第7話 秘密(Village Police)
僕はあの子を神様だということにした。色々と考えるとわけがわからなくなってしまうので、そう仮定した。経験上ものごとは大概根本的なところは単純だった。最初の根っこの部分から物事が広がっていくに連れて、枝分かれが永遠と続き、枝の先を見ても、大元を見つけるのは至難の業になっているだけだと思っていた。単純な原点を探すことができれば、すべてが見えるはずだった。
実際、「反応点」を触って以来、背中がかゆくなることはなくなった。
部屋に帰ってパソコンを開いた。
「日本のへそ」を検索すると、一番上に兵庫県西脇市がヒットした。次に出てきたのは岐阜県関市。そこが国の人口重心だという。これも関係なさそうだった。その下に上がっていたのは長野市街から白馬方面の向かう県道沿いにあった「道の駅おがわ」。本州の重心でそこを支えると日本列島が安定すると書かれていた。それ以外「へそ」でヒットするものはなかった。だとすると、霞村と小川村は何か関係あるのかもしれない。重心の下には内臓があると言っていたのは、どういうことなんだろうか。
本来、駐在員は持ち場を離れることを禁止されていた。つまり担当区域内には、必ずいなければいけないというルールがあった。どうしても離れないといけないと予めわかっている場合には、警察庁の担当者に相談して替わりを置かなければいけなかった。事件があった時に現場対応に支障が出ないように、と定められていた。
小川村は、霞村のすぐ隣にあった。地図で見ると、車で30分くらいあれば着きそうだった。僕は、週末に訪ねることにした。本部には連絡しなかった。行ってみたら小川村には「HESO」と書かれた場所があった。神社があったところが小さな観光スポットのようになっており、御柱と書かれた木が祀られていた。周りには何もなく、人もいなかった。僕はただ無言でそこを訪れ、何も見つけられずに帰った。何の感情もなく、ヒントも得られず。
世の中そんな簡単にいくはずはないと、とりあえず納得した。帰りの車の中で、僕は冷静に見て、自分が子供の失踪の秘密を暴く必要があるのかと考えた。興味はあったが、村はこれでうまくいっていた。そこにメスを入れることに意味がないように思った。自分の赴任の目的は村の治安維持。そのバランスを崩すことが却って迷惑をかけることになるのではないか。それに村人たちは知っていることを僕に教えてようとしなかった。村長が最初に教えたのは「何も教えない方が色々と調べられるから」と考えた上での布石だったのではないか。子供たちがいなくなっていることも、帰ってきたことも。所詮、2・3年駐在しているだけの人間で、本質的には仲間としてとして受け入れていないという証拠だろうと考えた。僕はその足で、村長室に向かった。ちょうど、その日は村長が村にいる日だった。
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