八 再会
「あれ?」
MGC本社を出て消耗品の補充がてら繁華街に足を運んだセナが目撃したのは周囲を見回しては考え込むことを繰り返す成涸の姿だった。
「成涸さん」
「おおセナはん、早い再会やなぁ」
「こんなところで何をしてるんですか?」
「んー、長旅の準備ついでの散策……ってトコやな。実を言うと俺、剣の修行をするために故郷を出て来たんよ。頼納の護衛は故郷を出る口実みたいなもんやな」
「そうだったんですか」
「んでな、ちょい聞きたいんやけど……やっぱMA、ってのは持っとった方がええん?」
「長期間旅をされるのであればMA及びGDの所持は必須と言っても良いでしょう」
「やっぱしそうなのかぁ……」
D2の返答に肩を落とす成涸にセナが不思議そうな顔をする。
「何か不都合でもあるんですか?」
「いや大したこっちゃあらへんのやけど、今まで愛用しとったこの刀を手放してまでMAを買うってのはどうなんやろう思てなぁ……」
「でしたらその武器をMAにカスタマイズするのは如何でしょうか」
「……そないなこと出来るん?」
「出来ますよ」
セナのあっさりした返答に成涸は目を丸くする。
「クオリティを重視するならワフカ族の職人に頼んだ方が良いですけどね」
「ワフカ族、って確か……鍛冶を生業にしとる奴らやろ?さっきこの辺ぶらっと歩いた感じ、それっぽいのとは全く会わへんかったけども」
「鍛冶の町パスパ以外にワフカ族がいることは稀ですからね」
「う、うーん……」
途方に暮れる成涸の姿に気が咎めたセナはD2に助けを求める。
「ねぇD2、何とか出来ないかな?」
「ナビゲートシステムで鍛冶の町パスパを経由して魔機都グノスから機焔街ゼトフへ向かうルートを検索済みです」
「いつの間に……でもありがとう」
軽く息を吐き、セナは成涸の方に向き直る。
「成涸さん」
「うん?」
「もし良ければ僕たちがパスパまで案内しましょうか?」
「ほんまか!?」
「め、迷惑でなければなんですけど」
「拒む理由がどこにあるって言うんや!」
食い気味に反論する成涸に気圧され、セナは口ごもる。
「あ、そうや。ついでに一つええか?」
「……な、何でしょうか?」
「敬語、止めてもろうてもええかいな。どうにもむずがゆおして落ち着かへんねん。名前も呼び捨てで頼むで」
成涸の申し出にセナは少し考え込んだ後、返答する。
「分かったよ。それじゃ改めてよろしくね、成涸」
「こちらこそよろしゅうな、セナはん。D2はん」
「……ナガレ、私からも一つよろしいでしょうか」
「ん、なんや?」
「私のことも呼び捨てにしていただけないでしょうか。ナガレの言葉を借りるのであればむずがゆくて落ち着かないのです」
「ああ、そないなことなら構わへんで。改めてよろしゅうな、D2」
「よろしくお願いします」
「ほな早速パスパに──」
「ちょっと待って、MAはともかくGDはグノスを発つ前に買っておいた方が良いよ」
「……そ、それもそうやな」
出鼻を挫かれて転びかけた成涸はわざとらしく袖を払った。
「なんや、思たより小さいんやなぁ」
セナに連れられて入った店に並ぶGD──ネックレスや指輪といったアクセサリーに機能を簡略化したマギナが組み込まれたものに対する感想を成涸は率直に呟く。
「見た目による機能の差は無いから好みに合うデザインのものを選べば良いと思うよ」
「軽う言わんといてやセナはん、それ相当ややこしいことやで……」
「お客様、GD選びにお悩みでしたらこちらはいかがでしょうか?」
見かねて声をかけてきた店員が差し出したのは鮮やかな緑色の帯留GDだった。
「へぇ、帯留もあるんやな」
「邦から来たお客様には人気の商品ですよ」
「後はえらい高なければええんやけど……なんぼなん?」
「お値段はこちらになります」
店員が差し出した端末に表示された金額を見て成涸は軽く思案する。
「……これくらいならええかな、買わせてもらうわ」
「ありがとうございます」
手早く支払いを済ませ、成涸は早速購入した帯留型GDを身に付ける。
「次は消耗品の補充でしょうか」
「そうだね。長い道程になるだろうから多めに買っておかないと」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます