狂フラフープ様 Story-3

 いま半吸血鬼と総称を使ったが、隊長であるわたしと、隊員たちとでは、厳密には種族が異なる。半吸血鬼とは、レッサー・ヴァンパイアとヴァンピールの両者を指す言葉だ。


 レッサー・ヴァンパイアは真なる吸血鬼に噛まれることで怪物化した元人間。そしてわたしのようなヴァンピールというのは、真なる吸血鬼が人間の女と性交を行うことによって、その間に生まれてくる子供だ。ちなみに、理由は分からないがヴァンピールは全員が女である。わたしも。


 なお、真なる吸血鬼にも二種類がある。あるらしい、と言われている。つまり、普通の真なる吸血鬼と、たった一人だけ存在すると想定されている最初の吸血鬼、真祖吸血鬼だ。真なる吸血鬼が半吸血鬼と異なるのは、吸血鬼を増やすことができるという点だ。レッサー・ヴァンパイアもヴァンピールも吸血衝動を持ち、人間に対する吸血を行うが、それによってレッサー・ヴァンパイアを増やすことはできない。なお、真なる吸血鬼になるためには、真なる吸血鬼の血を飲まなければならない。真祖の血を吸った最初の真なる吸血鬼というのもいたのかもしれないし、或いは今でもいるのかもしれないが、少なくともそいつは名乗り出たりしていないので、そいつのことも謎である。


 この場を作り出した何者かは吸血鬼に対して悪意を持っているということは疑いもないと思うが、それについて真っ先に容疑者に上がるのはヴァンパイア・ハンターの連中だ。ヴァンパイア・ハンターは種族名ではない。人間が大半だが、わたしと同じヴァンピールのヴァンパイア・ハンターも何人か知っているし、真なる吸血鬼のヴァンパイア・ハンターすらも実在した例があると言われる。


 しかし、半吸血鬼だけをわざわざ狙いたがるヴァンパイア・ハンターというのは、どうだろう。まあ人にはそれぞれの事情というものがあるからそんな奴もいるかもしれないが、少なくとも噂にすら聞いたことはなかった。


 とにかく、周囲を警戒しつつ、クリアリングを行いつつ、大階段を昇って上の階へと進む。とりあえず、二階だ。あの血液の発生源を確認しておきたい。おそらく何か重要な意味があるはずだ。


 結論から言えば、さっきの部屋の真上に当たるであろう場所の扉を開いて中を確認したら、割とあっさりと答えは分かった。


 そこに居たのは、竜だった。或いは少なくとも竜としか言いようのない何か。そして……わたしには分かる。


 そいつはだった。

 

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