飴玉をあげましょう

私のお店の従業員はひとりです

そう、私だけです

接客も仕入れも料理も掃除も、全て私ひとりで切り盛りしています


今日のお客様は随分可愛い方のようです


客 こんにちわ

私 いらっしゃいませ、ひらかわ様

客 ひらかわれいこ、です

私 そうでしたね、ひらかわれいこ様でしたね

客 漢字がわからない訳じゃないのよ

私 大丈夫ですよ、小学一年生では自分の名前は漢字で書けても、お友達の名前までは漢字で覚えていないものです

客 そうなのよ・・・

私 それで、どんな感じでしたか?

客 うん、仲の良い友達だったの

私 そうですねw


小学一年生にしては、目鼻立ちのハッキリした可愛らしい娘さんです

さぞかし男子には人気があるのだろう


客 でね、特に仲の良い男の子が二人いるの、その二人はいつも私の家に遊びに来るんだけどね・・・

私 だけど・・・なんですか?

客 そうなの、本当は女の子と遊ぶ方が好きなんだけど、毎日来るから困ってるの

私 迷惑なのですか?

客 迷惑じゃないけど・・・よく分からないの・・・

私 そうですか、まだ小学一年生ですものね・・・


そろそろ話しが尽きてきたので聞いてみる


私 それでは、ご注文は如何致しましょうか?

客 別にお腹は空いてないので、今日はこのまま帰ります

私 そうですね、その方がよろしいでしょう


食べたくないお客様に、無理に料理を出してもしょうがない


私 では、この飴玉をあげましょう

客 ありがとうw


可愛い笑顔だ

ひらかわれいこ様は飴玉をポケットに入れて、元気に帰って行った


間もなく入れ違いに、次のお客様がご来店のようです

今度のお客様は少し大人びているが、それでも小学生だった


客 こんにちわ、高橋直子です

私 いらっしゃいませ、こちらへお掛けください


手足は伸びているが、未だ幼い感じの少女

高橋直子様は卒業間際の小学6年生です


客 早速だけど聞いて欲しいの

私 なんなりとお聞きしましょう


少し不機嫌な様子で早口で捲し立てます


客 本当にふざけてるのよ

私 何がですか?

客 せっかく卒業記念のサイン帳を書かせてあげたのに

私 書かせてあげたんですね?

客 書いて来た内容が、幼稚でふざけてるの

私 どのようにですか?

客 思い出帳なんだから、もう少し真面目に書くべきなのに全然ダメなの

私 それは残念ですね、何人くらいにお願いしたのですか?

客 女子はクラスの殆どだけど、男子は厳選の3人だけ

私 3人ともふざけてたのですか?

客 1人はまともだったけど、2人はダメダメ

私 1人まともであれば良かったのでは?

客 本命の2人が両方ダメだったの、子供過ぎ・・・


ん?

本命が2人だと?

とりあえず聞き流しておこう・・・


私 なるほど、その後どうなりましたか?

客 どうもしないわよ

私 そうですか

客 男の子よりもバレーボールの方が楽しいしw

私 なるほど、青春ですね

客 そうなの


男の子<バレーボール

健康的で素晴らしい


私 それでは、ご注文は如何致しましょうか?

客 そうね、食事はいらないわ

私 それでは高橋様にも飴玉を差し上げましょう

客 ありがとう、じゃあ帰るわ


高橋直子様は飴玉を口に放り込んで急いで帰って行きました

日に焼けた健康的なスポーツ少女

それでも未だ小学生である事に変わりはないので、外で食事をするには少し早すぎたのだろう



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