第4話 工房
「ここがうちの工房。入れよ。気を付けな、一段低くなってるぜ」
ダノンの案内で足を踏み入れたディニエルが、大きな目をさらに大きく見開いた。
あちこちに置かれた色とりどりの
ヴェストリは弟子たちにしかめっ面を返し、早く作業に戻るよう身振りで示した。やれやれ、と内心でひとりごちた。大親方。我が子さえ監督できなかった男にはあまりに重すぎる称号だ。
「知ってるか、ドワーフは貴石に魔力を籠めて魔法石を作り出せる」
再び
「『
魔法石は、武防具や装身具を美しく飾るのみならず、魔力を宿した価値ある品へとそれらを変えてくれる。
「ドワーフなくして魔法石はなく、魔法石なくして魔法装備はない。魔力を帯びた武防具が世にあるのはドワーフのお陰。……とされていた。昔はな」
含みのある言葉にディニエルが小首を傾げた。
ダノンが肩を
「八十年前、大陸の東にあった竜の国で古竜の王が死んで、竜たちが世界中に散っただろう?」
瞬間、ヴェストリには、ディニエルがその身を
「竜が去った土地からは天然の魔法石が
青ざめ、やや息も荒くなったディニエルを置き去りにしたまま、ダノンは己の言葉に勢いを得て
「要するにもうお呼びじゃないんだな『錬石』は。古い技なんだ。これからはもっともっと外に目を向けて、手広くやらねえと」
工房内に押し殺したような動揺が走った。
ヴェストリはこめかみ辺りに
「身軽で
「親方」
古株の一人が進み出て、ようやくダノンを止めた。
「そのお嬢さん、どうも具合が悪そうだ。座らせてやっちゃどうだい」
いえ、とディニエルが首を振った。
「お構いなく。その……、物の焼ける臭いに、少しあてられただけで」
「おいおい大丈夫か? 誰か椅子! あとアダラの婆さんを」
「呼ばんでいい」
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