第15話 休憩時間
俺が教室に戻ると、カズキに声をかけられた。
「おう、結局三位だったな」
「やっぱりまだ勝てなかったよ」
「まだ勝てるつもりなのかよ……」
カズキは呆れた声で言う。
「それに、まだ短距離走が終わっただけだろ? 俺はまだドッジボールが残ってるし、そこで勝てばいい」
「もう好きにしろよ……」
諦めたように、カズキは獣人のグループの方に向かう。俺はマナと席に戻った。カナはすでに座っている。
「次の種目はなんだ?」
「次はサッカーだね。私たちは参加しないから、休憩しよ」
「そうだな」
俺たちは教室で他愛ない話をしながら、サッカーの様子を窓の外を見ていた。
サッカーは、得点した分がそのままチームの得点になるようで、お互いに頑張って点に繋げようとグラウンド内を走り回っている。
サッカーは今のところ白チームが圧勝しているようだ。これで短距離走の分はトントンか、少し有利になるだろう。
「ドッジボールは次の次か」
サッカーの次は野球だ。両方、獣人の身体能力に勝てるものはいないため、人間の出場者はいない。
「お前はサッカーとか野球とかには出ないのか?」
カズキがニヤニヤしながら聞いてくる。
「流石にそんな激しいスポーツで今勝てるとは思ってないよ……」
正直に答えると、カズキは笑った。
「まあそうだよな」
「フィジカル勝負になったら流石にな。単純に足の速さとかなら、もしかしたらがあるかもしれないだろ?」
「そんなこと言う人間、お前ぐらいだよ」
「人間の方は、勝ちたいって思ってるみたいだけどな」
「大概口だけだよ。勝てねえってわかってるから、短距離走でも本気で走らねえ」
カズキは腹立たしそうに舌打ちをして、机の上に座る。
「そうみたいだな」
短距離走、俺の組でもそうだったが、俺がゴールしたあと、もう一人はゆっくりとランニング感覚でゴールしていた。
「なんで身体能力で獣人に勝てると思うんだ?」
「勝てるなんて思ってないよ。それは練習の時から知ってる」
でも、と俺は付け足した。
「諦めたくない」
「それならドッジボール、期待してるぞ?」
カズキは笑って俺の肩を叩いて、獣人たちの元に戻っていった。
サッカーの結果は、白チームの快勝のようだ。チームのスコアボードは、さっきの短距離走で負けていた分の得点を大きく捲っていた。
「次は野球か」
カズキが立ち上がり、教室から出ていく。俺は応援しようとカズキの後を追った。
「おらぁ!!」
キンッと小気味良い音を立てて、カズキが振ったバットがボールを叩き、飛ばした。
守備陣はボールを目で追い、そのままボールは学校の外に消えていく。
場外ホームランだ。カズキはゆっくりとベースを周り、ホームインした。
赤チームの方も負けておらず、攻撃の際にはホームランを何本も量産している。
むしろ、得点に繋がるのはホームランのみと言っても過言ではなかった。
結果は24-23で白チームの勝利だ。しかし、野球でも得点がそのままチームの得点になるため、得点の差は広がらなかった。
「そんなに点は取れなかったな」
カズキが悔しそうに言った。
「ホームランバカバカ打っといてそれかよ……」
俺はため息を吐きながら声をかける。カズキは試合中、ホームランを8本打っていた。
「見てたのかよ」
俺を見つけるなり、カズキは呟いた。
「同じチームなんだから、応援くらいするだろ?」
「人が獣人を応援してるのなんて見たことねえよ」
「……確かに誰もいないな」
周りを見ても、獣人は居ても人の姿はない。
「次はドッジボールだな。頑張れよ」
俺の肩を叩き、カズキは教室の方に行ってしまった。入れ替わるように、マナとカナが来た。
「トーマ君、頑張ろうね!」
「ああ」
気合を入れなおし、俺はドッジボールが行われるコートへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます