　リポビタンＤとトイレットペーパーを買いに行ったドラッグストアでプレーンヨーグルトが安値で売られているのが目に留まった。朝食のトーストにいつもかける蜂蜜を混ぜて食べれば美味しいのではないかと思い買い物籠にそれを入れる。元ヤクルトスワローズの粘っこいバッティングをする土橋内野手に似た顔のレジの男性店員が買い物籠の中のリポビタンＤを見て「元気ハツラツぅ？」と笑いかけてきた。「レシートは結構です」とあたしは答えた。

　マンションの自室のドアを開けると愛犬のソラが尻尾を振りながら駆け寄ってきた。ソラは中型の雑種の雄で両前脚の先端が成人男性の手になっているので様々な悪さをする上にティッシュをよく食べるせいか糞が常に下痢気味で臭いも物凄くきつい。頭を軽く撫でてやってからシンクで手を洗いリポビタンＤとトイレットペーパーを戸棚に仕舞ったついでに蜂蜜を探したがどこにもない。切らしていたのだ。

　あたしは途方に暮れてリビングのカーペットに両膝をついてテレビを点けた。チャンネルはＮＨＫで宇宙に関する番組をやっていて誕生時の宇宙は極めて高温高密度の状態だったがビッグバンが起きたことにより急激に膨張し冷却され現在のような宇宙になり宇宙は現在も膨張を続けていると言っていたがなにぶん頭がぼんやりとしていたのであるいは全く別のことを言っていたのかもしれない。ＮＨＫだけに宇宙規模のやらせという可能性も考えられる。そもそも今あたしが観ているのは本当にＮＨＫの番組なのだろうか？

　いい加減プレーンヨーグルトを冷蔵庫に入れようと思い立ち上がろうとするとソラが近づいてきた。そわそわしているのでどうしたのかなと思っているとソラは成人男性の手でプレーンヨーグルトの容器を開けてその中に大量の蜂蜜色の下痢便を排泄した。排便後も半開きになったままの肛門から現在も膨張を続けている深遠なる宇宙が垣間見えた。