私のほんとの性格君だけは知ってる

本堂玲那

第1話学校なんか大嫌い

キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン

「起立。気をつけ。礼。お願いします。」

「お願いしまーす」

と、いつもの気だるげな感じで授業が始まる。

「はい。今日は―」

先生が話し始めるけど、誰も聞いていない。

もちろん私もね。

すると、後ろの席のかりんが話しかけてきた。

「この前、パパに服買ってもらったんだけどー。それが超可愛くってー。書いたげるね。」

一体なんの自慢なの?と、私は心の中で毒づく。あんたの服買ってもらった話なんてどうでもいいわよ。

でも、こんな性格だっておもわれたくなくて。

私は

「また!?金持ちー!」

なんて思ってもないことを答える。こう言ったらあんたは満足するでしょ。っていうのは流石に腹黒過ぎるかな。

中学生になって、思うことをはっきり言えなくなった。言ったら引かれるのが怖いから。中学一年生の始め、私は仲良くなった子の寝癖が気になって、

「髪の毛はねてるけど、大丈夫?」

と言った。もちろん悪気はない。だけどその子は

「どうしてそんなこと言うの!考えられないんだけど。」

と、違う様に捉えた。

「ちが、そういう意味じゃなくて―」

すぐに本当のことを言おうとしたのに。

「聞いてよみんな!歩がね、ひどいんだよ!?」

みんなはそっちの方に反応したから、すぐに私が悪いことになった。中学とは、残念ながらそういうところだ。すごく狭い世界の話だと思う。小さな小さな箱の中の話だ。でも。私は皮肉にもこの箱の中にいなくちゃいけない。この世界で嫌われると、先が苦しくなるんだ。だから私は毎日自分を作っている。マイナスになるようなことは、言わない。またすれ違うのが、怖いから。ノリのいいことだけを言う私。それがみんなの前での私、広田歩。

「ねぇってば!歩!ちゃんと話聞いてんのー?」

「聞いてるよ!服買ってもらったんでしょ」

「ジャジャーン!」

「可愛いー!」

こんな話ばっかり。なんだかつまんないな、毎日が。

「お前ら、ギャーギャーうるさいんだけど。」

「!?」

突然だったから、びっくりした。私達たちを注意したのは、私のななめ後ろ、黒崎蓮也だ。教室が静まり返った。何よ。あんたも授業なんか真面目に聞いてないくせに。

「偉いな、黒崎。」

先生が黒崎のことを褒めた。

「いや、当然のことですよ。」

黒崎はにやにや顔でいった。

何なの、こいつ。黒崎はこういう奴だ。先生が私達を注意しないのを知っていて、わざと私達を注意する。それで先生に気に入られるようにしている。

はっきり言うと、私はこいつが嫌いだ。

ちなみに、私は学校も嫌い。だからって不登校とかには、なる気ないんだけどね。一回来なくなったら、私の居場所が消えてるんじゃないかって思ってしまう。

「ねぇ歩!今日の放課後の掃除当番、変わってくれない?」

「えー。嫌だよ。」

「お願いだからぁ!」

また始まった。かりんはいつもこうやって人を使って放課後遊んでいる。前に頼んだのは確か名簿が私の前の女子だった。ずるいよ。自分だけやらないなんて。

「ねぇ、いいでしょ?歩優しいもんね?」

何なの、その言い方。でも、流石に私には断れない空気だ。

「もう、分かったよ。」

「やったー!」

大袈裟に喜ぶかりん。

ほらね。だから学校なんて大嫌いなの。



ねぇ、どうやって素直になればいいの―


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