第6話 証明

 迷いなくつちを振りながら、つくづく不思議だとヴェストリは思う。

 石に触れているとつながりを感じる。

 りようは似ても似つかないのに、貴石もドワーフも、極めて深い部分では同じものでできているように思える。

 世にあるすべてのものは女神がその身をけずって産み落としたもうた。

 そんな言い伝えを思い出さずにはいられない。

 和睦わぼくは必ず成る――!

 そう叫んで村を飛び出した息子ゴルトンのことが頭をよぎった。

 彼が抱いた、二国の融和をもって大戦を終わらせるという大きな夢。その夢の源にあったのも実は、万物同根の教え、創世の女神の伝説ではなかっただろうか。

「できた」

 鉄床かなどこの上で、今や水晶はまばゆいほどに輝いていた。

 弟子たちが大いにうなった。

 錬石によって一回りも二回りも小さくなった水晶を、ヴェストリはディニエルを招き寄せて渡した。その途端、貴石から流れ込むものを感じたのだろう、彼女の顔に驚きが浮かんだ。

 水晶が持つのは治癒と浄化の力。たちまち頬に血の気が戻った。手足の古い傷痕さえも薄らぎ、ついには消え去った。茫然自失ぼうぜんじしつのディニエルは目を瞬くばかりで声もない。

 ヴェストリは、道具をかたしながら誰にともなく言った。

魔力ちからを込めるだけが錬石じゃねえ。肝心なのはむしろ、叩くことで不純なものを取り除いて、石が持つ力を引き出してやる工程だ。そこをわきまえていさえすりゃ、何、この技がすたれることなんかねえ」

 居並ぶ弟子たちが、ある者は唇を結んで頷き、ある者は感に耐えず目頭を抑えた。

 職人たちの気持ちが一つになる中、ダノンだけは、何か言いたげな面持ちのまま憤然ふんぜんと工房を出て行った。

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