三 試験戦闘
「──警告、強力な敵性反応あり」
「この先にストーンイーターの親玉がいるってことだね」
ハルバード型MAを握る手の力を強め、セナは鉱夫の方に向き直る。
「ここまで案内して頂きありがとうございます。お陰で助かりました」
「あ、ああ。これぐらいお安い御用さ」
「すぐに片付けて……くることは確約できませんが、確実に仕留めては来ます」
「あんたなら大丈夫だろうけど、無茶はするなよ?」
「お気遣い感謝します」
軽く会釈をするとセナは鉱夫を残して奥へと足を進める。
「……こいつが、ストーンイーターの親玉?」
開けた空間でセナを待ち構えていたストーンイーターは道中戦ったものに比べてとても禍々しい姿をしていた。
「警告、対象から異常な係数の魔力を計測」
「異常な係数の魔力……それがあの見た目と関係あるのかな」
「判断しかねます。が、対象の生体情報を解析して撃破難易度の低下に繋がる要素の検出を試みます」
「頼むよ、D2」
「システムを戦闘モードに移行。生体解析プログラム起動。対象の解析開始」
稼働音と共に規則的な点滅を始める中、セナはハルバード型MAを中段に構える。
それを戦闘開始の合図と捉えたのか禍々しい姿のストーンイーターは音も無く走り出し、飛び上がるのと同時に身体を捻って長い尻尾を鞭のようにしならせる。
「っ!」
予想外の攻撃に反応が遅れたセナの肩にストーンイーターの尻尾が叩きつけられ、その衝撃で膝から崩れ落ちそうになるのを何とか堪える。
「
「──解析完了。対象の背部にある結晶体の破壊を推奨します」
「背部の結晶体……あれだね」
ストーンイーターの背中で妖しく輝く黄昏色の結晶体をセナはじっと見据える。
「D2、サポートを頼むよ」
「ターゲットプログラム起動。攻撃対象をストーンイーター背部の結晶体に照準。GDと同期。動作補助を開始」
ハルバード型MAとバングル型GDが同時に点滅し、セナの身体に少しばかり負荷がかかる。
「さぁて……テスト開始だ!」
そう叫ぶと同時にセナは走り出し、ストーンイーターが反応するよりも先に背部の結晶体をハルバード型MAで叩き割る。
「対象の魔力係数が急速に低下」
「D2、アーツを!」
「
D2がメッセージを読み上げるのと同時にハルバード型MAに内蔵されたバッテリーから魔力が消費され、セナの身体能力を一時的に向上させる。
「やああああっ!」
叫び声を上げながらセナはハルバード型MAを振り下ろしてストーンイーターを叩き潰す。
「エネミーの撃破を確認。システムをニュートラルモードに移行します」
「っはぁ……思ったよりきつかったな……」
「今回の戦闘データを元に動作補助の精度調整を行います」
「頼んだよ」
痛む肩を押さえながらセナは鉱夫が待つ方へと向かう。
「あんた、怪我は……その様子だとしてるな!」
「さすがに無傷とはいきませんでしたね……」
再会した鉱夫の指摘にセナは溜め息を吐く。
「回復系のマギメモリでもありゃ良かったんだが、生憎と持ち合わせがなくてな……」
「そこは自分で何とかしますのでお気遣い無く。ところで僕が駆除したストーンイーターの死骸なんですが……」
「ああ、それはこっちで始末しておくよ。あいつらの爪は採掘道具にもってこいだからな」
「そういうことならお任せします」
事後処理の話もそこそこにセナは鉱夫と共に鉱山の外へと歩き出す。
「ストーンイーターの駆除、終わりました」
「おお早いな」
鉱夫と別れ、Chasseurの店に戻ってきたセナはポーチから取り出した小さな結晶体をテーブルの上に置く。
「……こいつは?」
「ストーンイーターの親玉から採取した結晶体です。依頼を達成した物的証拠として持ってきました」
「なるほど、中々しっかりしてるな」
手に取った結晶体を眺めながら店主は呟く。
「ともかくご苦労さん、こいつは依頼達成の報酬だ」
「ありがとうございます」
店主が差し出した小さな布袋を受け取ってポーチに収めるとセナは一礼して店を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます