Chapter3:弔いの火炎花
九 鍛冶の町へ
「こらまたでっかい山やなぁ……」
旅支度を済ませてグノスを発ったセナたちの前に聳えていたのは山頂から噴煙が立ち込める成層火山だった。
「このイルジオス火山を越えた先に今回の目的地である鍛冶の町パスパがあります」
「ちゅうことはこの山を登らなあかんの!?」
「いいえ、山の中腹にあるナザロ溶岩洞を抜けて鍛冶の町パスパに向かいます」
「そ、それ先に言うてや……」
「僕も山登りをしなきゃいけないのかと思ったよ……」
「次回からは混乱を招かないよう情報の開示順を配慮します」
「是非ともそうしてね……」
苦笑いを浮かべながらセナは溜め息を吐いた。
「外も大概やったけど、中も相当暑いなぁ……」
薄暗い洞窟の中へ入るや否や、あまりの暑さに辟易した様子で成涸はぼやく。
「防護魔法で暑さを緩和しないとこの先は厳しそうだね」
「魔法で緩和って……ここ抜ける前に魔力尽きてまうやろ」
「そうならないためのGDだよ。使い方はお店の人に聞いたでしょ?」
「ええと確か……ここをこう、やったっけな……」
慣れない手つきで成涸は帯留型GDを操作し、防護魔法を展開させる。
「……おお、ほんまに暑さが緩和されたわ」
「それじゃ気を取り直して進もうか」
「熱源反応多数、突然の溶岩流に注意して進んでください」
「……あれ?行き止まりだ」
「おかしいなぁ、ここまで一本道やったのに」
道を塞ぐ大岩の前でセナと成涸が首を傾げる。
「警告、異常な係数の魔力を計測。周囲を警戒してください」
「そうは言われても──」
セナの言葉を遮るように重いものを引きずる音が洞窟内に響き、大岩の中から真っ赤な軟体のモンスターが這い出てくる。
「あの大岩、マグマスネイルの宿だったんだ……」
「迷惑にも程があるデカさやな、いっそ砕いたろか?」
溜め息混じりにぼやきながら成涸は刀を構える。
「倒し方そのものは普通の個体と同じで良いだろうけど……D2」
「システムを戦闘モードに移行。生体解析プログラム起動。対象の解析開始」
ハルバード型MAが規則的な点滅を繰り返す中、セナと成涸は巨大なマグマスネイルが放つ火球を躱していく。
「──解析完了。通常の個体と同一の対処を推奨します」
「となると……まずは水を浴びせて弱らせるところからかな」
巨大なマグマスネイルから距離を取ったセナはポーチからマギフォンを取り出し、目的の魔法プログラムを起動させる。
「
マギフォンから浮かび上がった魔法陣は激しい水流にその姿を変え、巨大なマグマスネイルを襲う。
「冷えて固まれ
続けざまに成涸が放った魔法で巨大なマグマスネイルは氷漬けとなる。
「──
D2がメッセージを読み上げた直後、セナが放った渾身の一刺しが巨大な氷塊となったマグマスネイルを粉砕する。
「エネミーの撃破を確認。システムをニュートラルモードに移行します」
「ふぅ……」
臨戦態勢を解きながら息を吐き、セナは残骸の中で煌めく黄昏色の結晶体を回収する。
「これも届け物に追加だね」
「前にもおんなじようなものを拾うとったけど何なん?それ」
「現在調査中の物質です」
「……けったいなものを集めてるんやなぁ、あんさんら」
怪訝な顔をする成涸に苦笑いを返しつつセナは黄昏色の結晶体入りのガラス瓶をポーチに収めた。
「──鍛冶の町パスパへの到着を確認。ナビゲートシステムを終了します」
ナザロ溶岩洞を抜けた先に広がっていたのは煙の匂いが立ちこめ、金属を叩く音が響く工房が散見する町の風景だった。
「んで、誰に頼めばええんや?」
「えーと……ごめん。僕もここに来るのは今回が初めてだから誰に頼めば良いとかそういうのは全く分からないんだ」
「せやったら手当たり次第に聞いてみよか、すぐは無理でもいずれは見つかるやろ」
気楽な調子で言いながら成涸はふらりと歩き出す。
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