第17話 打ち上げ

「勝ったのは赤チームです!」

 グラウンドから、大音量でアナウンスが聞こえてくる。なんの種目をやっているのかはわからないが、赤チームが勝ったらしい。

 これで全部の種目が終わった。結果は集計が終わったら校内放送でアナウンスされるらしい。白チームは勝ったのだろうか。

 俺は保健室で寝転がりながらぼーっと考えていた。

「今回は赤チームの勝ちみたいだね」

 マナが保健室に入りながら、残念そうに言った。

「そっか、勝てなかったか……」

 ほとんど獣人の力で取った点数だ。俺が悔しがっても仕方がないことだとは思う。

「俺、全然ダメだったな……」

 短距離走でもドッジボールでも、俺は何もしていない。

「ドッジボールであそこまで残った人、トーマ君だけだよ? もっと自信持ってもいいと思うな」

「結局顔面にボール食らってコレだからなぁ……」

 起きてからは一応保健室で過ごしている。痛みも特になく、もう動き回っても大丈夫だろう。もう俺が出る種目もなかったし、特に気兼ねなく休むことができた。

「でも、カナもカッコよかったって言ってたよ?」

「何を見てカッコよかったのか……」

「あの子、最近トーマ君にべったりだよね。最初は私の陰に隠れてたのに」

「確かにな。俺も最初会った時は逃げられたし」

 カナに会った時のことを思い出す。最初に会ったのは、掃除してた時だったか。

「そろそろ教室に戻ろうか」

「そうだな」

 俺たちは白チームの教室に向かった。

「おう、もういいのか」

 教室に入るとカズキが声をかけてきた。

「ああ、かなり休んだからな」

「お前、人間のくせに結構やるんだな」

 周りの獣人も俺に声をかけてくる。

「結局俺は何もできなかったよ……」

「それにしてもすごかったぜ? ちょっとは人間のことも見直したわ」

「俺たち、このあと飯でも行こうかって話してたんだが、お前もどうだ?」

 カズキが言った。俺は教室の隅で固まっている人間たちのグループを見る。俺たちの様子を窺っていたようで、俺たちが見た途端、顔を逸らしてしまった。

「なら、白チームのみんなで行かないか?」

 俺が言うと、獣人たちは少し悩む素振りを見せたが、カズキが「そうするか」と決めた。

「それなら、家を使ってよ」

 マナが横から入ってくる。

「いいのか?」

「別にただってわけじゃないからね。ちょっとはおまけしてあげるけど」

「ならお言葉に甘えて、マナの家で打ち上げするか」

「じゃあ帰ったらお父さんに言っておくね」

 打ち上げの場所が決まったところで、俺は人間のグループの方に向かった。

「そういうわけだけど、お前らはどうする?」

「私は行くよー」

 マリアが第一に口を開くと、他の人も「俺も」「私も」と言って、ほぼ全員参加してくれるようだった。

 その後、赤チームの勝ちが放送で流れた。これでもう今日は解散でいいらしい。

 俺たちはマナの家に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る