第2話私の秘密

放課後。

私は約束通り掃除当番を代わりにやっていた。っていっても教室って広いし、全然終わらないじゃん!もう、なんで私が、こんなことしなくちゃいけないのよ!ほうきをはく動作が、だんだん雑になっていく。

真っ赤な夕日の光が、私しか居ない教室を赤く、照らしている。今頃かりんは彼氏といちゃいちゃしてるんだろうな。あれ、かりんには彼氏いないか。私の手はもう動いていない。私は、ぼんやりと窓を眺めていた。外から、クラブの片付けをしている人たちの声が聞こえる。どんどんと明かりを縮めていく夕日と一緒に私も消えていくような気がした。と同時に全然終わらない掃除とさっさと帰ったかりんに腹がたってきた。私は周りに誰もいないことを確かめて言ってみた。

「もう、なんでこんなことしなくちゃいけないのよ!かりんの奴〜!」

ガンッ。私は近くの机を蹴った。うっ、いったーい。机は思ってたより重くて、つま先がジンジンする。くっそー。なんで。一人でジタバタしてバカみたい。いつも私は思ってることを、言えないなんて。

「へーえ、広田さんて、そんな性格だったんだー。」

背後から声がした。私はビクリと身震いした。うそ!まさか、聞かれてたの?!どうしよ、やばいよー!私の頭は真っ白になった。

私はゆっくり後ろを向いた。最悪。なんと、私を見下ろしていたのは、あの黒崎蓮也だった。ジャージを着ている黒崎蓮也は、あのにやにや顔。

「や、やっほー。こんな時間にな、何しに来たの?」

私はなんとか平然を装おうとして無理やり笑顔をつくってそう聞いた。黒崎はしゃがんで顔を近づけた。な、何!?私は一歩後ろへ下がった。

「俺、忘れ物したんだよねー。そんで取りに来たら、面白いもの見ちゃったよ。どうしよっかなー。」黒崎はポッケからスマホを取り出して、何か打ち始める。

「な、何してるのよ!」

私は黒崎に近づいた。

すごく、嫌な予感がした。黒崎の口の端が更に釣り上がる。そして黒崎はスマホの画面を

私に向けた。ツイッターの画面に、

『2年B組の広田さん、掃除当番やらされて大声で愚痴ってるよー。今日の掃除当番誰だっけ?笑』

という書き込み。

「早く消しなさいよ!」私はスマホを取ろうとしたけど、うまくかわされた。どうしよう!そんな書き込みツイートされたら、今までの努力が全部駄目になっちゃう!

「やーだねー。あ、でも言う事聞いてくれたら、このツイート消そうかなー。」

「ふざけないでよ!」

「何もふざけてないじゃん。じゃあこれ流して欲しいの。」

どうやら消すつもりはないらしい。なんでよりによってこいつなのよ!私はこいつの言うことを聞かないといけないの!?バイトとか、もしかして宿題やらされるとか?何にしたって、こいつの考えることってろくなことじゃない。私は気づかないうちに拳を握っていた。私は黒崎を睨みつけた。

「怖いなー。そんな顔しないでくれるー?」

「何をすれば、黙っててくれるの。」

私は低い声で言った。

辺りはもうすっかり真っ暗で、ひっそりしていた。そこに黒崎の目だけが、光っている。恐ろしい目だ。

「そーだなぁー。何にしよっかなー。」

私はまだ、黒崎を睨んでいる。

「決めたよ。」

ニヤリと笑って、黒崎は言った。



「俺の、彼女になって。」







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