第7話
俺と師匠は、ダンジョンへと入った。
ダンジョンの内部は、ゴツゴツとした岩肌が剥き出しになっている。
「意外と明るくなってますね」
「今回は運が良かったな。場所によっては灯りが必要な所もあるんだ」
ダンジョンの中は、足元が見える程度に明るくなっていた。
これなら、歩く分には問題ないだろう。
「透、ダンジョンでまず注意しなければいけないのは何だと思う?」
「うーん、モンスターですか?」
ダンジョンで気を付けなければいけないのは、モンスターだろう。
特に未踏破ダンジョンなら、何が出て来てもおかしくはない。
何が出て来ても対応出来るように、心構えだけでもしておくべきだ。
「それもあるが、一番は罠だな」
「一番が罠ですか?」
だが、師匠が言ったのは違った。
モンスターよりも、罠への注意が大切らしい。
「あぁ、ダンジョンに入って直ぐに罠がある場合もあるんだ。今回は大丈夫だが、毎回安全とは限らない」
「そんなに危険なダンジョンもあるんですね。ここはそうじゃなくて良かったですよ」
「暗くて罠有りダンジョンみたいな悪質なところなんかだと最悪だな。入って直ぐに死ぬなんてことも、有り得るからな」
ダンジョンによっては、入った瞬間に死ぬそうな場所もあるらしい。
これからダンジョンに入る時には、気を付けなければいけない。
「透、一応スキルが反応しているか周りを見ろ」
俺は師匠に言われるがままに、周囲の様子を見る。
今の所は、スキルの【危機察知】が反応してはいないみたいだ。
「この周囲は安全だと思います」
「ほう、透のスキルは中々便利だな。確かにこの周辺は罠もなく安全だ」
師匠がどうやって罠を見分けているかは分からないが、この周囲は大丈夫らしい。
俺の【危機察知】もどの程度信頼出来るかは、これから調べて行くしかないな。
「罠の見分け方ってあるんですか?」
「スキルがあればそれで見た方が早いな。だが、スキルも確実って訳じゃないから経験を積んで行くしかないな。スキルと自分の目で見る、この両方が大切になる」
確かに、今の俺のスキルを100%信じられると言ったら、信じられない。
スキルを得たばかりで、完全に使いこなせたとは言えないだろう。
歩きながら話を続ける。
「罠の有無を知るには、よく見ることだ。天井や床、壁に違和感がないかを確認して、違和感があれば遠くから石でも投げてみれば良い。それでやばそうな罠なら撤退一択だ」
師匠は、罠の確認方法について教えてくれた。
自身で確認するのは出来ないから、石でも投げるしかないらしい。
それでも、反応するものとしないものがあるみたいだ。
「見たことあるのは、近くに行くことで反応する罠とスイッチを押すことで反応する罠だな。っと良い所にあるな」
「どうしたんで......」
言いかけた所で、【危機察知】が反応した。
罠かどうかは分からないけど、師匠の言葉通りなら罠だろう。
暫く歩き続けたことで、罠のある場所に来たみたいなだった。
「師匠、スキルが反応してます。罠ですか?」
「あー、罠だな。場所は分かるか?」
そう言われて、より集中して罠のある場所を見つけようとしてみた。
なんとなく床に違和感がある気がしたが、場所までは特定出来ない。
「床って所までは分かるんですが、それ以外は......」
「まぁ、初めてでそこまで分かるなら上出来だ。透、石を投げてみな」
師匠に言われた通り、床に向かって石を投げる。
すると、床が崩れて穴が空いた。
恐らく、落とし穴タイプの罠だと思う。
「落とし穴か......。深さも大したことがないし、このダンジョンのランクは低いかもな」
確かに、落とし穴は大した深さではない。
片足が落ちる程度で、罠にかかったとしても怪我はしないくらいだ。
「罠でダンジョンのランクも分かるんですか?」
「あぁ、何となくだがな。同じ落とし穴でも、ダンジョンによっては深さや危険度が違ってくる。このタイプの罠が近付いたり衝撃が加わると反応する罠だ」
「ダンジョンによって違うんですね」
この落とし穴みたいなものが、先ほど師匠が言っていたタイプの一つらしい。
人が通ったり、俺が投げたみたいに石などで衝撃が加わると反応する。
「一度使用された罠は、二度と反応することはない。だから見つけたらさっきみたいに反応させておけば、帰り道は安心だ。まぁ、100%安全って訳ではないから、そこは注意だな」
「なるほど、勉強になります」
今まで師匠が潜ってきたダンジョンは、二回反応した罠は無かったらしい。
だけど、それ以上のランクのダンジョンについては不明だと言っていた。
師匠は、どの程度の実力があるんだろうか。
「ん?」
また歩いていると、【危機察知】が反応した。
どうやら、罠があるみたいだ。
師匠の方を見ると、黙ってはいるがやってみなと言ったジェスチャーをしている。
俺は、先ほどみたいに石を投げた。
しかし、罠が反応することは無かった。
この場所は分からないので、師匠の方を向く。
「こうなったら大変だが、今は良いものがある。これは調べる君と言って、使えば罠の場所を教えてくれる」
そう言って取り出したのは、鈴のような物というか鈴だ。
師匠は、それを横に振って音を鳴らした。
音が鳴った後に鈴は消えて無くなったが、その際にモヤのようなものがでる。
そのモヤがある一点に集まった。
そこは、ダンジョン天井だ。
「こりゃ床に石投げても反応しないわな」
「これは凄い魔道具ですね」
ネーミングセンスには疑問が残るが、性能は凄いものだった。
師匠は天井の真下辺りまで行くと、音がした。
その音が鳴ったタイミングで、師匠は後ろへと飛ぶ。
「っとと、危ねぇ。石が落ちて来るのか」
「頭に直撃したら危険ですね」
今回の罠も近くに行くことで、反応するタイプのものだった。
落ちてきた石は小さかったが、頭に当たれば怪我をするだろう。
「スイッチタイプの罠ってどんなのですか?」
「基本的には踏んたら反応する奴だな。床にの色が変わってたりするから、一目で分かるから安心しろ。後は、ボス部屋にある奴だが、これは今は知らなくてと良いだろ」
まだ見たことはないけど、師匠からの説明を聞いて何となくは分かった。
それにしてボス部屋か......。
ダンジョンの奥にあると言われている場所で、強力なモンスターがいるらしい。
まぁ、探索者がボス部屋に入ることはないらしいので大丈夫だろう。
「後は見つかり次第教えていくが、透を罠に注意しながら進めよ」
「はい、気を付けます」
罠の存在を知ったからには、気を付けるしかない。
帰ったら出来るだけ知識を身に付けて、魔道具なんかも手に入れる必要があるな。
そうしなければ、危険な罠への対処が難しくなる。
「そう言えば、魔力測定計は持って来たか?」
「これですよね? ありますよ」
魔力測定計とは、探索者ギルドで貰ったものだ。
なんでも魔力の測定をすることで、ダンジョンのランクを知ることが出来ると言う魔道具らしい。
「あー、持ってるなら良いんだ。数値は出てるか?」
「えーと、まだみたいですね」
魔力測定計の数値を確認しようとしたが、まだ測定中としか表示されていなかった。
師匠曰く、このダンジョンのランクは高くないらしいので、それが正しいかは後で分かるだろう。
「もう少し待たないとダメかもな。とりあえず奥へ行くか」
「はい!」
付近に罠もなく、俺と師匠はダンジョンの奥へと向かうことにした。
奥へと行って探索者の仕事の一つである、地図を埋めなければならない。
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