美人女教授、旧軍火器でゴブリンの巣を征くッ!
LA軍@多数書籍化(呪具師200万部!)
エリナ・エーベルト
ピチョン……。
ピチョン……。
ピチッ──顔にかかる水滴を手で払いのける。
覚醒したエリナ・エーベルトの意識は、どこかあやふやだった。
「頭──いったー……」
しっとりと濡れた髪が重く、体を起こすのも億劫だ。
そのうえ髪がまとわりつき、不快この上ない。
おまけに起こした体にも髪から伝わった水分が、ドイツ軍の女性軍属用の服を濡らしている。
「あらら、ビッチョビチョ」
ぐっしょりと濡れて、女性らしい体の線がくっきりと浮かびあがっていた。
(ったく、最悪──)
あーもう。
何だってのよ!
足元に転がるナチの制帽を被ると、濡れた髪と制帽が不快感を増すが、構ってはいられない。
……さて、と。
ここはどこだっけ?
なんでこんなところにいるのか、皆目検討がつかない。
たしか、ナチの実験に付き合わされて、妙な薬を飲んだけど──。
「げぎゃ! げぎゃぎゃ!」
う。
なんかいる……。
今しがた意識の覚めたこの空間の先、急な曲がり角の向こうに何やら妙な気配がある。
エリナは壁を伝うようにして、そっと通路の先を覗きこんだ。
(あれって……ゴブリン?!)
童話や物語に出てくる化け物──ずる賢しこい小鬼。
ゴブリンって、やつだ。
そいつらが火を囲んで酒をかっくらい、肉を齧っている。
どうやら、ここは奴らの巣穴らしいが、なぜエリナはそんな所で目覚めたのだろうか?
(ま、ナチのくだらない実験かしらね)
行動実験の一種だろうと、あたりをつけたエリナ。
彼女はミュンヘン大学の助教授で、軍に協力する傍ら、その手の実験には詳しいのだ。
(化け物の巣穴で目が覚めたらどうするか──って感じかしら?)
──そういう実験なのだろう。
「いいじゃない? やってやるわよ」
そっと、姿勢を戻したエリナは敵影を脳裏に刻み、次の行動を決定する。
ゴブリンの数は12。
横の穴は無数……。
ふむ……。
ゴブリンを突破して、その先へ──。
なるほど。どれかが出口なのだろうが、悠長に探していては、
その後のことは想像に難くない。
ならば、突破よりもここは殲滅しかないだろう。
だから、
(まずは奴らが寝静まるのを待ちましょうか)
※
およそ一時間後。
寝床で小汚ない顔を晒すゴブリンに近づくエリナの姿があった。
幽鬼のごとく彼らの前に立つと、
(──恨みはないけど、…ごめんなさい。私は人間なのよ)
ゴブリンが腰に下げていた武器に、そっと手をのばし掴む。
金属製の武器は、鞘引く時に静かに音を発した……。
シュラン───。
ゴブリンのからだを
(酷い匂い……)
奴らの匂いに思わず鼻を覆いそうになる。
(くっさいわねー)
だが、それらを堪えてナイフを手に……!
パチリ──。
ゴブリンが目を覚ました。
「ッ!」──ズブブブ!
鋭いナイフの切っ先はあっけなくゴブリンの皮膚を貫き、彼を自分の血でおぼれさせた。
肺から溢れた空気が、ボコボコと気道を泡立てていたがそれすらもすぐに収まる。
(ふぅ……)
軽く浮いた汗を拭いつつ、
──エリナはその作業を、あと11回行った。
「これで、───最後ッ」
血だらけのナイフを引き抜くと、返り血を浴びた顔が真っ黒に汚れていた。
「ったく、女の顔はファンデーションを塗るものよ」
さて、これでここはクリア。
次なる目標。ま、当面は脱出だが……。
まずは、
「───武器よね」
ゴブリン共の装備を拝借しても良いが、正直あまり使いたいと思えない。
にしてもこれ、
「───銃剣……よね?」
奪った剣。
その基部たる
穴と溝があり、銃に取り付けられる仕様だ。
「こいつらが銃を?…………まさかね?」
だが、行動実験の一環として──これらの武器を準備していたなら?
ふむ……。
「──ということは、何処かに銃があるのかもしれないわね」
脱出させるために武器を用意する。
あり得そうな話だ。
そして、その目星はついている。
ここの奥。
無造作に積み上げられた木箱の中だ。
トラップの可能性も考慮しつつ、そっと近づき中覗き見ると、
「わぁお……」
中身は予想通り武器だ。
旧式っぽい小銃に、不恰好な短機関銃。
それに銃剣が十揃い
奥の方には油紙に包まれた美麗な剣が何振りか、無造作に放り込まれている。
比較的保存状態の良かった小銃を取り出すと、
それは騎兵用なのか、切り詰められた銃身に折り畳み式の銃剣付き。
作動を確認するため、ボルトを操作して薬室を開放してみた。
ガチャキ───シャキ!
「ふむ……」
作動異常なし。
「口径は6.5mm~7mm級ね。一昔前の銃かしら」
最近の軍用ライフルのトレンドは7.62mm~8mmらしいから、これは新型のそれではない。
さらに、短機関銃を取り出すと、取り付けられているやたらと反り返った弾倉を見る。
外観からして、MP18───ドイツの旧式短機関銃に似ている。
これなら扱えそうだ。
「それにしても、随分ずいぶん拘こだってるわね~」
同じく収められていた短い銃剣があるのだが、なんとこの短機関銃、銃剣を付けることができる。
なんなのだろうか、この銃剣に対する飽くなき欲求は……?
まぁいいわ。
使えないわけでもないみたいだし。
一応、銃剣も確保しておく。
そして、これ!
エリナが取り出したのは、スラっとした曲刀。
海賊が待つような下品な曲がり方の曲刀シミターではない。
なんというか、美しい曲線なのだ。
取り出し照明に翳すと、
ひぃぃん……。
空気を斬るように剣が外気を受けて鳴いていた。
「───綺麗な剣……」
どこかうっとりした表情でその刀身を眺めるエリナは、ためらいなく鞘に収めて確保する。
なんとまぁ。
ちゃんと帯皮まである。
そうして、残りの木箱も漁あさっていけば、まぁー出るわ出るわ……。
とりあえず、あるもので使えそうなものは全部頂いていく。
四四式:騎兵用小銃×1
百式:短機関銃×1(弾倉10個)
二式:銃剣(短)×1
九五式:曲刀×1
九六式:軽機関銃×1(弾倉10個)
八九式:小型迫撃砲×1
九七式:自動式対戦車ライフル×1(弾倉10個)
十四年式:自動拳銃×2(弾倉10個)
九九式:手榴弾×30発
いやーはっはっは、大量大量!!
え、そんなに持っていけるのかって?
いいものあったのよ!
ほらこれ、ゴブリンさんのリヤカー!
ドスンと、対戦車ライフルを積み込み、小型迫撃砲やら軽機関銃を積み込んでいく。
弾帯には小銃用の弾をみっちり詰め込んだ。
予想通り弾丸は6.5mmで非常に扱いやすそうだ。
腰の前に弾嚢が2つ、そこに30発ずつ。
そして腰の後ろにちょっと大きめの弾嚢が一つ、そこに60発。
あとは、短機関銃用の弾倉が左右5個ずつ入る弾嚢付きサスペンダーを付ける。
キツキツのサスペンダーに挟み込まれたオッパイが、強調されて盛り上がる。
───ふふん、どうよ。
ちなみに軽機関銃の弾倉はバナナ型で、30発入り。
これはリヤカーに突っ込んでおく。
あ、知ってる?
この軽機関銃も、なんとまぁ銃剣が付くという不思議仕様だった。
なんなのかしらねー。この銃を作った国は、着剣装置がないと呪われる国民なのだろうか…
そして、小型の迫撃砲ッ!
50mmクラスのこれは、小さくて軽くてとても使い勝手がよさそうだ。
でも、弾は結構大きい。
パッと見、手榴弾クラスといった感じ。
多分、着発式だ。
ピンを抜いたら最後、地面に落とすわけにはいかない……。
信管が反応し、その瞬間───ボン、だ。
おーこわ。
そして、これ……!
見てよ、このデッカイ大砲を!
なんとまぁ、自動式対戦車ライフルって奴だ!
装弾数は驚きの7発!───しかも、箱型弾倉付きだ。
口径は20mm……。
うん───作った奴は、バカだと思う。
もはや小型の大砲といった方がいいだろう。
多分、一人で担いで撃つのは無理。
地面に据え付け、───ドガン! ドガン! とやるのが正しい使い方に違いない。
ぶっちゃけ持ち上げるときに腰を、
で───。
あとは拳銃!
なんていうか、ルガーP08旧式ドイツ製拳銃を丸パクリしたような外観だった。
装弾数も8発で、標準的な拳銃といった感じ。
まぁ使い勝手は悪くなさそうだ。
せっかくなので二丁持ち。
一丁は、ホルスターに入れ刀の帯皮の右側に取り付けた。
もう一丁は胸に挿んでおく。
うふふ───デカいって素晴らしいっ!!
ちなみに携行する火器は、こんな感じ。
以下、
騎兵用小銃を
腰のホルスターとオッパイに拳銃。
腰には曲刀、そして干渉しないように短い方の銃剣を同時に挿す───と。
あと、手榴弾はポッケにイン♪
どうよ!?
フルアーマー=エリナ・エーベルトの登場よ~!!
多分、世界一火力のある助教授ね!
さて、一服───ぷはぁ。
「さーて、いくとしますかね」
リヤカーを押し、ゴブリンの巣穴の奥へと向かうエリナ。
※ ※
「ったく、広いったらないわ!」
ァ……。
ん? 今───。
「なんか、声が聞こえたわね?」
ふむ?
……こっちね。
通路の中ほどにある横穴。
そこから空気と共に、獣だかが発する声が微かに響く。
「嫌な予感しかしないけど……」
なんというか、絶対悪い何かがある。
その予感だけはヒシヒシと身に感じているというのに、見ずにはいられない。
エリナはこれでも大学の助教授だ。
その経歴ゆえの好奇心。
だが……。
「───あらら。……こりゃ地獄かしら」
群がるゴブリンと、女たち。
その先は牢屋状に格子で区切られた空間がいくつか。
内部は広い。
壁から延びる細い鎖には、女達が繋がれていた。
「うーん? ゴブリンさんの
酷く痛めつけられたソレらは────血だらけの者、食いちぎられた者等々……なかなか
「ったく、胸糞悪くなる光景ね」
嫌悪感も露に、ゴブリンどもを睨むエリナ。
そのうちに、ゴブリンの何体かが牢屋の外にいるエリナに気付いたようだ。
ゴブリン共はエリナを見ると、ニィと口角を釣り上げる。
(うげ……!)
ゾワリと背筋が震えあがる。
「───冗談じゃないわよ」
スチャっと、短機関銃を引き寄せると、バチコン! とコッキングレバーを引き初弾を薬室に送り込む。
不発の可能性も考慮して、近接武器の具合も忘れない。
曲刀をいつでも引き抜けるようにし、
銃剣は一応……とばかりに短機関銃に着剣した。
さぁ、準備オーケィ!
下等生物め、いつでも来なさいな。
ギャイギャイ! とゴブリンどもが騒いでいる。
その騒ぎをみてエリナの存在に気付いたのか、女達がたちどころに「助けてくれ」と、騒ぎ出す。
ゴブリンに犯されていた連中は、希望を見出だしたかのように目に光を灯す……も。
──ボキリ。
ゴブリン共は容赦なく、連中の首を折り命を絶った。
「あ、あいつら……!」
容赦も情けもない。
まるで玩具を捨てるかのように───。
フ……。
ズンズン! 足音も荒く、ゴブリンが10匹ばかりエリナに迫る!
全員、棍棒やら骨やらの
「やるしかないわね」
牢屋の格子越しとはいえ、奴らのことだ鍵くらい持っているのだろう。
ブシュ、ザクッと、次々に近くの囚われていた女たちを惨殺しながら迫るゴブリン。
目の前で少女が殺されたとき、エリナは思わず目をそらす。
(───ゴメン……救えなかった)
その絶望に染まったその眼を見て、心の中で謝る。
ったく、胸糞が悪い。
汚いものをブラブラさせやがって!
「あらまぁ……汚いブツねぇ。──アタシが欲しいの?」
だったら、
「───かかって来なッ!」
どすの効いた声で言い放つと、短機関銃をぶっぱなす。
薄暗い洞窟がマズルフラッシュでギラギラと照らし出される。
同時に、その轟音を惜しみなく響き渡らせた。
タパパパパパパパパパパパッパパパパパパパン!!!
と、軽快に響く銃声の先に撒き散らされる8mm南部弾。
キツいテーパーを描く弾倉から、次々に吐き出される銃弾に、排莢口からは薬莢がたくさん!
カラカラカランと、
「どぉ?
ドチャドチャ……と、折り重なって倒れるゴブリン共。
その数9体……。
む。
あと一匹!?
「げ、ごぎゃ?!」
死体に阻まれたお陰で、銃撃から逃れた1匹が恐怖に濁った眼でエリナを見ていた。
あっという間に9匹の死体を量産したのだ。数の理などあって無きにしも──。
「あーら……。運がいいわね……?」
短機関銃を下ろすと、さも美しい笑顔を向けるエリナ。
見るものが見れば天使……いや、女神のごとき美しさ。
だが、その見目麗しきは中に潜む攻撃性を上塗りしただけの事。
エリナ・エーベルト。
まさに、カラフルな大蜘蛛のようなものだ。
「───こっちも試し撃ちしちゃうわね?」
騎兵銃を構えると、スッと照星と照門を一致させて、その先にゴブリンの頭部を見ると──バァン!
グシャ!! と、ゴブリンの頭部が変形して衝撃で背後に吹き飛ばす。
「よかったわね……穴が好きなんでしょ? その穴なら好きなだけ突っ込みなさい」
静かな怒りを見せたエリナはゴブリンを
しかし、同時にやらかしたことにも気づく。
「こりゃ巣穴中のゴブリンさんが気付いたわよね? まいったわね~」
すーっと周囲を見回す。
複数の牢屋があるのみで、出口や通路の類はエリナが入ってきた横穴以外にない。
要は袋小路だ。
そして、通路の先からはゲギャゲギャと、ゴブリンさんの団体が叫び声をあげている様子が伝わる。
しゃーなし。
こうなったら、やるっきゃないわね。
ゴトゴトと地面に銃器を並べていく。
他にも、迫撃砲の弾に手榴弾をいくつか。
化粧道具を並べる女性のごとく、鼻歌交じりに銃器を陳列していく。
対戦車ライフルに軽機関銃──、それらを横一列に並べると、その脇に弾倉を積み上げる。
そして、地面に体を委託すると軽機関銃に取りつき低い伏せ撃ちの姿勢で銃把を握りしめた。
「どれどれ、照準は~?」とばかりに───斜めに突き出た照門を覗き込む。
この軽機関銃は銃の真上に弾倉があるから、照準は斜めにずらした位置にあるのだ。
少し体を動かしたりして二脚の具合を確かめるエリナ。
ふむ……。
グラつきなし、姿勢安定、照準よし───。
さぁ、レッツパァァァァァリィィィィよ!!!
来てみろ下種共が!
準備を整えたエリナの前に団体さんが到着。
「「「げきゃーー!!」」」
と現れたゴブリンさんたちに、これでもかと銃撃を浴びせてやった。
「死ねッ。下等生物が!」
ッガガガガッガガガガガガッガガガガガガッガガガガガッガガガガッ!!
猛烈なマズルフラッシュに周囲が明々と照らし出される。
その先───。
数も分からないくらい、ミッチリとやってきたゴブリンどもだが、あっという間に軽機関銃に貫かれ、死体を量産。
生き残ったものも、腰を抜かしている。
「げひゃぁぁ……?!」
───ふ。
脅威なし!
戦意なし!
残弾なし!!
さ、次ぃぃい!
ガチャキ! と弾倉を交換。
素早く装填───さっさと、来なっ!!!
ゲギャギャァァァと、生き残りが
は! 同じことぉ!!!
ッガガガガッガガガガガガッガガガガガガッガガガガガッガガガガッ!!
30発の6.5mm弾はゴブリンを寄せ付けず、戦意と命を奪っていく。
遺棄死体は30~40ほどが転がっていた。
───ッガガガガッガガ!!!
(チ……死体が邪魔ね)
積みあがる死体のせいで、ゴブリン共が隠れられるスペースがところどころ発生している。
それらを利用しつつ、ゴブリンが、近づいてくる。
だけど、そこが安全とは片腹痛いわね。
ゴロリと体を横にしたまま横に一回転。隣の銃に切り替える。
いっくわよぉ!!
バカの様にデカい銃には、後ろにまで支持脚がついている。
こいつは自動砲───20mm対戦車ライフルだ。
文字通り────
だーけーど!
「───ドカンといくわよ」
ガキンと引き金を引く───……ドゥン!!!
ゴォォォォォンと物凄い反響音を響かせて発射。
ゴブリンの死体の山に突き刺さり、隠れていた小集団ごと吹き飛ばす。
なんというか……こう、ゴッパァン! と言った感じで……。
ヒュゥ♪ こりゃ凄いわ……!
さ、もう一丁!!
いくつかある死体の山に照準する。
──ドゥン!!!……ゴッパァンッッ。
──ドゥン!!!……ゴッパァン、ォンォン……。
もうなんというか──、
グッチャグチャ……。
グゥゥッチャグチャァ! の死体がそこかしこに。
さすがにこれにはゴブリンの集団も驚いたらしく、二の足を踏む。
恐る恐る覗き込むだけで一向に近づいてこない。
あらまぁ。
それじゃ困るのよ?!
こうなってしまった以上、殲滅しないと脱出できない。
さすがに、広い空間で戦うには一人では厳しいものがある。
この
背後は袋小路、前だけを注視していればいい。
仕方ない……、
地面の手榴弾を取り出すと、
対戦車ライフルをぶっ放しておいて、今さら何もないのだが───さすがに爆発は不味いかもと思う。
思うが……、
辞めない、止まらない、フルアーマー=エリナエーベルト。
ゴトンと鈍い音を立てて手榴弾が墜落。
………………。
……あれ?
不発だろうか。爆発しない。
ならこっちね。
小型迫撃砲弾の先端についたピンを引き抜くと、素早く投擲し、すぐに地に伏せる。
だって、あれ着発信管ですもの───ボォン!
というが早いが爆発音。
狭い空間で爆発したものだから音が物凄い。
実際エリナも耳を塞いでいながら、少し一時的な難聴に陥っている気がする。
だが、今はそれどころではない。
地面の軽機関銃を、キャリングハンドルを掴んで持ち上げると、手慣れた兵士の様に中腰の姿勢で素早く躍進。
反対の手には4つほどの弾倉を持つ。
横道にいたゴブリンは、爆発で壁の染みになっている。
さぁ、残りはどこだ!
ズシャア! と、──横道から元の通路にでると、素早く左右を確認。
おぉっと、どっちにもゴブリンの集団がいる。
数が多いのは………右ぃ!
ポイと弾倉を地面に置くと、銃把を握りしめる。
「死になさい!!」
ガガガガッガガガッ!!
と腰だめに連射。
反動が小さいお陰で、意外にも弾道の
銃の重さも相まって、素晴らしい命中率だ。
6.5mm弾はその威力を惜しみなく発揮し、固まっていたゴブリンの集団を肉塊に変える。
全滅させるには至らなかったが、右側は取りあえずこれでいい。
次、左ぃぃ!!!
グルンと銃身を体ごと背後へ向けると、ジリジリとエリナの無防備な背中を狙わんとしていたゴブリン共の鼻先に銃口を近づける。
「……アタシはね、
ガガガッガガガッガガガガガガッガッ!!!
小刻みに左右に振りながらゴブリンを薙ぎ払う。
接近していた分、左側のゴブリン共の殲滅率は高く、今ので取りあえず全滅。
そんでもってもう一回、右ぃぃ!!
グルリと再び銃身を右側へ向ける。
ゲギャギャ? と、小さくなって震えていたゴブリンの集団に狙いを付けると残りの弾を全部ぶち込む。
「命乞い? 聞かないけど、ね」
ガガガッガガガガッ!!
チリン、チリン……チリンリン…………───。
と薬莢が澄んだ音を立てる中、取りあえずこの場にいた集団は殲滅された。
「ふぅ……ッて、キャ!!」
珍しく可愛い悲鳴を上げるエリナ。
足元にはさっき投擲した手榴弾があった。
「あ、っぶな……。これ爆発したら死んじゃうわよ……」
不発弾は最高に危険だ。
いつ爆発するかもわからないのだから、近づくことさえ憚られる。
ん?
これ、不発弾じゃないわね。
よくよく手榴弾を観察すると、ピンを抜いて爆発させるものではない。
ピンはあくまでも誤爆防止のためで……。
「ま、まさか───これ……」
手榴弾を拾い上げる。
って、危ない危ない?!
「もしや、この
手榴弾の弾頭の上に生えている、乳首のような出っ張り。
そこに被帽がかぶせてあるところを見ると、その部分を叩く必要があるみたいだ。
何なの、このめんどくさい作りは……。
この手榴弾は、3つの動作が必要になるという事だ。
ピンを抜く、叩く、投げる。
普通の手榴弾に比して、ワンアクションが余分に必要になるという事。
まともな国のやることではない。
そして、ちょうど
それにしても一体何匹いることやら。
あ、そうだ~。
この手榴弾、試してみましょ。
エリナは手榴弾の出っ張りを手で叩く。
ペチッ!
………………あれ?
叩く。
………………───あれれ?
叩く!!
あるぇ?
「こ、これ、
焦るうちにゴブリンが近づいてくる。──数は流石に少なくなって約5~6匹。
だぁ、もう!!
コンニャロ、とばかり壁に叩きつけるとバシュ! っと発火の手ごたえ……───うわわわわ!?
いきなり発火したものだから驚いて手から滑り落ちる。
ヤバイ、ヤバイヤバイッ!!
エイヤ! と掛け声ひとつ、蹴り転がすとコロコロとゴブリンのところまで転がり……───ッバァン!
炸裂ッ!!
ベチャベチャと肉やら何やらが飛び散るて。
エリナの被る制帽にも
……。
…………。
ファッ〇!!!!
制帽ごと腸を地面に叩きつけると、血と肉片を払って被りなおす。
この手榴弾作ったやつ…馬鹿でしょ。
「ったく!」───悪態を吐きつつ軽機関銃の弾倉を交換し、油断なく周囲を見回す。
シンと静まり返った洞窟。
先ほどまでの喧騒が嘘のようだ。
「殲滅した……いえ、違うわね」
ソロソロと横穴に戻ると、武器を回収する。
洞窟に立ち込める気配…殺気のようなもの。
「ここからが本番? それとも、慎重になっただけ?」
ゴトゴトとリヤカーを曳きつつ、通路を征く。
そして、
通路が途切れる………。
to be continued??
ゴブリンの巣穴で目覚めた美人助教授。
エリナ・エーベルトの戦いはまだまだ続く!!
美人女教授、旧軍火器でゴブリンの巣を征くッ! LA軍@多数書籍化(呪具師200万部!) @laguun
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます