人の先生、そして警察官が二人いた。


「座ってくれ」


 本当に何をしたのだろうか?

 警察もいると怖いのだが……


 僕がソワソワしていると校長から衝撃的なことを言われる。


「相良朱音さんが自殺しました」

「え……」


 相良さんが、自殺?

 校長は確かにそう言った。言い間違えではない。


「ど、どういうことですかっ?」

「そのままの意味だ。今朝警察から学校に相良さんが自殺したと連絡が入ってな」

「事情は私から説明します」


 警察の人が状況を説明する。


 今朝相良さんの近所の人から警察に通報があったそうだ――「近所の家の様子がおかしい」と。

 そして警察が相良さんの家に入ると相良さんが首をつって自殺していたようだ。

 そうして学校に連絡がされて今に至る。


「な、なんであかっちが自殺なんかっ」


 相良さんの友達がなぜそんなことになったのか説明を求める。


「彼女の両親はよく彼女に虐待をしていたらしい。彼女はそれに耐えきれず自殺した、と今のところこちらはそう判断している」

「そんなあかっちは今までそんな様子は……」

「君たちに迷惑をかけたくなかったのだろう」

「あの一ついいでしょうか」

「なんだ?」


 僕は一つになることがあって尋ねる。


「なんで僕も呼ばれたんでしょう」

「それは彼女が君たちに遺した動画を見てもらえばわかる」


 そういってパソコンを取り出して動画を再生する。


『撮れてるかな? ……オタク君見てる〜? ……なぁんて 君が見てる頃には私はもう居ないんだよね……』


 彼女の寂しげな声が聞こえる。


『とうとう最期まで、君と話せなかったな……馬鹿だよね、私。いつかラノベについて話せたらと思って君の好きな小説、いっぱい勉強したんだよ? それなのに友達に嫌われるかもって思うと中々話せなくて……本当馬鹿だなぁ』


 彼女がラノベを読んでいたことを初めて知った。


『私は、いつだって君が好きでした。さようなら』

「……相良さんっ、僕も相良さんのこと好きだよっ」


 僕は涙を流して、僕の本当の気持ちを伝える。

 伝えることができなかったこの思いを、今伝える。


『次にゆっきー達。急に死んじゃってごめんね――』


 相良さんは友達にも言葉を残していたが僕はただ泣いていた。


『皆んな、ごめんね。さようなら』


 動画が終わる。

 相良さんの友達も泣いていた。


「それと川北くん、彼女の遺書にこれを君に返すように書いてあった」


 そういわれ渡されたのは昨日貸した傘だった。

 僕は本当に相良さんが死んでしまったと理解して泣きじゃくった。


 そんな僕らを校長達は静かに見守っていた。



 僕は『好き』という思いを伝えることが出来ずに失恋したのだった。

 ダメ元で告白しておけば、こんなことにはならなかったかもしれない。彼女の苦しみを理解していれば今とは違った運命が待っていたかもしれない。


 でも時間は戻らない。時間は彼女を置いて無情にも流れていく。

 今更後悔したところで何もかもが手遅れなのだ。






 終

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オタクとギャル 和泉秋水 @ShutaCarina

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