幼少期
第8話 1歳
――――時は過ぎ1歳。
俺はハイハイからよちよち歩きが出来るくらいに成長した。
「あー、あー、」
「はいはい、ヴァン、こっちへおいで?」
俺はお母様であるマリアに近づく。
「おー、良い子ですね? 私の言葉がもうここまで理解できるなんて、流石は未来の英雄だわ!」
「奥様、その通りでございます! この子の成長は著しいものがありますね!」
「ええ、ソプラ。貴方の世話のお陰でもあるわね?」
「そ、そんな、奥様……私程度の世話など取るに足りません……」
メイドさんことソプラさんはお母様に謙遜した態度を見せる。ソプラさんはいつも謙虚で面倒見の良い、まさにメイドの鏡だ。しかも優しくて胸も大きく柔らかい!
「そんな事はないわ。ソプラがいなければ、私はここまで回復しなかったのだもの……」
「奥様……本当にようございました。ぐすっ」
そう、俺のお母様は、俺を産んだ後半年以上体調を崩してしまったのだ。原因はよく知らないが、よく医者らしき人が家を訪ねているのを俺は何となく察知していた。また、ソプラさんが俺の世話を一身に引き受けていたので、お母様はゆっくりと静養できたのだ。まあ、俺自身自我があるせいか泣く事があまりなく、不自然でない程度にオシメやお腹が空いたことを知らせる程度に済ましていたから、そこまで面倒をかけてもいないとは思うのだが。
「ああ、ヴァン。これなら言葉を話すのもそう遠くはなさそうね?」
「ええ、後数ヶ月もすればきっと奥様の名前を呼ぶようになります」
……実は喋れるとか言えねえ。ある日、発声出来るか試してみたところ、何と普通に声が出たのだ! この世界に来るときに、ドルガさんに異世界の言語を理解できる能力も貰っていたので、違和感なく発する事ができた。俺は流石にこれはまずいと思い、今まで普通の赤ん坊のフリをしてきたのだ。まだ半年くらいは我慢したほうが良いかな……言葉を話せないというのは以外と辛いものがあるのだ。
「あうー、あうー」
俺はお母様のお胸を叩く。ソプラさんとは違い、お母様のオッパイは張りがありソプラさんよりは少し小さめだが程よい大きさ、と言った感じだ。先端は桃色、この世界の人は桃色の人が多いのか? 地球の男どもが喜びそうだ。
お母様の見た目は、優しい母親といった趣で、茶色の目に金色の長髪、寝たきりもあったせいか肌は結構白いが、痩せこけているわけではない。垂れ目にこの雰囲気はかなりの破壊力である。
「あら、お腹が空いたのかしら?」
「奥様、折角ですので吸わせてあげたらいかがでしょうか?」
「そうね、私の初めての授乳になるわ……ヴァン、おいで」
お母様は服をたくし上げ、その双丘を露わにさせた。
「あうっ!」
俺はできるだけ自然にお母様の先端にしゃぶりつく。ああ、この時間はやはり幸せだ……!
「ふふ、ヴァンは甘えん坊さんでもあるのね?」
「ええ、私の胸もいつも激しく……こほん、元気に吸っておられますので」
「そうなの? 大きくなってね、ヴァン」
はい、大きくなります、お母様! だからもっと吸わせてください!
俺は吸う強さを増していく。
「んっ……」
「お、奥様、大丈夫ですか?」
「え、ええ。少し強く吸われて……大丈夫だわ」
「そうですか。坊っちゃまはたまにそこら辺の男よりも上手ですから。ああ、失礼しました」
「いいえ、ふふっ。おませさんにならなくちゃ良いけど」
「私が付いていますので、その方面でもきちんと教育はさせていただきます」
「頼んだわよ、ソプラ。こんな会話、あの人が聞いたら大声で笑うわね?」
「ええ、きっと」
俺は流れるような、ゆったりとしたような、不思議な時間を過ごしていった。
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その夜、俺はお母様に抱かれながら、リビングで食事をとる夫婦の中に混じっていた。
「貴方、エイティアの方々が来るって本当なの?」
「ああ。共に誕生日も同じ、一歳を過ぎたからな。そろそろ顔を合わせておきたいのだそうだ」
「そうなの、もうそんな時期なのね。これから忙しくなるわ」
「マリア、俺がもう少し気をつけていれば、お前が体調を崩すことは」
「貴方、その話は止めて。ヴァンが生まれた事が悪いみたいだわ」
「す、すまん、そんなつもりではなかったのだ……」
お父様ことヴォルフは頭を下げた。
「ふふっ、いいえ、貴方がどれだけ気遣ってくれたのかは知っているわ。あちこちのお医者様を走り回ってくれたことも、忙しいのに毎日様子を見に来てくれたことも、全て感謝しているもの。ありがとう、貴方」
そう言ってお母様はお父様に微笑みかける。
「ご、ごほん。マリア、後で良いかな?」
「あら、良いわよ? うふふ、今夜は寝られるのかしら?」
「さ、さあな! 早く食べよう」
「ええ」
何だこの会話は。聞かなかったことにしよう……それにしてもエイティアとは何だ? おそらく人の名前だとは思うのだが、何やら意味ありげな会話だったな。まあ、そのうちわかるか。
そうそう、お父様はイケメンだ。本当にイケメンだ。ハリ◯ッド俳優バリの格好良さだ。目の色はこれまた茶色で、銀色のセミショートにキリッとした目、厳格そうな口元に鍛え上げられているであろう体つき。しかしその見た目に反してとても優しくて繊細な人だ。剛柔兼ね合わせているといった人物である。しかもこれで貴族とか、俺の両親
そうして俺はお母様に抱きかかえられながら、2人の会話を耳に入れたのであった。子供のいる前で惚気るのはどうかと思うが、赤ん坊だからわからないと思われているのだろう。因みに、食事の時はソプラさんも一緒に食べている。偏見かもしれないが、貴族と使用人が一緒に食べるというのはかなり珍しいのではなかろうか? これも、この家族の安泰の秘訣なのかもしれない。
そうして俺は、再び自室に返された。
「ヴァン、そろそろお休み」
「ええ。貴方、この子はきっと良い子に育ちますわ。早く大きくなって頂戴ね?」
「ああ、12歳になるのが楽しみだ」
「あ、貴方」
「あっ、すまん」
ん? 12歳に何かあるのか?
「……でも、運命には抗えないのでしょうね」
「……仕方がないことだ。魔王も少しずつではあるが、勢力を増してきている。この子を強くするのも、私達の使命だろう」
「ええ。辛いこともあるでしょうが、きっと必ず」
俺は眠気に負け、そのまま闇の中へと意識を落としていった。
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