友達

佐々木さんと付き合ってから数日が過ぎた。

佐々木さんと付き合いだしてから毎日が楽しい。

朝は待ち合わせして一緒に登校したり・・・まぁ学校が違うから途中までだけど・・・。

放課後にも待ち合わせして、寄り道をしたり。

勿論、休日にも会ってデートしている。

そう言えば、同じ学校に通っている友達の歌恋に彼女ができたと話したら、


「えっ・・・、あ、そ、そうなん、だ・・・。」


っと、煮え切らない感じで言っていた。

きっと俺に彼女ができた事が意外だったんだろう。

お前に気になる人が出来たら俺が出来る事なら協力してやるぞ・・・心に中でそう思い微笑んだ。

こんな風に余裕が持てるのも、佐々木さんと言う素敵な子に出会えてしかも両想いで付き合えたからなんじゃないかと思う。

そんな俺は今、佐々木さんとの待ち合わせ場所に向かっていた。

そこは、以前佐々木さんに連れられて来たことがあるあのオシャレなカフェ。

待ち合わせする時はいつも決まってこのお店。

到着すると中に入って、いつも佐々木さんと座っている奥の席へと進んでいく。


「まだ佐々木さんは来ていない・・・か。」


席に着いて店員さんに俺がいつも飲んでいるジャスミンティーを注文する。

初めて飲んだ時にも思ったが、ここのジャスミンティーはとても美味しくて、何度飲んでも飽きない。

佐々木さんがここを気に入るのも分かった気がした。

それから数分後、佐々木さんがやって来た。


「ごめんね田中田君、待たせちゃって!」

「ううん、大丈夫だよ。・・・夜夜須(ややす)さんも一緒だったんだ。」


佐々木さんの後ろから着いて来ていた人物。

夜夜須凛兎(ややすりんと)さん。

佐々木さんと同じ高校に通う、佐々木さんの友達。

明るめな茶色のショートヘアーに、女子高生の平均よりは高い身長。

中学の頃はその身長を活かして女子バスケ部だったらしい。

そして、よく男子と間違われるらしいが、本人はあまり気にしていないらしい。

実際、俺も初めて佐々木さんに紹介してもらった時は失礼ながら男子だと思ってしまった。

制服も、佐々木さんの通っている高校は女子はスカートもズボンもOKらしく、夜夜須さんはズボンを着用していたから、そう思ってしまった。

・・・まぁ、佐々木さんから女子だと言われて、俺から男子だと言った事は一言も言った事はないけど・・・。


「やっほ~田中田君!って、私の事は愛衣子が呼んでるみたいに凛で良いっていつも言ってるのに~。」


後、結構・・・お調子者だったりする。


「いやぁ、それは・・・夜夜須さんだって俺の事名字で呼んでるし、俺だけそう呼ぶのはちょっと・・・。」

「えぇ~・・・、じゃあさ!私も田中田君の事、下の名前で呼んでも良い?」

「え?う、うん、良いけど・・・。」

「ホント!?じゃあ私の事も凛って呼んでね、結!」


何だかトントンと話が進んでいく・・・。


「わ、分かったよ・・・凛。」

「うんうん!それで良し!・・・そう言えば、愛衣子の事もまだ名字で呼んでたよね?愛衣子も結の事名字呼びだし・・・。」


確かに、やや・・・凛の言う通り、俺達はまだお互いの事を名字で呼んでいる。

付き合っているとはいえ、まだ下の名前で呼び合うのは照れくさくて、未だに呼んだことは無い・・・。


「この際だから二人も下の名前で呼び合ってみたら?」

「えっ!?で、でも、田中田君に迷惑じゃ・・・」

「付き合ってるのになんで迷惑なのさ?ねぇ結?」


モジモジとこちらを見てくる佐々木さんと、俺に聞いてくる凛。

でも、そうだな・・・凛の言う通りかもしれない。

俺達は付き合っているんだから・・・。


「・・・うん!全然迷惑なんかじゃないよ、あ、愛衣子さん!」

「っ!?・・・うん、結、君///。」


照れくささがありつつも、俺達は凛のおかげか下の名前で呼び合う事が出来た。


「うんうん、青春だね~!」


横で凛が大きく頷いている。

もしかして、初めからこうなることを狙っていたのか・・・。

だとしたら、佐々木さんは本当に良い友達をもったなぁ~・・・なんて考えていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


カフェでゆっくりしていたら、いつの間にか17時を回っていた。

時間が過ぎるのはあっという間だ。

店を出て三人で途中まで一緒に帰る。

分かれ道で、佐々木さんにまた明日も会う約束をして別れた。

俺と凛は、二人で歩き出す。


「ちょっと飲みすぎ食べすぎたかな。」

「おかわりしすぎだよ凛。・・・今日はありがとう、凛。」


食べ過ぎてお腹を摩る凛に、今日の事のお礼を言う。


「え?何の事?」

「俺と愛衣子さんの事見かねて、あぁ言ってくれたんでしょ?下の名前で呼び合うように。」

「あはは、何の事かなぁ?」

「あはは、別に隠さなくたっていいのに。・・・でも、ありがとう。」

「・・・うん。」


横を向いて凛に再度お礼を言う。

身長が俺とほとんど同じだから、凛の顔が同じ高さにある。

その顔はどこか、赤くなっているように見えた。


「凛・・・もしかして、照れてる?」

「なっ!?べ、別に照れてなんてないよ///!!夕日のせい!!」


必死に説明してくる凛。

真正面を向いた顔は、やっぱり赤い。

それを追求するほど、俺は意地悪な奴じゃない。


「分かった分かったって。」

「全く!!・・・ねぇ結。」

「うん?何?」

「私達、もう友達だよね?」


急にそんな事を聞いてくる凛。

いきなりの質問だったけど、俺はしっかり答えた。


「勿論!俺と凛は友達だよ!」

「結。・・・だよね!」


立ち止まって、手を差し出してくる凛。

俺も立ち止まって、その手を握った。

その日俺には一人、友達が増えた。

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