第33話 悪役令嬢シルヴィア
「ヒヒーン♪」
授業終了後、アリアがユニコーンを召喚したことは学園内に広まり、今では一目その姿をみようと行列ができるほどになった。
「可愛い!」
「なんと立派な角なんだ」
校舎内の中庭にはワイワイと他所のクラスから見物客達が集まり、貴族・平民と身分に関係なく盛り上がっていた。
「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい。世にも珍しいユニコーン。女性限定のタッチ回が今ならなんと大サービスで格安ですわよ!」
まぁ、それを加速させているのは私なんですが。
自作のメガホンと風魔法を使って音を増幅させ、最後尾まで届かせる。
「はいそこ。一列に並んでくださる?割り込みは禁止ですわよ〜」
行列を捌き、チケットを購入させる。
男性客だとユニコーンが嫌うのでそちらは至近距離での餌やり。お触りは厳禁だ。
私は商人ではないがタダでやるのは勿体ないからお金は取れるところから取れるだけ取っておく。
利益は全て私とアリアが学園内のスイーツショップを巡るのに使わせてもらう。
しかしながら凄い人気だ。ユニコーンという獣がそれだけ稀少であるということがわかる。
私だってエカテリーナを召喚して一躍人気者になろうとしたけど失敗してしまった。
魔法陣は作動していたし、魔力も消費したので召喚に失敗することは無いと思っていたのに……。
お師匠様は難しい顔をして何かを考えていたが、結局は何も言わずに授業は終了した。
もしやエカテリーナちゃんに何かあったのか⁉︎とお次は必要最低限の魔力で呼び出すといつもと変わらないサイズで召喚することができた。
お師匠様が用意した魔法陣に問題があったのか?
しかし、他の生徒達は問題なかったのでやっぱり魔力を流し込み過ぎたせいか。
「何をやっているんだ貴様は」
「あらジャック様。王族とはいえ特別対応はしていませんのでこちらでチケットを購入して列の最後尾にお並びください」
呆れ顔で話しかけてきたのは銀髪のジャック。いつもならそばに居るはずのクラブが今はいない。
「そんなものはいらん。オレ様は忠告しにきただけだ」
咳払いをし、腰に手を当てて真剣な顔をするジャック。
まさか、ユニコーンを召喚したことで注目の的になったアリアに自重するように言いに来たのか?
光属性であるというだけで一部貴族からはアリアに対する反感があった。平民なのに自分達より珍しい属性であること。
マーリンの弟子となってからメキメキと実力を上げて成績が伸びていること。
不満を高める材料としては十分だったのに、そこに上乗せして今回のユニコーンだ。
エースとジャックの派閥争いに巻き込まれてしまうことも考えなくてはならない。
「こんなところで商売するとは学園の営業許可は取ったのか?そうでなければ処罰の対象に、」
「アリア!今日は店仕舞い!撤収よ!チケットを買った人は後日改めて開催するのでその時まで無くさないように気をつけてね!」
私はアリアの腕を掴んでその場から素早く逃げ去るのだった。
まぁ、誰が密告したのかお師匠様にアイアンクローされて稼いだお金はエリちゃんに没収された。
ぶー、このところの私っていい所無しじゃん。
まぁ、お師匠様とアリアがいてクラブやソフィアとも顔を合わせる今が幸せだからそんなに深刻じゃないけどね!
噂を知っているか?
なんの噂だよ。
Aクラスのあの子だよ。
あぁ、あのユニコーンの。
可愛い子だよな。
密かに人気あるとか。
王子達も注目しているらしいぞ。
まさか婚約者候補にか?
だったら勝ち目ないよな。
それはまだわからないけど手元に置きたいって流れらしい。
光属性持ちは大成したりするからな。
初代の国王も光属性なんだろ?
どこからか聞いた話だと光の巫女なんて呼ばれているらしい。
聞いた聞いた。特別な存在で国に平和をもたらしてくれるって。
本当だったら凄いよな。
でも黒い噂もある。
いつも傍らにアレがいる。
あの蛇姫が。
彼女がどの貴族の下にもつかないのは蛇姫に弱みを握られているかららしい。
いかにもって感じの悪そうな奴だからな。
朝早くから夜まで世話をさせて付きまとっているとか。
Aクラスだと他の生徒を召喚獣で襲って笑っていたらしい。
今までの経歴も不明だしな。
社交場にも殆ど姿を出していなかったんだろ?
クラブ様とも不仲で実家でもかなりの問題児だとか。
追放されていたって聞いたぜ。
マーリン先生も脅されているんじゃないのか?
その可能性はありえる。
寮内で使用人をこき使っている姿も目撃されてるぞ。
実家で気に入らない使用人をクビにしたって話もある。
可哀想に。貴族だから逆らえないんだ。
爵位もそんな高くないのにな。
馬鹿。クローバー家はここ数年で成長した将来的に爵位が上がるかもしれない貴族だ。クラブ様だってジャック王子の側近だぞ。
それなのにアレがいるとは大変だな。
見た奴がいるんだが、アレは学園の理事とも繋がりがあるみたいだぞ。
お咎めがないのはそのおかげとか。
権力に守られている典型的な悪い貴族だ。
教師の中にはアレのせいで体調を崩した人もいるぞ。
振り分け試験の時に設備を破壊したみたいだな。
人の弱味に付け込み、貴族の地位を乱用し、逆らえば暴力で従わせる。
それってまるで物語に出てくる悪役じゃないか。
だからこう呼ばれるらしい。悪役令嬢って。
そんな悪い奴は排除しなきゃ。
危険な奴だ。
女の子を助けてあげないと。
みんなで団結しよう。
俺らの学園から追い出すんだ。
でもどうやって?
貴族でもないのに何ができるんだ?
貴族には貴族をぶつけんだよ。
弱くても数が揃えば大丈夫だろう。
頑張って僕らの平和を取り戻すんだ。
シルヴィア・クローバーを……潰す。
「調子はどんな感じかね」
「おかげ様で思惑通りに動いていますわ」
「それは情報を売った甲斐もある」
「これであの女を心置きなく潰せますわ」
「彼女が居なくなっても誰も迷惑しないからね」
「あなたって悪い人ですわね」
「君ほどではない。御膳立てや情報はしてあげるから思うがままに動きなさい」
「感謝しますわ。どこの誰かもわかりませんが」
「親切心で動いているだけの魔法使いさ。ただ、気をつける相手もいるよ」
「誰にですの?」
「マーリン先生は鋭いからね。そこだけは注意しておくんだね」
「えぇ。……覚悟しなさい蛇姫」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます