第4話 文学サークルの朝川さん

最寄駅から大学まで20分枝野と話しながら、学校へ行く。


「いやー昨日な、必修の授業朝川さんと一緒やってんなー。羨ましいやろ」

「そうなんか」

「でな、朝川さんとせっかく会ったんやしなんか話さなもったいないなー思ってな、なに話そうかなーって思ってたんや」

「ほう」

「そんでな、授業のことやったらさりげなく話せるなと思ったわけよ」

「そやな」

「でや、分かる問題をあえてわからんフリして聞いてみたんよ」

「へー」

「じゃあな、図、書いてまで教えてくれたんよ。あの人は天使や。下界に降りてきたミカエルやと、そのとき俺は思ったわけよ」

「ああ、そうか」

「なんや道田、そんな俺と話すん飽きたんか」

「ちがうわ、誰やねん朝川さんって」

「え?嘘やろ、お前俺と一緒の大学やんな」

「は?なんやねんその大袈裟な態度」

「いや、ちょ待て。お前本気でいってんのか?」

「だから知らんて朝川さんなんて」

「え?嘘やろ。みーんな知ってるぞ文学サークルの朝川さんのこと」

「また、お前のそのよう分からん嘘いらんねん」

「いや、確かに今まで俺は数ある意味の無い嘘をついてきた。しかし、しかしやで、朝川さん関連のことについてはそんな軽い気持ちで話したことはない」

「どんな覚悟やねん」

「本気も本気や。道田ほんまに嘘やと思ってんなんやったら、お前の数少ない友人にLINEで聞いてみろ。絶対絶対絶対そいつも朝川さんのこと知ってるはずやから」

「また、そんな冗談で俺の数少ない友達を減らしてたら大学やって行かれへんようなってしまうやろ」

「いいから、ほんまに聞け」

「なんやそのガチのトーン。怖いな」

「聞け」

「わ、分かったよ。ポルコミサンサークルの白北でええか」

「どんなサークルやねん。ちょっとそっちの方が気になってしまうやろ。まあええはそいつで」

「『文学サークルの朝川さんって人知ってる?』はい、聞いたぞ」

「絶対知ってるから」

「お、返信返って来たわ。『常識だろゴミクズ。そんなこと聞いてくるなボケ』」

「道田、お前の友達どんなやつやねん。流石にそこまではキレへんぞ」

「まぁでも知ってるんか。こいつは嘘つかんからな」

「圧倒的信頼感あるやん。怖。でもほんまに居るってことわかってくれたか」

「ちょっと気になってきたは、どんな人なん」

「どんな人なんて聞かれてもな、さっき言った通り天使みたいな人や。聖母朝川との別名もある」

「そんな聖人なんか、見てみたいな」

「おっ、おい前見てみろあの人やぞ」

「どっ、どれや。あっ、きょう曇りやのに雲が開て逆光になって全然見えへん」

「近くいくぞ、走れ道田」

「わかった」

「右曲がった急げ!」

「おう」

「うぁー信号や」

「先回りするぞ」

「どこに行った?」

「ああ、見失ったか?居った居ったこっちや道田」

「あ、あの人か。後ろ姿は分かった、顔みたい。前まわろ」

「おう。行くぞ」

「あのーすいません道に迷ってまして、、、」

「なんやおっさん、わかった俺は道案内するから道田、俺を置いて追いかけろ!」

「分かった枝野。お前の意思は受け継ぐ」


 文学サークルの朝川さんを追いかけて俺は走った。聖母を見るために俺は走った。走って走って走った。朝川さんを知りたい一心で。


「お、ここに居たか道田。どうや朝川さん見れたか?」

「無理や。あの人に近付けば近づくほど、何かに守られてるようにたどり着かれへん。俺はまだ朝川さんに会えるような人間ではなかってんや」

「まぁそう落ち込むな。まだ大学は続く。やから朝川さんに会えるような人間に頑張ってなったらええ」

「そうやな」

「ああ、頑張れ道田」


「...いや朝川さんって誰やねん!」


こうして20分は消費されていく。







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大学生は会話する 琉羽部ハル @Akasaka_haru

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