第9話 帰還(Village Police)


村の人たちと話をすると、自分が聞かなかっただけで、子供たちの失踪は生活の中に溶け込み、特段秘密にされているものではないことがわかった。


20歳になってもどってきた子供たちは立派に育っていた。誰がいつ消えて、いつ戻ってきたか、という情報は実はオープンで、村人たちはそれを息子たちが留学から戻ってきたかのように、自然に受け入れていた。


戻ってきた子供たちのキャラクターは様々だったが、共通していたのは人に対して深い愛情をもっていたこと。頭の回転が良く、深く勉強に励んできたのだろうか、知識も豊富だった。


帰還した子供たちは20人を超えていた。彼らは自立した生活を行い、独自のコミュニティを構築していた。どのように村を発展させていくのか話し合いを重ね、海外へ新鮮な野菜を送り届けるルートを開発し、ますます村は繁栄していった。


その失踪の歴史はそれほど古いものではなく、実際は戦後すぐくらいから始まっているようだった。村人たちは質問をすると快く教えてくれた。皆その状況を受け入れ、神様のお力で、と心から信じていた。


段々と村人たちは自分に心を開いてくれるようになったと感じた。この村の一体感の秘密はここにあったのかもしれないと気づいた。


赴任中も肌で感じられるくらいに、村はますます発展し、農家の売上は上がり続けた。そして、村の収益の一部は、村議会の話し合いの結果、毎年世界の恵まれない村に寄付されることになった。村の経営は帰還メンバーが中心となって行い、効率よく回っていた。


レタスの出荷数は日本一になってからしばらく経つが、海外への輸出が盛んになり収益は上がり続けていた。とはいえ、生産量が限られていたので、家庭が裕福になるのは理解できても、多額の寄付をするほどのお金が貯まるとはとても思えなかった。「資産運用の成功」ということだったが。


そこにはもう一つカラクリが潜んでいることを僕は確信した。それは村長の表彰とい形で、一応の解答を得ることにはなったが、、、。

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