一番好きなのは
次のお客様は藤野朋子様
アヒル口の可愛い女性
放っておくと、食事をお菓子で済ませようとするくらいお菓子好きな娘だ
でもそれはただの願望で、そんな事はしない
常識もキチンと持ち合わせた娘
朋 こんにちわ
私 お待ちしておりました
朋 何から話そうか?
私 何処からでも良いですよ
肩まで伸びた髪を指に絡めながら
朋 最初は勘違いだったんでしょ?
私 そうですね、結構有名な話しになりましたよね
朋 マスターの事を好きだったのは清美だからね、最初は
私 はい
彼女の友達が、強いて上げれば
あくまで、強いて上げれば一番タイプなのはピンクのスエットを履いてる先輩
と、同期の飲み会で発言したらしい
当時、テニスサークルの合宿での部屋着にピンクのスエットを使用していたのは私だけだった
これに関しては間違った情報ではないのだが
彼女の友達が言ったのはあくまで、強いて上げればであり、ピンクさんが好きなどとは言っていないのだ
それも私に伝わった時点では、新入部員のひとりにそう言う発言をした娘がいると言う事だけ
後輩を使い、事の真相を調べさせたら犯人は藤野朋子だと言う事が判明したので、私は彼女に近づいた
途中で人違いが判明(後輩の追加踏査による)したのだが、乗りかかった船なのでそのまま押し通してしまい
(押し倒したわけでは無い)
何故かうまく行って、お付き合いする事ができたのだ
その事は後程サークル内の伝説として、半年くらいは語り継がれたのだ
朋 長い説明ありがとう
私 どういたしまして
朋 で、本気だったのかな?
私 勿論ですよ
朋 学生相手に結婚?
私 いいえ、卒業するまで待つと言ったはずです
朋 では学生相手に婚約?
私 正式ではないにしても、そうでしたね
朋 重いよ・・・
私 今考えたらそうですね
当時、私は社会人で朋子は学生
急いで求婚した訳ではないが、朋子はまだ気楽に過ごしたかったのだろう
過ぎたるは及ばざるの如し
考えの浅い私は離れる朋子をただ追いかけた
追いかける程、離れる朋子
関係が戻る事は無かった
朋 あの後、結構早く結婚してたよね
私 はい
朋 流石に披露宴の二次会とか行けなかったけど
私 貴女も二次会に、誘ったと聞いてます
朋 写真は見たわ、綺麗なお嫁さんだね
私 ありがとうございます
朋 私はね・・・
私 存じています
朋子も30歳寸前に結婚したが、3年後には独身に戻ったらしい
子供はできなかったそうだ
朋 マスターと結婚したら幸せになれたかな?
私 どうですかね?
朋 でも、一回無理だと思ったら、もう無理だよね・・・
私 そうでしょうね
順位を付けるのは失礼だとわかってはいますが
藤野朋子は歴代の第二位です
そして去られた時のダメージは断トツの一位
体調に異常を感じる程ダメージを受けた
私がその後、スピード婚をしたのは朋子のダメージから逃れる為とは言わない
でも、少なからず影響はあったと思う
朋子が結婚した時、私はすでに子を育てていた
朋子が離婚をした事を聞いた時、何もできない自分を理解していたが
あの時、もう少し寛容な態度がとれれば、僕は朋子を幸せにできたかもしれない
そんな事を考えていた
僕が朋子に出したのは
スポンジから自分で焼いたイチゴのケーキ
初めてのクリスマスプレゼントに添えたもの
朋 これはおいしかったよ
私 ありがとうございます
朋 でも一人では食べきれないよ
私 では、私も手伝いましょう
それでも食べきれなかったケーキを残し
朋子は店を出た
そして最後の客
玲子が入って来た
私も玲子も、当時傷心だった
しかし互いに傷の事を話す事はなかった
互いに家族を欲し、目的が一致していた
水が流れるように滑らかに進み
初めてのデートから1年後には式だった
長きに渡り夫婦でいれば、ゴミも出るし悪臭漂う時もある
それでもどうにか
どうにか一緒に暮らせている
これはこれで幸せなのだろう
玲子は店に入ってきたが、ここで話す事はない
又、お出しする料理もない
もし玲子が他のお客様同様の扱いになるとすれば、それは一緒に暮らさなくなる時が来てからだろう
でも、玲子は歴代一位ではない
そして、いつも店にいるわけでもない
本来のルールとは異なるが、私がお迎えするのは常にこの店だとは限らない
歴代一位の彼女の名前は明かせない
そもそも存在自体を明かせない
墓場まで持っていかなければならない秘密なのだ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます