第100話突破!!!記念&ホワイトデー❤︎特別編(カクヨムオンリー)その4


「う。うそ、まって、うそ、え? ほ、ほんとに? わ、私とハジメちゃんが、恋人……!?」


 凛はそれを受け取った瞬間、涙を流し始める。


「おい?」


「ほんとに、いいの? 私なんかでいいの? ハジメちゃんならもっといい人絶対に見つかるよ? 私、こんなだし。いつも甘えてばかりで、迷惑かけて、嫌な顔しながらも結局は私が喜ぶように動いてくれて。勿体無いよ、こんなの」


 女友達は顔を横に振り告白を否定するそぶりを見せる。


「そんなことない。やめてくれ、凛。俺は、そういうところも含めて君のことが好きなんだ。悪口を言う奴は、彼氏として俺が許さないぞ?」


「で、でも、私甘えちゃうよ? これからもベタベタくっついちゃうし、ワガママ言っちゃうと思うよ? はじめちゃんと一緒にいたら、自分が抑えられないの。全てを受け入れてくれている気がして、歯止めが効かないの。そんな女を彼女にしていいの?」


「当たり前だ。彼女どころか、お嫁さんになってほしい。今はまだ、結婚してくれと言えるような立場じゃないけど。将来、その時が来たら必ず言うから。だから、まずはお付き合いをさせてください、お願いします!!」


 俺は深々と頭を下げる。これで断られたら、もうどうしようもない。俺としては諦めたくはないが、嫌がっている凛を無理やり恋人にするのは、むしろ向こうを不幸にさせるだけだ。それはこちらの望むことではない。あくまで、二人での幸せが大事なのだから。


「…………ほんとうに、ほんとうに、私でいいのね?」


「はい、あなただから。八重樫凛さん・・・に、俺は恋人になってほしいんです。今までと違う関係で、今までと同じような時を過ごしていきたいんです」


「…………こちらこそ、よろしくお願いします、九重基くん・・・


「はい、よろしくお願いします!」


 そして二人は、本日二回目の口づけを交わした----











 時は少し過ぎ、高校一年生の春。


 放課後、下駄箱の前で恋人と待ち合わせ中の俺は、まだかまだかと待ち惚けていた。

 友達に絡まれた彼女が先に帰っていいよ! と言ったので一旦は下に向かったのだが(一年生の校舎は四階にあるのだ)、やはり置いて帰るわけにもいかずこうして待機しているわけだ。


「あれ、ハジメ・・・!?」


「あ、やっと来たか、凛」


 するとお待ちかねの相手が校舎から出てきた。その様子を見るに友達とは校内で別れたようだな。


「帰ったんじゃ無かったの?」


「まさか、置いて帰るわけないだろ。ほら、帰るぞ?」


「う、うんっ、ごめんね?」


「いや、いいさ」


 そうして今や当たり前になった行為である恋人つなぎをどちらともなく自然とする。


 初めのうちは、付き合いたてほやほやのカップルよろしく手が触れ合っただけでもお互いに顔を真っ赤っかに噴火させていた。今までベタベタとしていた幼馴染の関係とはなんだったのかと過去の自分を問いただしたい位だ。


 だが流石に一ヶ月以上も経つと、少しは慣れてくるもので。凛曰く『しゅきしゅき度』は高まるばかりであり、二人の恋路は止まるところを知らない。


 まだ入学していくらも経っていないというのに、すでに校内では熱々カップルとして有名だ。

 俺たちはそれでも、周りの視線などどこ吹く風というのうに好き勝手振る舞っているのだが。


「でも、改めてまさか私たちがこんな関係になるなんてね」


「まあな。でも俺としては、いつかこうなっていたと思うよ。それがたとえ、来世であったとしても、他の世界に生まれ変わったとしてもない」


「なにそれ、おっかし〜。ハジメったら、私のことこんなに好きだったんだ?」


 実は付き合いたての頃はお互い君さん付で呼んでいたのだが、流石にこれ違和感がすごいからやめようということで同意し、お互いに呼び捨てにしようということになった。


「おう」


「!? や、やめてよ、もうっ」


「そっちから振ってきたんだろ」


「むう……でもそんなハジメのこと、私も好きだよ?」


「ぐはぁっ!!!」


 その笑顔、一部の人間にクリーンヒットだ。主に俺に。


「でも、これを貰ったあの日、確かに|私達の運命は変わった《・・・・・・・・・・》。なんだがそんな気がするの」


「なんだそりゃ、俺としてはさっきも言ったが、俺たちは魂レベルで・・・・・こうなる宿命だったと言いたいところだな」


 凛がいつ左手の薬指につけているソレは、俺があの日プレゼントしたやつだ。なぜまだ結婚してないのにそこに? と聞いたら、婚約しているという幸せをいつでも味わいたいから&男避けということだった。なるほど確かに、凛はモテる見た目をしているからな。


 俺と付き合っていると知られた日には、隠れファンなる者から襲われたくらいだ。入学したての生徒になぜ既にファンがいるんだと言いたくはあったが。




 指輪は、俺がお小遣いを貯めて買ったものだ。もちろんバイトをしてというわけではなく、家の手伝いやら町内会の仕事やらを凛に内緒で受け持っていた分のお駄賃だ。


 彼女がデパートをデートコースに選ぶことは、実はあっちのお母さんから聞いていたのだ。

 どうも夏休みの頃から計画を立てていたみたいで、本当は俺が告白しなかったらあの四枚目の写真の話題を皮切りにあったからするつもりだったらしい。


 そこまで詳しいことは流石に知らなかったが、ともかくホワイトデー計画の情報を入手していた俺は、金を貯め予め指輪を予約していたのだ。

 店員さんも俺が中学生だと知ったらだいぶ驚いてはいたが、たま〜に似たようなことをする子がいるらしく喜んで値引きしてくれた。正直助かった。


 もちろん将来的にはきちんとした指輪を再度渡すつもりだ。きっとその時には、今度こそプロポーズをするのだろう。頑張れ、未来の俺。


「ハジメ、永遠に一緒にいようね? あの世でも、生まれ変わっても。きっと絶対に巡り合えると信じているから」


「ああ、俺もだよ、凛。好きだ」


「ふふっ」


 そうして校門の前でキスをする二人の姿は、丁度通りがかったトラックに遮られて反対側にいたデバガメ新聞部員からは捉えることはできなかったのであった。













「ふうん、幸せそうだねえ。こんな子たちを殺すのか……いいや、やっぱやーめた! ああめんどくさい、どうして神たちはこうも人の命を無碍に出来るのだろうか? ま、僕も神なんだけどね〜……」


「仕方ありませんよ。それが私たちには当たり前であって、そういうシステムのもとに生活しているのですから」


「とは言ってもねえ」


 畳六畳の部屋では、見目麗しい女性と白いへっぽこな姿をした男がお茶を飲んで語り合っていた。


「じゃあそろそろ、始めますか?」


「そうだねえ、彼らのためにも、早く変革を成し遂げないとねえ」


「はい!」


 そして二人は湯呑みを置き、"立ち上がった"----











 ----これは、あり得たかもしれない未来。


 ----だが、もう訪れることのない未来でもある。









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