何デも
「ちょっとここで待っててね!」
凛にそう言われたのが5分程前。
言われた通りに待っているこの場所は、凛の部屋の前・・・。
確かに何でもするとは言った。
でもだからって・・・。
「・・・家に呼ばれるとは、思わなかった。」
一度は断った・・・しかし、
「何でもするって言ったのに・・・。」
普段お調子者の凛が、見た事のない悲しい顔でそう言うのだから二度断る事なんて出来なかった。
結局言う通りに凛の家までやって来た。
流石にマズいんじゃないか・・・、愛衣子さんに黙って他の異性の家に上がり込むなんて・・・。
いやしかし、凛は友達だと言ったのは俺だ・・・、友達の家に行くのにマズい事があるだろうか・・・?
そもそも異性の友達の家に言った事が無いんだから、良いのか悪いのかが分からない・・・。
必死に頭を捻ってこの状況の善し悪し考えていると・・・。
ガチャッ!!
「お待たせ結!入っていいよ!」
「あ、あぁ。お邪魔、します。」
ドアが開いて凛がそう言ってきた。
恐る恐るといった感じで部屋に入る。
机にタンス、ベッドにテレビにその他・・・。
必要なもの以外は要らないといったようなシンプルな部屋だった。
(待っててって言われたから部屋の中を掃除でもするのかと思ったけど・・・、掃除する必要無かったんじゃないか?)
さっき待っている間も部屋の中から掃除機の音や、ましてや物音なんてしなかった・・・。
一体何で待たされていたんだ・・・俺?
「結、こっちに来て!」
未だにドアの傍で突っ立っていた俺に、座りながら手招きをする凛。
呼ばれるがままに凛の傍まで行くと・・・。
「ここに頭ね!」
「はい?」
正座して自分の太腿を指さす凛。
何を言っているんだこの子は・・・。
「えっと・・・、膝枕するって事・・・?」
「うん!早く早く!」
「いや凛。流石にそれは・・・」
「・・・ふぅ~ん、そっか。何でもするって言ったのになぁ~。」
まるで嘘つきと言わんばかりに俺を見てくる凛。
もしかして俺は、とんでもない事を口にしてしまっていたんじゃないか・・・。
今更ながらに気づいた・・・・・・俺が悪い。
「・・・分かったよ・・・、やります・・・。」
「そうだよね!じゃあはい!どうぞ!」
「・・・。」
心の中で愛衣子さんにこれでもかと謝罪しつつ、俺は凛の太腿の上に頭を置いた。
「んふふ、結の髪の毛がくすぐったい。・・・結。」
俺の名前を呟きながら、頭を撫でてくる凛。
それがすごく恥ずかしくて・・・、しかも凛の剥き出しの太腿がダイレクトに俺の側頭部に密着していて・・・。
「も、もう終わり!!」
「あぁっ!?」
友達のお願いと言っても、明らかにこれはおかしいと思って起き上がった。
凛が俺を睨んでいる。
そんな顔をされても、ダメなものはダメだ。
「凛、言っただろ。俺に出来る範囲でって・・・。今のはやっぱりダメだよ。」
「何で?」
「何でって・・・、俺は愛衣子さんと付き合ってるんだから、友達でも凛とはこういう事しちゃいけないでしょ?」
俺の言葉を聞いた凛は立ち上がると、目の前にあった机に近づいていく。
何かゴソゴソとしだした。
何をしているんだろうと、凛の後姿を見ながら思っていると・・・。
「じゃあさ・・・」
凛が口を開いた。
振り返った凛の手には・・・、
「愛衣子に知られたら、結は困るよね?」
さっきまでのやり取りが映し出された、ビデオカメラが握られていた・・・・・・。
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