いい加減にしないと切れますよ
なかなか、お料理を希望されるお客様の来店がありません
でもそろそろ、そんなお客様がいらっしゃる頃では?
ちなみに当店に営業時間の概念はありません
お客様の都合の良い時にお越しになればよろしいかと思います
今度のお客様は中学3年生
進学先はバレーボールの推薦で決まっているスーパースポーツ少女
菊池かおり様のご来店です
先ほどの高橋直子様もバレーボールを頑張っていたようですが、巷ではバレーボールが流行っているのでしょうか?
客 こんにちは
私 いらっしゃいませ、かおり様
身長は165センチくらい
バレーボールの推薦にかかるには、少々身長が物足りないのかもしれませんが、彼女にはそれを凌駕するジャンプ力があった
と、言うよりもとにかく身体能力が高いのです
それでいて抜群のスタイル、県下でも有名な美女であり、言い寄ってくる男性は星の数程いた様子です
客 聞いてください
私 なんなりと
客 私、これでも結構モテたんですよ
私 そうでしょうね、お美しい
客 でも、私の彼氏も凄かったのよ
私 そうなんですね
客 しかも、凄く狭い範囲で
私 と、言いますと?
客 同じクラスの女子限定でモテてたの、他所では全然モテなかったのに
私 そうですか・・・何故なんでしょうか?
客 見た目は普通なんだけど、一緒にいると好きになっちゃうみたいなの
私 それは不思議ですね
客 私の友達も、皆1度は好きになった事あるの・・・
私 それは穏やかではありませんね
このあたりから、菊池かおり様は諦め顔に変わっていった
客 だから私、もう耐えられなくなってお別れしちゃったの
私 そうですか
客 だから、ここからは次の客に任せるわ
私 お帰りですか?
客 でも、せっかくだからお食事くらいしていくわ
私 そうすると良いでしょう、何をお出ししましょうか?
客 マスターに選んで欲しいです
私 かしこまりました
私は少し考えて
ミートソースにアイスミルクティーを添えて出した
客 マスターの分は?
私 同じものを頂きます
客 飲み物も?
私 そうですね、ジンジャエールにしておきましょう
菊池かおり様はゆっくりとパスタを完食し、アイスミルクティーは半分程飲んだところで話しだした
客 もう、この店に来ることはないと思うの
私 そうですか
客 この後、いい事はあまりない気もするし
私 ・・・
客 なんだかんだ言っても、この頃が一番楽しかったと思うよ・・・
私 そうですか・・・
客 ここに来ると、未来が変わるなんて事はあるかな?
私 残念ながら、それは期待できないかと・・・
客 あのまま続けてたら、色んな事変わったのかな?
私 どうでしょうか?
私 お決めになったのは、かおり様です
私 タラレバは論じても、どうにもならないでしょう
客 そうだね・・・
客 私、そろそろ帰ります
客 表にユッキとミキちゃんが待ってるみたいだから
私 ご来店、ありがとうございました
菊池かおり様が店を出ると同時に、今度は二人組が来店してきた
ここからは表記を“客”ではなく、各々の頭文字にしていこうと思います
来店していただいたお二人は
吉田由紀子様=ユッキ
名取美紀子様=ミキちゃん
ユ おひさー
ミ マスターも変わらないよねー
いきなり設定やルールを無視する二人組・・・
相変わらずとしか言いようがない
私 はいはい、お久しぶり
ユ はい、は1回ね
ミ なんか私達だけ敬語じゃないとか、どんだけー
私 ようこそ、お越し頂きありがとうございます
体裁は整えておこう・・・
ユ なんで、かおりん帰ったの?
ミ 未だ気にしてるんだよ
ユ えー執念?
ミ だから盗られるんだよ
ユ 盗ってないよ、捨てたから拾っただけ
ミ 捨てさせたのはワタシだけどねー
ダメだ・・・
こいつらにまともな接客などできない・・・
今回は趣向を変えて臨もう
俺 で?
ミ 何、その態度?
ユ うちら、客だよ!
俺 こっも客を選びたいよ・・・
ユ じゃあ聞くよ
俺 何?
ユ 私とミキさん、どっちが好きだった?
俺 どっちも好きじゃなかった
ミ は?
ユ それは通用しないよ!
ミ やることやったよね?
俺 やったよ
ユ 好きじゃないのに?
俺 うん、若かったからね
ミ サイテー
俺 認めよう、お前らも同類だけどな
ユ いいけど、どっちが良かった?
俺 強いて言えば・・・
ミ 言えば?
思い出すフリをして間を取って答えた
俺 かおりんw
ユ はい?
ミ かおりんとはしてないよね?
俺 してないよ、でもかおりんが一番好きだったよ
ユ できなくて残念だったねw
俺 するだけが恋じゃないよ・・・
彼女達は言葉を失った
俺 勿論、その時はお前らも両方好きだったから心配するな
ユ 下手だったけどねw
ミ そうかなー
ユ 下手だったよ!
ミ そんな事もなかったよw
こいつらの言う事は良くわかるのだが、これ以上店の品位を下げるのもアレなので
俺 そろそろお引き取り願おうか
ユ 何か出してよ
ミ 私もw
何を出すか迷ったが、どうにか思い出して各々出した
吉田由紀子には、コンビニの肉まん
名取美紀子には、のり弁当
彼女達は少し不満そうだったが、納得する事しかできないのです
最後までお下劣な話しをしながら食べ終わり帰って行った
吉田由紀子は後にもう1度来店する権利があるのだが、もう来なくても良いと私は思っていた
接客業としてあるまじき思考です
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