第12話

「さてと、行くか」


「おー」


「行きましょう!」


俺たち三人は、ダンジョン入り口にいた。

舞花の装備もしっかりと整えたし、出来る準備はしたつもりだ。

ダンジョンを見ても、前回見たSランクダンジョンほどの脅威な感じない。


「ここのダンジョンはそこまで危険じゃないみたいです」


「そうなの?」


「透がそう言うなら大丈夫だな」


ダンジョンに入ると、【危機察知】は先ほどよりはより強く反応する。

どうやら、ダンジョン内部と外では感じ方が違うみたいだ。

だけどそれでも、Sランクダンジョンより脅威ではないのは確かだ。


ダンジョンの中は、入ってすぐに左右に道が分かれている。

俺のスキルでは、どちらの道の危険度も対して変わらないように見える。


「おい舞花、スキルを使ってみろ」


「了解! 察知」


師匠がそう言うと、舞花はスキルを使った。

【察知】と言うスキルは聞いたことがある。


察知は、周囲にモンスターがいるかを確かめられるスキルだったはすだ。

詳しい能力は分からないけど、探索者として有益なスキルなのは確かである。


「ok、どっちの道もモンスターはいないみたいだよ。ただ、私のスキルの範囲はあまり広くないからね」


「それだけ分かればいい」



「舞花の察知はどの程度の範囲まで分かるの?」


「うーん、どれくらいって言われると微妙だけど、多分半径10mくらいかな?」


「使える回数は決まってるのか?」


「今の所は3回しか使えないかな」


舞花のスキル【察知】は、自身を中心に半径10mにモンスターがいないかを知ることが出来るスキルのようだ。

ただ、常時発動型ではなくて任意発動型スキルで、使える回数にも限りがあるようだった。


それでも俺の【危機察知】の曖昧なスキルよりも、より探査者として活躍出来るスキルだろう。

モンスターとの接触回数を減らせるだけでも、安全にダンジョンを回ることが出来る。


「とりあえず右に行くぞ」


師匠が右に行くと言うので、俺たち二人は黙ってついて行く。

ダンジョンを進んで行っても、舞花のスキルの通りにモンスターと出会うことは無かった。


「舞花のスキルは凄いね。ここまでモンスターと出会うことは無かったよ」


「透、褒めたって何も出ないわよ」


俺は舞花のスキルのおかげで、モンスターに出会うことなく進むことが出来たことを伝える。

すると舞花は、ツンとした様子で返事を返した。

どうやら、褒められるのに慣れていないようだ。


「本当に凄いと思うよ。俺のスキルよりも実用性が高いよ」


「透がそう言うのなら、凄いなかもしれないわね」


俺がさらに褒めると舞花は、無い胸を張って嬉しそうにしていた。

そんな風に、無い胸を強調しても悲しくなるだけなのにな。


「そう言えば、透のスキルって何なの?」


「あぁ、舞花はまだ知らなかったのか。俺のスキルは【危機察知】で......」


俺は、舞花に【危機察知】について説明をして行く。

同じダンジョンを潜っている以上は、情報を共有しておいた方が良いだろう。

そうすれば、何かあった時でも対処がしやすくなるはずだ。


「ふーん、そうなのね」


舞花はなるほどなるほどと言いながら、俺の話を聞いているようだ。

こうして見ていると、胸は無いけど可愛い見た目をしている。

師匠の美人系とは違って、舞花は可愛い系の女の子だ。


そんなことを考えていると、また道が分岐している場所に着いた。


「うーん、多分だけど右にはモンスターがいるかも」


「なら左に行くか。やっぱりそのスキルは便利だな」


「そうですね。魔道具を温存出来るのはありがたいです」


舞花のスキルのおかげで右にモンスターがいることが分かったので、左の道に行くことにする。

左の道を奥に行くと、やはりモンスターの姿はなく安全に進真が出来た。


「ところで舞花、地図の方はちゃんと描いてるか?」


「もちろん!」


今回の地図担当は、俺じゃ無いと思ったら舞花がだったらしい。

舞花は自信たっぷりにそう言うと、ポケットに入れていた地図を取り出して師匠へと渡す。


「あ? 何だこれ」


「どうしたの? 私が描いたここまでの道のりよ」


「こんなの地図って言わねぇよ。何だこの地図」


師匠は舞花から受け取った地図を見ると、そう言った。

俺もどんな地図になっているのか気になって、師匠が持っている地図を覗き込む。


「何ですかこれ......」


そこに描いてあったのは、ミミズのような曲った線だった。

それは、到底地図とは言えないようなもので、これだと探索者ギルドに渡すことは出来ないだろう。


「何よ、透まで! 初めて描くんだから仕方ないでしょ」


「これはそれ以前の問題だな......」


「そうですね......。舞花、義務教育で地図の描き方習わなかったのか?」


「習ったに決まってるでしょ! 何なのよ二人して馬鹿にして!」


「透、ここまでの道順は覚えてるか?」


「はい、一応覚えてますよ」


「それなら、お前が地図を描け」


師匠は舞花の絵心の無さから、任せるのは無理だと判断したみたいだ。

俺は、前回のダンジョン探索の経験を活かして、頭の中で地図を作っていた。

地図を描く時に活きるかもしれないと思っていたけど、早速それが使える。


手渡された地図を受け取り、頭の中にあった地図を記載していく。

ここまでの道のりはそこまで複雑では無かったので、すらすらと書くことが出来た。

こんなに簡単なのに、舞花がなんで描かなかったのか疑問だ。


「師匠、ここまでの地図は描けたので先に進みましょう」


「おうよ」


俺たちは先を進むことにしたけど、舞花はこちらを睨んでいるようだった。

私だって、と言いながら何やらブツブツと独り言を言っている。


「おーい、ブツブツ言ってないで出番だぞ舞花」


「私の出番来ました! 私だって出来るんだからね」


師匠がそう言うと舞花は、元気を取り戻した。

舞花の出番と言うのは、目の前にまた現れた分岐のことだろう。

師匠は舞花に、この先にモンスターがいないか調べてくれと言っているのだろう


「察知!」


舞花はスキル名を言った。


「多分、右にはモンスターはいないかも」


「おし、右に行くぞ」


俺たち三人は、また舞花のスキルの通りにモンスターのいない方へと進んで行った。

地図の描けないダメなやつだと思っていたけど、スキルだけでも十分過ぎる働きをしている。

これだけ活躍をしていれば、地図は後から描けるように練習すれば良い探索者になれるだろう。


と、そんな風に思っていた。さっきまでは。


「おい舞花! お前いないって言っただろ!」


「だから言ったでしょ、多分って。私のスキルは100%正確じゃないのよ!」


「そんなことより二人とも、早く逃げないと」


今、俺たち三人はモンスターから逃げていた。

なぜなら、舞花のスキルの通りに進んでいたけど、曲がり角でばったりモンスターと遭遇してしまったからだ。

突然の遭遇にびっくりして、俺たちは後ろへの撤退を決め、今は走って逃げている。


現れたのスケルトンだが、盾に剣を装備していた。

一目で、この前のダンジョンで見つけた奴よりも強いと分かった。


俺は舞花のことを、地図は描けなくてもスキルでそれを補えると思っていた。

でも、舞花はやっぱりダメな奴なのかもしれない。

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