第18話 会場にて
俺たちは、マナの家に向かった。
マナは先に話してくると先に帰ってしまったが。カナもマナについて行ってしまった。
「お前、マナと同じ家に住んでるんだってな」
カズキがニヤニヤしながら言う。周りの獣人は「なんだと!?」と声を荒げだした。
「今は住ませてもらってるよ。ちょっとだけ家の手伝いもしてる」
手伝いと言っても店の掃除だけだ。
「マナのこと、どう思ってんだよ」
「どうって……」
カズキが聞いているのは、恋愛感情で好きかどうかのことだろう。しかし、俺は別にマナのことを特別好きというわけではない。この街のことをいろいろ教えてくれて感謝してはいるが、付き合いたいかと言われると、今はそんなことを考えている余裕はなかった。
「そりゃ、感謝してるよ」
「そんだけかよ、つまんね」
カズキはため息を吐いた。周りの獣人もつまらなそうにしている。
「そういうお前らはどうなんだよ!」
「俺は彼女いるからな」
「は……?」
カズキに彼女がいるなんて知らなかった。と言ってもまともに話したのは今日が初めてだし、知らなくて当然と言えば当然か。
「まあ、人間と獣人のカップルなんて出来っこねえか」
笑って俺の肩を叩く。
「そういうやついなかったのか?」
「ん、ああ。お前だって獣人と人間が仲悪いの知ってるだろ」
「まあ、そうだけど」
「お前が異常なだけだよ」
異常と言われると少し凹む。まあ確かに、人間が獣人と話しているところは学校に通っていても見たことはなかった。大人は違うみたいだが、それは仕事上の会話くらいなのだろう。
それに、グラウンドの件もある。正直、まだまだ人間と獣人が仲良くはできないだろう。
「まあいいんじゃねえの? 獣人の誰かと付き合っても、お前ならみんな納得すると思うぜ?」
「なんでそういう話になるんだ……」
この世界に来てから恋愛事なんて考えたこともない。というより、ただただ学生に戻って田舎で生活しているような状態だ。
そんな話をしていると、俺たちはマナの家の前に到着した。
「ちょっと中の様子見てくるよ」
俺はみんなを置いて先に中に入る。
「おう、帰ったか。お前も手伝え」
アキラが忙しそうに店の準備をしている。
「何かあったんですか?」
「何かって、お前らが家で打ち上げやるっていうから準備してるんだろうが」
「あ、そういう……」
俺は店の準備を手伝った。基本的には机の移動だ。
店自体を開けないわけにはいかないので、俺たちが固まれる場所づくりをした。
マナは厨房の方で料理しているようだ。俺もそろそろ何か手伝いたいが、今はその時ではないだろう。
「そろそろいいか。店開けるぞ」
準備が整ったところで、俺は外の獣人たちを中に入れた。
作ったスペースに案内して、アキラの方に向かう。
「お前はもう手伝い大丈夫だぞ。ありがとな」
「わかりました」
俺は獣人たちのところに戻った。
「今日は私も手伝わなくていいって言われちゃった」
マナも笑いながら俺の右横に座る。反対の席にはいつの間にかカナが腰かけていた。
「料理運ぶのくらいはやった方がいいかな……」
「お父さんがいいって言ってるから、別にいいよ。今日はアルバイトの人も来てるし」
厨房の方を見ると、何人か見える。普通にアルバイトも雇ってはいるようだ。朝の掃除しかしてないから知らなかった。
「それじゃあ、まず飲み物から頼もうか!」
そして、体育祭の打ち上げが始まった。
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