残酷な描写となろう系アニメ。
2022年05月08日
どうも、あじさいです。
どうでもいいカミングアウトですが、実は、筆者の自宅にはエアロバイクがあります。
トレーニング器具の代名詞で、車輪のない自転車のようなものをジャコジャコ
家にエアロバイクを置いていいのはお金持ちだけ、というイメージがありますが、実家暮らしの筆者には置く場所がありますし、近所をジョギングするより気軽に運動できて、スポーツジムの会員になるより安上がりということで、1年ほど前、思い切って買うことにしました。
スポーツ用品店のカタログにある本格的なタイプは高価ですが、家電量販店にあるタイプでも、運動不足解消に丁度良いくらいの負荷で足を動かせます。
運が良ければ、リサイクルショップで見つかることもあります。
家庭用エアロバイクは良いですよ。
ジョギングと違って知人・友人に
無為に過ぎていく時間も、エアロバイクを漕いでいれば、何かをやっている気になれます。
そして、最近になって気付いたのですが、普段は精神的にハードルを感じるようなアニメでも、運動しながらなら意外と見られます。
視聴中にもやもやしても、足を動かせば気が紛れると言いますか、やり過ごせるからだと思います。
たとえば、『アルスラーン戦記』。
前々から興味はあったものの、キービジュアルだけでいかにもヘヴィな作品という風格で、長らく敬遠しており、エアロバイクを漕ぐことでようやく見始めることができました。
人がたくさん死ぬシーンを見るとつらくなることには違いありませんが……。
ああいうのを見ると、設定が不備だらけでキャラクターの言動が気持ち悪くても、なろう系のお気楽な雰囲気が恋しくなりますね。
これまで筆者が好きになった作品には、残酷な出来事や、息が詰まるような緊迫感が描かれる作品も多々ありますが、いつの頃からか、筆者はそういうのが苦手になりました。
『銀河英雄伝』や『鬼滅の刃』も、かなり面白いらしいですし、見識を深めるという意味で気にはなっているのですが、残酷なシーンが多いという噂を聞いて、全く見ていません。
妹が強くプッシュしてくる『進撃の巨人』は、第1話だけ見たのですが、あのように人が悲惨な死を遂げる場面が克明に描かれてしまうと、心が痛むばかりで、「面白そう」とか「続きが気になる」とは思えません。
もちろん、残酷な描写を何とも思わない人はおかしいという話ではなく、今の筆者にそれを受けとめられるだけの余裕がないという話です。
一般的に――と言っていいか分かりませんが――、創作物における残酷な描写・出来事は、それ自体としてカタルシス(鬱屈した感情の表層化と浄化による快感)を生んだり、緊張感を演出して最終的にそれが解消することでカタルシスを発生させたり、作品のテーマやメッセージに重みを持たせたりすることで、作品を面白くするものだと思います。
つまり、残酷な描写が魅力として認識され、「鬱展開」だ「鬱アニメ」だと言いながら人々が視聴を続けていくのは、何らかのカタルシスやテーマ性がある(と期待されている)からです。
逆に言えば、残酷でありながらカタルシスもテーマ性もない作品は、ただ不快なだけであり、好意的に評価することが難しいはずなのですが、その話はまた後ほど。
ともかく、筆者の場合、その先にカタルシスがあるとしてもそもそも緊張感や心痛を抱えたくないと言いますか、そういう我慢大会みたいな作品の視聴に身を投じるだけの「体力」がないのです。
Web小説原作のアニメ(なろう系アニメ)の多くが基本的に緊張感のないゆるい作風なのは、この意味で筆者と同じ心境の人が多いことの
いや、筆者は何となくそうなのだと思ってきました。
ですが、実際に見てみると、なろう系アニメにもなぜか残酷な描写が入ってきて、視聴者として何を思えばいいのか分からなくなることがあります。
印象深いのが『魔王様、リトライ!』です。
なろう系としては人気作の『オーバーロード』をオマージュした作品で、盗賊の名前がオ・ウンゴールだの、金持ち貴族の名前がエビフライ・バタフライだのという、B級作品であることに開き直ったゆるいコメディ(あるいはギャグ)です。
というか、そのはずだったのですが、アニメ第10話冒頭になって急に、ヒロインの回想として残酷な出来事をぶち込んできて、その後は何事もなかったかのようにコメディに戻り、回想シーンの要素を全く活かさないまま、第1期を終えてしまいました(2期の制作は未定)。
自らの作風を自らぶち壊したのに後始末をしないという斬新な作劇。
何がしたいのかさっぱり分かりませんでした。
元ネタの『オーバーロード』も――スピンオフ作品の『異世界かるてっと』と『ぷれぷれぷれあです』が好きなので頑張ってアニメ1期の10話まで見ましたが――ひどいもので、「敵が残酷なことをしたから、主人公も残酷なことをやり返す」という、小学生のケンカみたいな話でしかありませんでした。
たしかに、悪い人物・嫌な人物を、主人公がひどい目に遭わせてカタルシスを生むという手法は古典的なものですし、Web小説の異世界モノでは嫌と言うほどよく見るパターンです。
ただ、そういう筋書きで主人公の残酷な行為をカタルシスにつなげるためには、主人公と相手との違いを明示しておく必要があります。
たとえば、マフィアに大切な人を殺された主人公が復讐をする話なら、マフィアは悪人、主人公は善人(と読者・視聴者が思える)という構図でないといけません。
仮に主人公が殺人に快楽を見出して無関係の人まで殺す「悪人」になっていくなら、主人公もまたひどい目に遭うというところまで描かないと、カタルシスは生まれません。
あるいは、芥川龍之介の『羅生門』のように、主人公が悪人になることによって提示されるテーマが必要です。
ところが、『オーバーロード』の場合、残酷な出来事はあるのに主人公アインズがそれに無感動・無頓着という描写が続き、「同じ立場なら私も同じことをしていただろう」とか言っちゃいます。
「標的は誰でもいいけど、あいつは前のクラスでいじめの主犯格だったらしいから、俺がいじめても誰も文句言わんだろ」くらいのノリで残酷な殺し方をしようと決めるので、悪人とアインズの本質的な違いが分からず、カタルシスが生じないのです。
ここで問題なのは、作者さん自身の人柄ではなく、キャラクター造型だと思います。
主人公は元々一般人という設定なのですから、ちゃんと悲しんだり怒ったりする人物にすれば良かったのです。その上で、「正義の味方を気取るつもりはないが、このままでは後味が悪い」と敵を倒しに行かせれば、ちゃんとカタルシスが生まれたことでしょう。
というか、作者さんもそういうのをやりたかった気配が感じられるのですが、作中の描写を見ると、半端にダークヒーローを気取らせたせいで失敗してしまっています。
まあ、残虐行為を抜きにしても、このアインズくんは典型的なイキり野郎ですから、筆者はあまり好きになれないんですけどね(スピンオフではあんなに愛嬌があって実直なキャラなのに……)。
運よく手に入れた(自分のものになったのかさえ定かでない)能力を、まるで努力で勝ち取ったものかのように誇示して、時間がないと言いながら舐めプ(相手を舐めてかかって全力を出さない
ひみつ道具でイキり散らしたのび太くんは報いを受けて反省するものですが、アインズくんが反省する日は来そうにありません。
今期もなろう系アニメがあり、マンガで読んだことのある作品――タイトルが長いので『村人A』と言っておきますが――を、エアロバイクを漕ぎながら第4話まで見ましたが、残酷描写はないものの、マンガと同様、女性の谷間を見せて胸を主人公に押し当てておけば視聴者は喜ぶだろう、と言わんばかりのひどい作風です。
……常々疑問なのですが、あの程度の安易かつ下品な描写にいちいち大喜びするのが、日本の一般的な男性なのでしょうか。
それとも、漫画家さんやアニメーターさんが描きたかっただけでしょうか。
「文句があるのに、なんで見てるんだ? どうせお前も好きなんだろ?」
と言われそうですが、この作品のアニメ第1話は、マンガ版から改変されていて、ツッコミどころはあるにしても割と面白かったんですよ。
それから、そもそも『村人A』のマンガ版を読んだ理由でもあるのですが、いくらエアロバイクを漕いでも、動画配信サービスの品揃えが豊富でも、残酷描写を嫌っている筆者が気楽に、継続的に楽しめる作品がそう多くないのです。
そうです、創作物を楽しみたい気分なのに、他に見るものがないわけです。
今期のアニメだと『阿波連さんははかれない』と『SPY×FAMILY』は(どちらもなろう系ではないですよ!)楽しく見ていますが、既に3周目の視聴に入っています。
しかも、『SPY×FAMILY』はテンポがやや失速気味で、(今がつまらないわけではありませんが)後からまとめて一気に見た方が楽しめそうな雰囲気です。
出来の悪いなろう系作品でも、YouTubeのレビュー動画と合わせれば楽しめる(ことがある)ので、せめてそこに期待したいです。
レビュー動画と言えば、筆者お気に入りのVTuberで、Ne.Mo.42さんという方がいらっしゃいまして、この方のお話は楽しいだけでなく創作の勉強にもなるのですが……、その話はまた別の機会に譲りたいと思います。
ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
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