好奇心
「『外の世界』は恐ろしいところだから、絶対に家の外に出ては駄目よ」
レイの母親は口癖のように息子にそう警告した。親子は山奥の一軒家で暮らしていた。彼は家の外に出たことが一度もなかった。
しかし、成長と共に高まる「外の世界」に対する関心が、レイを狭い家の中に留めさせてはおかなかった。彼はやがて、母親の目を盗んでは家を抜け出し、「外の世界」を探検するようになった。彼が体験した「外の世界」は、母親が言うような恐ろしい場所ではなく、夢の国に等しかった。無断での外出はいつしか常態化した。彼は次第に、「外の世界」の散策に長い時間を費やし、遠い場所まで足を運ぶようになった。
ある晴天に恵まれた早朝、レイは湖畔で美しい少女に出会った。少女は外出を許されない彼の身の上に驚きと同情を隠さなかった。年齢が近いこともあり、二人はすぐに打ち解けた。
レイにとって、少女は甚だ興味深い存在だった。「外の世界」にまつわる彼女の話は聞いていて飽きなかったし、それに乳房の姿形が物珍しい。母親と少女は同じ女なのに、少女の乳房はなぜ、母親のそれとは違い、果実のように瑞々しい張りと艶を湛え、蔕は愛らしい桃色をしているのだろう?
二人は毎日のように湖畔で逢瀬を重ねた。レイは乳房に関する疑問を少女にぶつけてみたいと思っていたが、彼女が語る「外の世界」の話につい聞き入ってしまい、機会を見つけられずにいた。
ある曇天の夕方、いつものように湖を訪れたレイは、少女の姿を湖上に発見した。体を二十ほどに切り分けられ、物も言わずに湖面に浮かんでいる。果実のような乳房も、付け根から荒々しく切断され、桃色の蔕を上にして漂っている。
レイは無性に、果実をもぎ取った時の手応えはどうだったのかを母親に尋ねてみたくなった。
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