舞台は「現代日本」。
2024年10月17日
どうも、あじさいです。
最近の筆者は、読書はおろか新聞のチェックも難しいくらいですから、長編小説の執筆なんてずっと
歴史的に見てもここ最近は、「現代日本」を舞台とし、若者たちが主軸となるヒューマンドラマ(的な物語)を書いていく前に、具体的な年代をきちんと決めることが重要になってくるように思います。
といいますのも、近年の日本における社会環境や価値観の変化はめまぐるしく、特に学生となると、年代が少し違うだけで何歳のとき何を経験したかが変わってくるからです。
ここ15年ほどの大きな出来事をざっと振り返っても、東日本大震災、女性の社会進出(女性が輝く社会 → 一億総活躍社会)、LGBTの地位向上(男女二分法や家父長制の相対化)、スマホ・SNSの普及(→YouTuber・VTuberの一般化)、各種教育制度改革、コロナ騒動、大谷翔平氏の活躍などがあります。
中でも面倒なのがコロナで、学校生活や部活動(学生の自主的な活動)を破壊しつつ、老若男女のスマホやSNSへの依存(ある意味ではカクヨム依存もその1つ)を
若者たちを
もちろん、スマホ・SNSの普及は2010年代半ばには起こっていたことですし、悪いことばかりではありません。
たとえば、セクハラという言葉自体は昔からありましたが、それが絶対に許されないという認識が「社会の空気」にまでなった――セクハラを嫌がる女性が男性や他の女性に鼻で笑われなくなった――のは、ゆとり教育による人権意識の向上やフェミニズム書籍の増加だけでなく、SNSが女性たちの本音が吐露される場として機能したことが大きいと思います。
しかし一方で、前時代的な差別意識による不用意な言動、あるいは極右的な根拠に
いつの時代も、年長者は若者や新しい時代に不安を覚えるものですが、それにしても、現代の若者を取り巻く環境は非常に危ういものだと思います。
難しいのは、スマホやSNSがもたらした恩恵があまりにも大きい――学校や職場でも誰もがそれらを使っているという前提で話が進められていく――せいで、それ自体を悪いものとして切り捨てることができないことです。
直近の東京都知事選では現職の小池氏に続いて無所属の石丸氏が得票し、国政の野党第1党である立憲民主党の蓮舫氏を上回り、にもかかわらず、彼が選挙後のインタビューやTV番組でまともな受け答えができないことを露呈したことは、記憶に新しいわけですが、これも石丸氏の “印象操作/セルフプロデュース” が奏功するくらいにインターネットそのものの影響力が強まっていることを示しています。
街頭で演説したり、新聞社や出版社のインタビューに答えたりするだけでは、ネット界隈の人気者に負けてしまうわけです。
ちなみに、当選した小池氏は自民党から援助を受けながら(つまり当選後に自民党の意向に沿った都政を行うことを了承しながら)、旧統一教問題・裏金問題で自民党への嫌悪感が強くなっていることを考慮して、選挙活動中はそれを隠していました(隠しているということが、少なくとも筆者が購読する地方新聞では、選挙中から報じられていました)。
また、石丸氏は既存政党やその政治家を私利私欲や党利党略で動いているだけの『政治屋』と批判するのが特徴で、それによって若者や女性の支持を集めたのですが、選挙前に日本維新の会に協力を頼んで
石丸氏の選挙直後に日テレが行ったインタビューがYouTubeに公開された際、そのコメント欄は
「コメンテーターが意地悪な質問ばかりしている」
「どこでも聞かれるような同じような質問ばかりで、石丸氏がうんざりするのは当然だ」
「石丸氏がかわいそう」
といった
意地悪だと言われている質問も、
「地方自治体の市長だったのに、どうして都知事選に立候補したんですか?」
「あなたが批判する『政治屋』とあなた自身はどう違うんですか?」
というくらいのもの。
理念やヴィジョンを持っている政治家なら、聞かれなくても自分から話すような事ですし、答えることで視聴者に対して自分の考えを表明できる機会なのですから、唐突にキレて答えるのを拒否する利点など、(本来であれば)どこにもありません。
マスメディアが過剰なまでに政権批判をしていた民主党政権期(YouTubeで当時の動画を見ると笑っちゃいますが)とは対照的に、第二次安倍政権以降は
「コメントを差し控える」
「政府としてコメントする立場にない」
「その指摘は当たらない」
「適切に処理する」
といった全く中身がない答弁を、大手を含むマスメディアが批判もせず垂れ流すようになりましたが、議論の内容(論理的整合性や正当性)ではなく、態度や雰囲気で誰が『強い』か――誰が主導権を
もちろん、
都知事選の話が長くなりましたが、長編小説の執筆に話を戻しますと、登場人物が多感な青春時代に何を経験したかによって、社会や政治に対する考え方にかなりグラデーションが出てくるはずだということです。
とりあえず、筆者(あじさい)の新作小説は2023年を舞台にするつもりでいるのですが、主人公視点で「現代日本」の状況を文章化してみると、スマホ・SNSの普及以外の点でも、なかなかアレな――アレとしか言いようがない――ことになったので、この場で紹介させていただきたいと思います。
――――
1年余り前、2022年の夏、この国の元首相が射殺される事件が起こった。
事件の凶悪さに加え、犯人の男性が母親をカルト教団に洗脳されて、長年にわたって精神的にも金銭的にも苦しめられており、元首相がそのカルト教団を礼賛していたことを知って犯行に及んだらしい、ということが話題になった。
ニュースによると、外国由来のこのカルト教団は、洗脳や霊感商法などで多くの日本人から金銭を巻き上げる一方、与野党を問わず複数の政党に金銭、人手、票を提供し、その見返りとして、講演会やビデオに政治家を出演させて教団の権威付けを行い、犯罪行為が大きなニュースになるのを回避してきたそうだ。
この話の恐ろしいところは、この国を取り仕切っている政治家たち、特に、反左派で利害が一致した右派の政治家たちが、この国や国民のことよりも、自分や自分たち政党の利益しか考えていないと明らかになったことだ。
元首相を殺されておきながら、同じ与党の政治家たちが、カルト教団を取り締まろうとも、被害者を救済しようともしておらず、体裁のために通した救済法が不充分だと被害者家族に泣かれる始末。
自分たちが選挙に勝てるなら犯罪組織やカルト教団とだって結託するが、助けても
メディアはともかく有権者の方も、自分や家族がカルト宗教に関わらないならどうでもいいと思っているのだろう。
何だかんだと言われつつ、この国の政府は今もなお、カルト教団と最も深く結びついている右派政党によって牛耳られたままだ。
選挙結果の正当性が疑われる事態なのだから、こういうときはひとまず解散総選挙をして、国民が政治家を選び直すのが筋ではないか、などと俺は思うが、多くの有権者はそうは考えず、カルト教団に依存して当選した政治家にこの国の舵取りを任せ続けるつもりらしい。
もしかすると、この国の有権者は過半数がカルト宗教に染まっていて、政治家がカルト教団と結託することくらい普通だと考えているのかもしれない。
そんな陰謀論めいたジョークが現実味を帯びてくる。
一連の経緯を論理的に考えたとき、さらに恐ろしい可能性が浮上する。
すなわち、このカルト教団の一件が氷山の一角にすぎない可能性だ。
というよりむしろ、いま報道されている疑惑が全てだと考えることの方が、論理性を欠いている。
カルト教団と右派政党とのつながりだって、ずっとあったのに報道されてこなかったのだから。
(略)
小松左京は日本列島だけが物理的に沈没する小説を書き、星新一はショートショートの中で核戦争による地球滅亡を何度も描いたが、それでも、日本がここまで悪趣味な未来を迎えることになるとは予想できなかったのではないかと思う。
オーウェルの『1984年』やブラッドベリの『華氏451度』などに代表されるディストピア小説にしても、一見すると科学技術や政治的理念の究極に達したユートピアであるはずのものが、人間の自由と尊厳を
一面的な善が、無視しがたい巨大な悪を正当化してしまっているという構図だ。
作中世界の人々のほとんどは、何かしらの違和感や閉塞感を抱えている場合も、自分たちの世界に満足しており、だからこそ文句を言わない、そういうもののはずだ。
しかし、現在の日本では、誰もがそれを悪だと知っているのに、悪を改めて善を目指すことが
この国には善がなく、欲望する身体と虚無感に
――――
令和という時代に「現代日本」を舞台とした小説を書くのは難しい、というお話でした。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
語り足りないことを語っていたらキリがないので、今回は一般論で
衆院選は今まで2012年(野田政権)、2014年(安倍政権)、2017年、2021年(岸田政権)とありましたが、自民党がしおらしいのは選挙中だけです。
(カルト教団や裏金など違法な手段を駆使して)選挙に勝った後は「
――もはや、たまに優しいふりをするDV加害者、人心
どの政党でも政治家はそんなものだ、という思考停止も可能かもしれませんが、何にせよ、選挙に勝てるという状況が腐敗を助長しているのですから、少なくとも一旦は政権を失うのでない限り、自発的で抜本的な党内改革など期待できません。
有権者の多数派がこういう話をすんなり理解できるようなら、そもそも今、日本がこんなことにはなっていないと思いますが、さすがに今回ばかりは……。
さて、どうなるのでしょうね。
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